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ほんとにあった!呪いのビデオ(第一作目)

あー趣味って楽しい……。
マイペースに更新しております。

前回、最新作『ほんとにあった!呪いのビデオ 79』のレビューを書いてみて、だいぶ楽しかったです。
次に、いま下書きの中に入っている『ほん呪』を観る前の予備知識をまとめたものを読んでもらうのもいいんですけど、自分が調子を掴むためにも、もうひとつレビューを書いておこうかなと思いました。趣味だし。書きたいもの書いたっていいだろ〜!ペペロンチーノにチーズかけたっていいだろ~!

『ほんとにあった!呪いのビデオ』
1999年8月22日 51min
構成:中村義洋、鈴木謙一
演出:中村義洋、鈴木謙一
演出補:中村義洋、鈴木謙一
ナレーション:高橋眞三樹

収録映像
1.白い着物の女
2.トンネルにて……
3.墓参りの記録
4.劇団の稽古風景
〈続・白い着物の女〉
5.結婚パーティーにて
6.事故現場にて
7.監視カメラ
8.生中継番組
〈続々・白い着物の女〉
9.大学校舎にて ☆(おすすめ)
10.盗撮・試着室
11.千駄ヶ谷トンネル
〈ED1.井戸の映像〉
〈ED2.白い着物の女 取材中の映像〉

映像のパターン:☆☆☆☆(盛りだくさん)
観ているときの自分のテンション:☆☆☆☆(初代ロゴも大好き)
おすすめ度:☆☆☆☆(クラシックなんで、ぜひ観てもらいたい)
※5段階評価


最新作『ほん呪79』に続き、今回は1999年8月リリースの『ほん呪』記念すべき第一作目のレビューです。
すべての前提になるような1本なので、躊躇なくおすすめできます。

【押さえておきたいポイント】

① 最初から仕上がっている演出


『ほん呪』には特徴的な構成・演出があります。

・演出補たちが顔出し出演する投稿映像の検証取材
・ナレーションでの進行
・一度映像を見せた後に「REPLAY」して事象の解説

などです。
これらが『ほん呪』らしいグルーヴを生み出している基本要素であり、このジャンルの作品が踏襲しているフォーマットでもあるのですが、実は第一作目にして、すでにこれらの構成・演出が炸裂しています。いきなり演出フォーマットが出来あがってしまっているんですね。
これはつまり、『心霊的なものが映り込んじゃった系ホラー』全般における、構成・演出の土台がここでいきなり出来上がったとも言うことができます。極めてエポックメイキングなのが『ほん呪』第一作目なんです。

また、『ほん呪』と同ジャンル他作品を分ける、演出上のある大きな特徴も、すでに見て取れます。それは「真顔感」です。『ほん呪』はメタに笑わないんです。時折おちゃめさが垣間見れるだけで、緩い空気が流れそうになるとすぐに引き締めてきます。その瞬間を見つけてほんわかするのも、『ほん呪』を観る楽しみの一つです。

逆に、他作品からは“自分で自分のやっていることが可笑しくなっているムード”を感じる、もしくは、感じさせようとしているという意図を感じることが多いのですが、“真顔でいないこと”は決して悪いことではありません
その視点によって、本家『ほん呪』以外の作品の在り方が確立され、フォロワーだからこそ出来るカウンターな演出、メタ解釈な演出が編み出されたことで、このジャンルは発展していきました。


② 初期以降では見られない演出


第一作目にして、『ほん呪』の演出・構成フォーマットが出来上がっている一方で、以降の作品ではほとんど見られなくなった演出がいくつかあるのも面白い点です。

○科学的な検証パート→結果的に珍しいメタなくだり

「科学的な検証パート」とは、専門家に映像や音声の解析を依頼し、映像内の事象がどういったものなのかを科学的な角度から解明してもらうあれです。『ほん呪』では初期以降、この手の検証がほとんど出てきません。
「白い着物の女」では、埼玉県音響粒子学研究所 所長の貝原茂夫氏が、映像に紛れ込んだ音声を発している者の性別・年齢・身長・音の鳴っている「べき」環境など、かなり詳細な分析結果を出してくれているので、毎回やればいいんじゃね……と思わなくもないです。
同じく「白い着物の女」の映像の方の調査では、北鳳大学の画像解析学の柴田教授という方も詳細な映像の解析をしてくれています。毎回やればいいんじゃね……。(ちなみに、霊能力者もほぼ出てこないのですが、それはまた今後の記事で)

また、「白い着物の女」検証パートには、現在地点でシリーズの歴史を踏まえてからだと、メタとも受け取れる珍しいくだりがあります。
“カメラがパンした際に編集しているのではないか?”という検証です。それを言っちゃあ、おしまいだよ?

