笹﨑浩一 @サイボク

サイボクの代表取締役。生産者と生活者の間で考えていること。あるいは暮らしの記憶。

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最近の記事

wazawaza | わざわざ

wazawaza | わざわざ 本日、平田はる香さんのトークイベント「山の上のパン屋に人が集まるわけ」をサイボクで開催しました。こうしたことを行うのは初めてで運営の拙さが多々あったものの、無事に終わり少しホッとしています。 平田はる香さんの情熱は著書、ソーシャルメディア、そして商品を通じて知っていたものの、ご本人から直接お話を聞けたことは何にも変え難い経験となりました。 わたしはわたし特有のストライクゾーンの狭さがゆえに「生活者」であることに自覚的な生き方をしてきました

    • Vol.34: The explorers | 求道者たち

      Vol.34: The explorers | 求道者たち ラーメン界の重鎮3名と夕食をご一緒した。サイボクのゴールデンポークとスーパーゴールデンポークを使ってトンカツ、しゃぶしゃぶの食べ比べをしたのだった。 「ゴールデンポークとスーパーゴールデンポークって全然違うよね」「豚肉の一番好きな調理法は?」など意見交換し、みんなでワイワイ過ごした。一方、3人の語り、その言葉選び、そして振る舞いの端々にプロの真髄を見た。それぞれがそれぞれの道を求めるまさに求道者なのだ。 豚汁は

      • Vol.33: Same same but different | 似て非なるもの

        Vol.33: Same same but different | 似て非なるもの 大手町駅周辺の再開発のために「麺屋 のスた」が閉まると聞き、急遽都合をつけて訪れた。一度、そんな話を耳にしていたのだけれど、なんとなく油断していたのだった。 お店は行列だった。店主曰く、そのほとんどがラーメン店主だったそうだ。のスたはまさに「ミュージシャンズミュージシャン」なのだと痛感した。 この細麺の塩は、今後一体いつ食べることができるのだろう。いや、もう一度その日が来るのだろうか。

        • Vol.32: Beloved | 最愛の人

          Vol.32: Beloved | 最愛の人 今日は私が子供の担当だった。子供を保育園、学童にそれぞれ迎えに行き、2人にご飯を食べさせる。お風呂に入れる。そして寝る準備をする。 今回、いつもと違うのは妻の帰りが深夜になるという点だ。一緒にご飯を食べていても、お風呂に入っていても数分おきに子供達はこう尋ねる。 「お母さんは何時に帰ってくるの?」 「お母さんはまだ帰ってこないの?」 「お母さんと話したい….」と絞り出すようにつぶやき、遅くまで頑張って起きていたが、ついに子

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          Vol.31: Nein | いいえ

          Vol.31: Nein | いいえ 語学は「自転車の乗り方」を覚えることとは違う。自転車は一度体得すると忘れない類のものだが、語学は「筋トレ」のようなもので、使っていないと失われていく。 久し振りに仕事でドイツ語を話す機会があった。かつてドイツで暮らし、身につけたドイツ語はすっかりと錆びてしまっていた。わからなさの失望感といったらなかった。 そうした中でワンセンテンスだけ、記憶していたドイツ語がある。 現地で真っ先に覚え、そして多用した実用的な文章。今回も私は思わず

          Vol.30: Heaven in her arms | 楽園

          Vol.30: Heaven in her arms | 楽園 先日、代官山へ友人とライブを観にいった。示し合わせた訳でもないのに、会場のそこかしこに古い友人たちがいて、ちょっとした同窓会みたいになったのだった。 例えば15歳の頃からの付き合いの友人もいれば、20年ぶりに再会した友人もいた。(しかも先に気づいてくれた…)そして、その中にまさかここで会うとはまったく予想のつかない友人もいた。Tomy Wealthだ。 再会を祝ってか、彼がショットをご馳走してくれた。友人た

          Vol.30: Heaven in her arms | 楽園

          Vol.29: Usual place, special time|いつもの場所、特別な時間

          Vol.29: Usual place, special time|いつもの場所、特別な時間 近所に家族で訪れるレストランがあった。 過去形なのはそのレストランが京都へ移転してしまったからだ。営むご夫婦が醸したものだろう、そこで流れる時間はわたしたち家族にとって特別だった。最終日には感謝の意味を込めて花束を持って行った。 喪失感と言ったら少し大袈裟だろうか。家族で大切な日に訪れるレストランの無い街はどこか寂しい、そう思うようになった。「レストランは人生の大切な記憶の一部

          Vol.29: Usual place, special time|いつもの場所、特別な時間

          Vol.28: Essentials | かけがえのないもの

          Vol.28: Essentials | かけがえのないもの このレコードはモノクロームなわたしの人生を彩る1枚にカウントできる。東日本大震災とそれによってわたしがサイボクに入社した2011年の宮城県での記憶と分かち難く結びついているからだ。 わたしの人生を支えてくれていると思える音楽がいくつかある。そうしたものに出逢えたことは生きていく上でとても幸福なことなのかもしれない。音楽に限らず、人によっていろんな形があっていいと思う。 わたしの場合、それは音楽であり本だった。

