《ただ一度の生》に目覚め、きっぱりと《若さ》から決別することは・・・
発表年/1968年
この作品は、辻邦生がフランスで想を得て書いた一連の短編小説のひとつです。南イタリアのブリンディジからイオニア海を渡り、ギリシャのアテネへと旅をしながら、主人公である「私」が《生》への啓示を受ける話です。
特別これといったストーリーがあるわけではなくまた、旅の途中でクリスチアーヌとモニクというフランス人の若い姉妹と知り合いになりますが、彼女たちは単に若さの象徴として登場しているのみで、話の中で特に大きな行動を起こすわけでもありません。
最初に、《死》をイ