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ほんとにあった!呪いのビデオ 84

【後半にネタバレあります】

2019年夏の3部作の3作目にあたる『84』のレビューです。

「ほんとにあった!呪いのビデオ84」
2019年9月4日 72min
演出:KANEDA
構成:KANEDA、新津徳也、美濃良偲
演出協力:菊池宣秀、美濃良偲、藤本裕貴、細沼孝之
演出補:中田亮、知花はる

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今回のパッケージはもはや「ブランコのサビとかすごいけど服汚れてない?」としか思わないですね。

【収録映像】
1.真夜中の滑り台
2.野外トイレ
3.リフト
4.終・静止する身体 前編
5.手招き
6.祖父の病室
7.鍾乳洞の男
8.終・静止する身体 後編

映像:☆☆★ 
観ているときの自分のテンション:☆☆☆★
おすすめ度:☆☆★
※5段階評価 ☆→1.0 ★→0.5

【解説】

前作『83』は全体的にテンション高く楽しめたんですが、今作では少し落ち着きました。
何かが悪いとかではないんですけど、単品の映像にグッと惹きつけられるものがなかったというのが正直なところなのと、「静止する身体」解決編も、着地が上手く決まらなかったのかなと。理由は後ほど説明します。


【終・静止する身体 前後編】

〈前回までのあらすじ〉
投稿者・三橋百合子さんが、友人・磯貝さつきさんの家に遊びに行った際の映像に、一点を見つめ完全に停止している磯貝さんの姿が映っていました。奥のドアのすりガラスには黒い人影が。
取材中にも同じ停止現象が起きたり、三橋さんも磯貝さんも怪我を負う事故に遭ったり、三橋さんの勤務先の大学の防犯カメラにも、磯貝さん宅に出現したものと同じと思われる黒い人影が映り込んでいたり。
スタッフは原因を探るために、磯貝さんの自宅マンションの取材を申し出ますが、再三断られてしまい、「マンション周辺に原因がある」という仮説を立てて取材を続けていました。
磯貝さんのマンションの近くに住む、田中勝さんという男性から、黒い服を来た女性を見たという証言を得られ、その後、その取材時の映像に奇妙な音声が紛れ込んでいたことが発覚、解析をすると『おまえがいなければいいのに』という音声が抽出されました。その声は、磯貝さんの声に酷似しているものでした。
その後、スタッフの元に、磯貝さんの自宅である509号室の住人だという男性が現れたのですが……。

509号室の住人・相葉健太郎さんに事情を聞くと、実は磯貝さんと面識があることがわかります。

相葉さんは、磯貝さんと大学の同期で、彼女の紹介で三橋百合子さんと知り合い、その後、三橋さんと交際をしていたそうです。
しかし、三橋さんとの破局後、磯貝さんにストーキングをされるようになり、警察に相談したものの本格的に動いてはもらえず、仕方なく現在のマンションに引っ越したとのこと。

つまり、三橋さんの投稿映像は、磯貝さんの自宅でのものではなく、実際は「磯貝さんが不法侵入した相葉さんの自宅に、事情を知らない三橋さんを招き入れ、撮影されたものだった」ということになります。

後日、相葉さんの自宅周辺を調べていると、相葉さんのマンション前に瓶が置いてあるのを発見。中には、針が刺さった三橋さんの写真が2枚入っていました。

アジア魍魎研究所 日本支部に助言を求めると、これは「丑の刻参り」と、ヨーロッパで見られる瓶を使った呪いの合わせ技であるということ。
また、手順を重んじる「呪い」を思いつきでアレンジしてしまうと、呪いがピッチャーライナーのように、呪いを盛った当事者に跳ね返ってきてしまう、との見解が得られました。

その後、相葉さんと三橋さんの自宅からも同じ瓶が見つかります。
三橋さんは、投稿映像と関連付けて考えていなかったものの、動画を撮影する前に流産していたそうで、この一連の出来事が原因だったのかと思うようになったということを告白します。

以前、連絡のつかない磯貝さん。
スタッフは手がかりを得ようと、相葉さんのマンションにカメラを設置。すると、自宅前に黒い服の女性が佇んでいる様子がとらえられていました。