のちに『ほんとうに映った!監死カメラ』シリーズの常連投稿者・菅野くん、意図的にパンを繰り返すことで驚異の打率で事象を撮影する、その名も“横パン”というとんでもない必殺技を編み出すのですが、それくらい、“カメラのパンからの〜出現”はオーソドックスな事象の現れ方です。Nintendoのキャラクターでいえば、マリオです。それくらいオーソドックスです。1番目に出てきます。

そんな「白い着物の女」検証パートが表しているように、『ほん呪1』では“パン”を受けて事象が現れる映像が少ないです。その方向性の極みが、以降もほとんど見られない事象の出現パターンである「大学校舎にて」でしょう。(後の項目で詳しく)


○ナレーションが中村義洋監督ではない

『ほん呪』といえば「おわかりいただけただろうか」という、印象的なフレーズですが、第一作目では登場しません。
ナレーション自体も中村義洋監督さんによるものではなく、高橋眞三樹さんという方が担当されています。(中村監督が担当するのは『ほん呪3』から)
高橋さんのナレーションも、カラッとした湿り気があってグッドテイストなのですが、のちに、中村監督にお聞きしたところによると、制作費削減のために『ほん呪3』からは自分でやってみることにしたんだそうです。



○スタッフ自ら『不可解なものが映っちゃってる映像』を撮りに行く

『ほん呪』は視聴者からの投稿映像を紹介するのが基本ですから、投稿映像の取材中に不可解なものが映り込むことがあったとしても、“自ら狙って撮りに行く”ということはしません。
では、なぜ第一作目では撮りに行ったのか。
これも中村監督にお聞きした話ですが、製作会社のパル企画に「心霊スポットに行ってくれと」言われて行ったものの、以降は怖くてやめてしまったとのこと。やめるのめちゃ早い。


ここまでの「② 初期以降では見られない演出」って、よく考えてみると“TVの心霊特番風の味付け”なんですよね。中村監督もこう発言されていました。

自分で怖かったこととか、『あなたの知らない世界』を小学生の頃見て怖かったこととかを考えて構成していきました。その頃、テレビの『奇跡体験! アンビリバボー』で心霊系の企画がよくやっていて、「こっちじゃないか?」って。(「ほんとにあった! 呪いのビデオ 恐怖のヒストリー」より)

以降の作品では、“TVの心霊特番風味”を削いでいったことで、『ほん呪』感が磨かれていったのではないでしょうか。


【見どころ】

『ほん呪1』は詰め込まれたアイデアが魅力的な1本でもあります。いくつかの映像を紹介します。

「白い着物の女」

クラシック中のクラシック。
投稿者は若い夫婦。新居で、引越し祝いの飲み会。画面が点いていないTVに映り込む、そこにいないはずの白い着物姿の女。この映像の取材から『ほんとにあった!呪いのビデオ』は始まりました。

遊びに来た友人夫婦らにビールのおかわりをせがまれ、「鼓笛隊のイメージ!テッテケテー♪テッテケテー♪」と言いながら、陽気にビールを運んでくる奥さん(若い頃のふかわりょうさんのような、デカい白バンダナを巻いている)が非常に印象的。

映像については様々な角度から調査・検証が行われるものの、白い着物の女がこの映像に映った因果関係は、特にわからないままに終わります。なんでもかんでも理由がわかればいいわけではないので、むしろこの余韻が良いと感じます。
『映り込んじゃった系ホラー』では、映像紹介のあとに「以前、ここでこういう事件が……」という説明がなされがちなんですけれども、それは映像以上の恐怖を呼ぶ情報ではないのかなと。映像に不可解なものが映り込むこと自体が理由を超えてる出来事ですから。説明されることで、怖さが薄まってしまうというのはありがちなことです。
しかし、そういった“因果の怖さ”に挑戦している作品もあります。中村監督期後半、番外編にあたる『ほんとにあった!呪いのビデオ Special』です。併せて、『ほん呪』シリーズに影響を受けている、小野不由美さんの小説『残穢』及び、中村監督による映画『残穢 -住んではいけない部屋-』も押さえておきたいところです。(これらについてもまたいつか書きます)


「監視カメラ」

監視カメラの映像は、「シリーズ監視カメラ」として、『ほん呪』のほとんどの巻に収録されていますが、その第一弾とも言える1本。

カラオケBOXの監視カメラの映像。モノクロ。

1.キャップをかぶった女性と連れの男性
2.空き部屋1
3.男性3人組
4.イチャイチャしているカップル
5.空き部屋2
6.大人数の部屋
7.廊下

の、順番で切り替わっていき、1周約28秒。これが6周分ガッツリ流れます。
その4周目。「空き部屋2」に差し掛かったところで映像にノイズが走り、そのノイズの中に一瞬少女の姿が。

これ、初めて観た1999年中3の時、めちゃめちゃビビリましたね。

「あー本物見ちゃった……」

と、思いました。『ほん呪』の虜になるきっかけになった1本です。



「大学校舎にて」

“マイ・ベストほん呪 映像部門”のベスト10に入れたい1本です。

自殺が多く、撮影の数年前には有名な殺人事件が起きた、ある大学校舎での肝試しの映像。
一見地味な映像ですが、前述の通り、非常に珍しいパターンの映像です。

暗い廊下に出現した事象に投稿者たち3人が気づいていて、なおかつ、懐中電灯の光を当ててもそれが消えることはなく(光が当たっていること自体がまたすごい)、しかも、物陰から積極的にこちらへ飛び出してきます。映像に映っている時間もかなり長いです。最終的に投稿者たちが逃げてしまうので、映像からそれが消えたというより、映像に撮ることを諦めて終わります。

「事象に投稿者が気づく」
「それが積極的に飛び出してくる」
「それが長時間映り込んでいる」
「撮ることを諦めて映像が終わる」

実は、この1つ1つが、映像のパターンとしてそこそこレアなのですが、これらが4つも重なっているというのは、シリーズ全体を見渡しても極めて稀でです。
さらに、「それを懐中電灯で照らしきる」という意味では、唯一と言っていい映像かもしれません実在感を伴う非常にインパクトの強い映像となっています。


そんな感じで、『ほん呪』第一作目ぜひ観てみてください!質問などがあれば、引き続きコメント欄までどうぞっ。

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