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辻邦生作品レビュー/短編小説

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辻邦生さんの小説作品のうち、短編のレビューをアップしていきます
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#絵画

『十二の風景画への十二の旅』<人間の魂の反映として>見られた十二の風景画による物語

発行年/1984年 前回の『十二の肖像画による十二の物語』に続く企画『十二の風景画への十二の旅』です。 現代アートにおいて、風景画というのはその役割を終えた感があります。かつて大抵の風景画は、画家がどれだけ感情移入するかといった点が大きな命題でした。見たものにどれだけ迫ったとしてもそこには必ず画家の心情が込められており、風景画の美しさはその心情の美しさだったと言えるのではないでしょうか? そこから現代絵画への移行について、辻邦生さんは『十二の風景画への十二の旅』の「物語のは

『十二の肖像画による十二の物語』肖像画からインスピレーションを受けて書かれた創作説話

発行年/1981年 『風の琴』は、もともと単行本として出版された、肖像画・風景画それぞれをモチーフとして書かれた12ずつの物語『十二の肖像画による十二の物語』『十二の風景画への十二の旅』を1冊にまとめた文庫本です。当初依頼があったのは名画鑑賞的なものだったのですが、そういうものなら別に自分が書かなくても専門の美術史家か誰かでいい、自分はあくまで小説家として、小説を書かせて欲しい、と、辻さんのほうから出版社にお願いをして書かれたのが、上記の24の物語だったのだそうです。 『