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○日本語教育・日本語教育学評論

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#英語シャドーイング

日本語の習得と習得支援について丁寧に議論する② ─ シャドーイングのキモは疑似的な当事者経験

 「丁寧に議論する①」で、「学生たちは言語知識を身につけているが運用能力に結びついていない」ということについて、丁寧に議論しました。そして、最後の部分でシャドーイングの有効性を指摘しました。今回は、シャドーイングの有効性について議論します。   1.演劇的指導となぞり語り  言語教育ではしばしば演劇的手法の有効性がしばしば論じられます。セリフをしっかり「身につけて」実際に演じるという方法は有効でしょうし、実際に体を動かして演じなくても台本のセリフをその人物になりきって「演じ

日本語の習得と習得支援について丁寧に議論する① ─ 「学生たちは語彙や文型・文法事項を知っているが、話せない/使えない!」、「既習の言語知識が運用能力に結びついていない!」

 日本語の先生から、(a)「学生たちは語彙や文型・文法事項を知っているが、話せない/使えない!」、(b​)「既習の言語知識が運用能力に結びついていない!」、という課題の指摘をよく聞きます。この指摘は、概略はその通りだと思いますが、十分に丁寧な指摘ではないと思います。詳しく検討してみたいと思います。 □ 問題の所在 1.「学生たちは語彙や文型・文法事項を知っている」「既習の言語知識」 ─ 明示的知識の問題  ここに言う「語彙や文型・文法事項」というのは、客体的な言語事項のこと