相葉さんに報告をすると、警察に相談していたものの取り合ってもらえないため、自身の手で磯貝さんを取り押さえようと考えていることを話してくれました。

後日、相葉さんからドアホンの動画が送られてきました。
そこには、ドア前に佇む黒い服の女性がとらえられていました。

再びアジア魍魎研究所 日本支部に助言を求めると、磯貝さんの怪我は「呪い」の手順を守らなかったことや、人に見られるなどの細かいミスをしたことの反動であり、すでに「呪い」に取り込まれているのではないか、磯貝さん自身が「(呪いの)執行者」となってしまったのではないか、とのこと。

その後、相葉さんとも連絡がつかなくなってしまいます。
相葉さんの行方を追っているスタッフの元に、相葉さんから1通のメールが届きます。
そこには、動画が添付されていました。

自宅のベランダから、黒い服の女を目撃した相葉さんが、女を追いかけていきます。
見失ってしまい引き返そうとすると、突然背後に現れた、黒い服の女・磯貝さんらしき人物と鉢合わせてしまいます。
倒れ込む相葉さん。
そのスマホを覗き込む磯貝さんらしき人物。
そこで映像がフリーズし、ノイズが走り、一番最初に送られてきた三橋さんの投稿映像にあった、三橋さんと磯貝さんの姿を、すりガラスの向こうにいた「黒い服の女」側の視点から見たものと思われる映像が突然挿入され、動画が終わります。

『人を呪わば穴2つ。姿を消した相葉健太郎から送られてきた一本の動画。そこに映っていたのは、呪いに取り込まれた者の憐れな姿であった。』


もう開き直って全部書きましたけど 笑、以上です。
こうやって書いてみると、話としてまとまっている感はあると思うんですけど、実際は、肝心の「黒い服の女と磯貝さんの関係性について」がわかりにくかったんですよね。
なぜなら、その部分をアジア魍魎研究所 日本支部・村井さんの説明に委ねてしまっているからです。問題の箇所を書き起こしてみます。


村井「結局、人を呪ってるわけだから。これは、なんて言えばいいのかな。平たく言うと、取り込まれちゃう。」 

 KANEDA「呪いにですか?」

 村井「呪いに、ですね。」

KANEDA「その、呪いに取り込まれると、最終的には……死ぬとか?」

村井「いやいやいやいや、全然死なない。結局、呪いに取り込まれるって、じゃあ呪いって何かって話をしてたんですけれども、執行する人がいます、じゃあ、この人はどっからきたんだっていう。じゃあ、執行者が、Doすることが、呪い。呪いに取り込まれるというのは…………そういうこと。結局誰かのお願いを聞いて、誰かを呪う。」

KANEDA「っていうことは、ある意味連鎖するっていう? ループみたいな?」

 村井「そしたらもう、人の形とかないですよね。」

テロップ〈呪いに取り込まれる〉

で、「磯貝さん≒黒い服の女」という結論に向かっていくんですけども……。

じっくり考えると、「呪い」というのは「呪いをかける者」と「呪いを執行する者」によって成立していて、そこにはいにしえより重んじられているマナーが存在する。
磯貝さんは、自分でアレンジした呪いをかけたために、結果的にマナーを守らなかったこととなった。もしくは、自身が呪いをかけている姿を誰かに見られてしまうなどのミスを犯してしまった。
これらの原因により、自身の呪いが跳ね返り、自らが「自らの呪いの執行者」と成り果ててしまった

っていうことだと解釈できるんですけど……この村井さんの説明だけだと、3巻またぎでやってきた話の核心の割には、ふんわりしてますよね(笑)

僕はいつも概要をメモしながら『ほん呪』を観ているのですが、メモしながらでも村井さんの言っている意味がすぐには理解できなかったので、ふつ〜に観ていたら、内容が入ってこなかったという方も多いのではないでしょうか? 話が面白いだけに、この点が惜しかったと思いました。

KANEDA監督の「連鎖する?ループする?」という質問のくだりも、どういう意図の質問だったのかわかりにくいですよね。村井さんとKANEDAさんで会話が食い違っているような。
「呪い」のマナーを守らなかった人が取り込まれ、執行者にさせられる、そのシステムの連鎖? という意味のことを聞いていたんでしょうか。

と、最後はちょっと惜しいなーとは思いつつも、自分的にはかなり楽しんだ2019年の3部作でした!

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