          Vol.28: Essentials | かけがえのないもの

          Vol.27: A night walk | 夜の散歩

          Vol.27: A night walk | 夜の散歩 3歳の子供がなかなか眠らない。そんな日々がずいぶん続いている。 妻は疲れているのだろう、最近は先に寝てしまう。いつも助けられているよなぁと思いながら深夜、寝ない子供と遊ぶ。体力的には厳しくとも何にも変え難い喜びの時間でもある。ただ困ったことに子供がどうしても外に行きたいと言いだす時がある。 仕方がない、と一緒に外を散歩をすることにした。もう深夜だ。誰もいない夜道を2人で歩く。とても静かで、近くの踏切の音がよく響く。

          Vol.27: A night walk | 夜の散歩

          Vol.26: Message in a bottle / 忘れられない手紙

          Vol.26: Message in a bottle / 忘れられない手紙 お客さまからもらった忘れられない手紙がある。折に触れて読み返しては自分の仕事の意味について考えている。書かれていた内容についてはここでは控える。 ただわたしが何より驚いたことは「わたしたちの営みが誰かの夢であったこと」だ。全く想定していなかったから、これには心を揺さぶられた。 そしてこの湧き上がる感情はどこから来るものなのか考えてみた。それはわたしたちの理念や目指すべき方向性への共感の表明だっ

          Vol.26: Message in a bottle / 忘れられない手紙

          Vol.25: Polyrhythm | ポリリズム

          Vol.25: Polyrhythm | ポリリズム 今年は季節の巡りが例年に比べて、2〜3週間早いイメージがある。このことは5月の段階から牧場のメンバーに情報発信をしてきた。農場は季節対応が重要な仕事になるからだ。 7月を迎え、なおさらその実感を強く持っている。これから先、特にお米の作業によってそれを顕著に感じるだろう。ポリリズムのように最後に辻褄が合えばいいのだけれど、おそらくそうはいかない。 変な言い回しになるが異常が常態化しているのかもしれない。であるならばそれ

          Vol.25: Polyrhythm | ポリリズム

          Vol.24: Moments | 瞬間

          Vol.24: Moments | 瞬間 何をもって美しいと思うかは人によってそれぞれだ。美しいとはどいうことだろう。そんな問いに行きつくが、それもなかなか難しい。そうした話を通り越してこんな問いかけをされて少し戸惑った。 「世界は美しいと思うか」 正直、世界が美しいかどうかは、わたしにはわからない。そうかもしれないし、そうでないかもしれない。けれども「世界には美しい瞬間がある」という実感はある。教えてくれたのは家族やかけがえのない友人たちだ。 何をもって美しいと思う

          Ep.7: In a commotion | ざわざわ

          坊主にしたいと、ふと思いたったのだった。そのままQBハウスへと行き、髪を刈ってもらった。その様子を見て立ち止まる人もいたから、それなりだったのだろう。 帰宅すると玄関で妻が絶叫した。子供たちは大笑い。翌日会社に行くと、絶句する人、わたしと気づかない人、涙がでるほど笑う人など様々だった。 基本的には会社はざわいていたと思う。少し申し訳ない気持ちになった。ふと翌週に同窓会があることを思い出した。10年振りの再会に坊主で登場か…. K Link | リンク Twitter

          Ep.7: In a commotion | ざわざわ

          Vol.23: The old man and the Bamboo | 老人と竹

          Vol.23: The old man and the Bamboo | 老人と竹 人は流れ行く時に区切りと単位を設け、時間軸を創造した。サイボクで言えば4月に新たな1年がスタートとなり翌年の3月が期末となる。 物事の節目がくるといつも祖父が語っていた「竹の素晴らしさ」についての話を思い出す。 竹のしなやかさを作る「節」、そして物事の区切りを指す「節目」という言葉。わたしはこの竹の特性とメカニズムが好きで、わりと「節目」を大切にして暮らしている方だと思う。 そしてそれ

          Vol.23: The old man and the Bamboo | 老人と竹

          Vol.22: Day camp | デイキャンプ

          Vol.22: Day camp | デイキャンプ 高校の同級生が人生初のデイキャンプに連れていってくれた。木々に囲まれた美しいキャンプサイトは天候に恵まれたことに加えて、人がおらず静謐な空間だった。 心が落ち着くような優しい風が吹いていた。揺れる葉の音、複数の異なる鳥の鳴き声、そして近くで流れる川のせせらぎ。足元には木漏れ日が満ちていた。すべてが心地よかった。 友人と2人で周囲を散歩をしたり、火を見つめながら語らった。食事もした。焼き鳥やシイタケ、ピーマンの丸焼きがと

          Vol.22: Day camp | デイキャンプ

          Vol.21: Passage and stand still | 移ろいと静止

          Vol.21: Passage and stand still | 移ろいと静止 自然の近くに身を置いていたいと思う。立ち止まって眺めるだけでもいい。季節ごとの装いも味わいがあって決して飽きることがない。気づくと時間が過ぎているが、どこか満ち足りた気分になっている自分に気づく。やはり外は気持ちいいな、と思う。 最近、モノ忘れが激しい。忘れたくない記憶もやがては移ろっていく。忘却に抗うために写真を撮るのか、写真を撮るから記憶はいっそう移ろうのか。今、この瞬間を大切にしない訳

          Vol.21: Passage and stand still | 移ろいと静止