見出し画像

ピアノ選定

先日、とある会場がグランドピアノを購入するということで、そのピアノの選定のお手伝いで掛川のヤマハ工場へ。

全く同じ機種のグランドピアノが3台並び、その中から会場に最も合うと思われるピアノを選ぶ。選定前は、果たしてその3台のピアノの個体差が感じられるだろうかと若干不安だったが、音を出してみるとその差は明らか。同じ工場で同じ工程で作られた機種でもこんなに差が出るのかと驚いた。ピアノの多くの部分は木でできているので、全く同じ形・大きさに加工したとしても、やはり生き物のように1台1台差が出るのだ。キャラクターの違う3台の中から、会場の響きや使用用途を考慮して最も合う1台を選ぶことができた。

選定のあとは工場の見学をさせてもらった。長年ピアノを弾いているけれどもその製造過程をこの目で見るのは初めて。当たり前だけど多くの過程は人間の手によって行われているということを実感した。指先の感覚を信じて行う作業、そしてもちろん耳を信じて行う作業、どれも本当に職人技。しかも限られた時間の中で行わなければならない。自分との戦いでもある。職人と大量生産の現場を見ることができて良い経験となった。

更にそのあとはリヒテルが日本の公演で実際に弾いたというコンサートグランドピアノ2台を弾かせてもらった。何ともまろやかなタッチと音色。極上だった。いつまででも弾いていたかったが残念ながら時間が来てしまったので、その感覚を身体に染み込ませながら掛川をあとにした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?