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「殺人小説の書き方」

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「殺人小説の書き方」というミステリー小説です。人がいっぱい死にます。
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記事一覧

「殺人小説の書き方」 最終話

 アラームがうるさい。刺激されたのかどこかで犬が鳴いている。パトカーのサイレンが聞こえる…

古池ねじ
10か月前
6

「殺人小説の書き方」 第十八話

 桐生北斗がその本に出会ったのは、中学一年生のときだった。よく行くショッピングセンターの…

古池ねじ
10か月前
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「殺人小説の書き方」 第十七話

「ご存じだと思いますが、私は天才です」  おもむろに鏡花は言った。冗談でも虚勢でもなく、…

古池ねじ
10か月前
5

「殺人小説の書き方」 第十六話

 早坂雄一郎の失踪のニュースはアメリカで見た。アメリカは楽しかった。人を殺したばかりの異…

古池ねじ
10か月前
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「殺人小説の書き方」 第十五話

 さっき入ったカフェの正面のチェーンのほうに入って、今度はコーヒーだけを頼んだ。時間のせ…

古池ねじ
10か月前
5

「殺人小説の書き方」 第十四話

 そう決めると、息ができた。もういい。この世界と和解しない。私は悪くなる。自分の悪意に正…

古池ねじ
10か月前
7

「殺人小説の書き方」 第十三話

 桐生北斗と早いうちに知り合ったのは、結果的に助かった。大学での私は自由だったけれど、同時に無防備だった。自分の身の守り方もよく知らなかった。私は可愛くなった。可愛い、と言っておけばいいと思われていた時期とは異なり、本当に可愛くなった。だが本心から可愛い、と思われるのも問題がないわけじゃない。というか、可愛い、という言葉には、本質的に相手を軽んじているところがある。掌にのっけて、評価する。そういう部分がある。  大学生になった頃、ミステリ関係のイベントに顔を出した。大きくなっ

「殺人小説の書き方」 第十二話

 頑張れ、と、呟いた。声に出ていたのか、そう思っていただけなのか、よくわからない。軽井沢…

古池ねじ
10か月前
6

「殺人小説の書き方」 第十一話

「心当たりはある?」  鏡花と北斗は出版社を出てすぐにある小さな喫茶店に来ていた。正面に…

古池ねじ
10か月前
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「殺人小説の書き方」 第十話

「あの人が好きなの?」  と北斗が尋ねた。刑事二人は軽井沢に向かっており、残った二人は地…

古池ねじ
10か月前
7

「殺人小説の書き方」 第九話

 早坂、という表札のある家は、大きくはなく住みやすそうで、手も金もかかっているようだった…

古池ねじ
10か月前
7

「殺人小説の書き方」 第八話

 二年生になる前の長い春休み、二人は約束して会うようなこともなかった。一緒にいるだけで、…

古池ねじ
10か月前
6

「殺人小説の書き方」 第七話

 桐生北斗は須藤鏡花を初めて見た日のことを、今でもよく覚えている。  大学の入学式で、鏡…

古池ねじ
10か月前
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「殺人小説の書き方」 第六話

 この子が犯人だ。  桐生北斗がそう思ったのに、特に根拠はなかった。早坂雄一郎の事件について説明を受けている鏡花を見て、ただ、そんな気がしただけだ。結局のところ、桐生北斗が「名探偵」というどこかばかばかしい揶揄いも込めたあだ名で呼ばれるようになったのは、論理的思考が優れているとかではなく、単に勘がいいからだった。誰が犯人なのか、わかる。そこに理屈はないのだ。理屈はあとからついてくる。  須藤鏡花。事務所に突然やってきた。北斗にとっては懐かしい大学の同期の少女。もうとっくに成人