見出し画像

陰陽道

コロナ禍に虚偽情報や怪情報が氾濫し、恰も、全人類が呪いにでも掛けられたが如く狂騒に暮れていた頃、私は、ふとプレモダンへの思想に関心を抱き、明治三年の陰陽寮の廃止に至るまで日本において官民共に隠然と影響力を持っていた陰陽道について諸々調査をしていた。
実際の陰陽師と言うのは、フィクションの世界に描かれる、呪文を唱え、怪異と戦う安倍晴明像の様なものとは大きく異なり、主に、天文の観察をし、暦を作る極めて地味な仕事をする者であったと言う。古代より、宮中では日付や方角に吉凶があるとされ、陰陽師達は貴族が災いを避ける為に占いをした他、民間では、近世まで日本の人口の過半数は農民であった為、陰陽寮にて作成された暦は農事において非常に重要なものであった。かつての陰陽寮は、現代における気象庁の様な役割を果たしていたと言える。
古の頃より、人間にとっての最大の脅威は、天変地異などの自然災害であり、現代も尚、自然現象の研究は、人々が安全な生活を送り、万が一の際の対処策を立案するに当たって欠くべからざるものである。災害時に、伝聞や平時の慣習に囚われていては、恰も呪いに掛けられたが如く右往左往し、命をも危険を晒す事になる。陰陽寮が設立されてから一三〇〇年以上、晴明ら陰陽師達の行った仕事は、今尚、日本の官庁の中で命脈を保っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?