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Camp Counseling #00

キャンプカウンセリングとは何か?

『キャンプカウンセング』は、戦後日本の組織キャンプの始まりから少し遅れて日本に翻訳され、多くの指導者に読まれた。

それから版を重ね、第八版が2012年に Karla HendersonJoel Meierによって出版された。

To A. Viola Mitchell (1904-1984)
Who provided inspiration, ideas and sage advice 
to legions of aspiring camps counselors
since she wrote the first edition of Camp Counseling in 1950.

カーラは2017年にWEAJ 5thカンファレンスに合わせて来日し、その際に京都でも講演会を開催した。
ACA(アメリカキャンプ協会)の主任研究員でもあるデボラ・ビアレスキーとともに、日本キャンプの課題やアメリカがこれまで取り組んできた研究などについて、ディスカッションを交わした。

" If camp is indeed a microcosm of the real world,
then the skills learned will carry over to that world. "
「もしキャンプがリアルな世界の縮図なら、
キャンプで得たものは現実の世界へと引き継がれるであろう」

このカーラとの出会いは、私がそれまで持っていた疑問を色々な角度から解いてくれ、レジャーでも単なる学習でもない「生きた概念としてのキャンプ」が本当に存在するのだと気づかせてくれた。

「みんな仲良くなって、キャンプで楽しい思い出を作ろう」

よくあるキャンプの合言葉です。

私はこう思います。
それは「幻想」である、と。

例えば40人の参加者がいて、15名の指導者がいて、その55名が全員仲が良くなるキャンプなんて、あり得るだろうか。
全員が仲良し。そんな世界は現実的だろうか。
全員が仲良しになるためには、もしくは仲良しだとなったということは、一体何が起こったということなのか。
一度真剣に考えてみたほうがいい。

キャンプが本当に社会課題に応えるものであるならば、嘘を教えてはいけない。
私たちが本当に準備しなければならないキャンプの環境は、55人が仲良くなるための環境ではなく、「55名の異質な人間が集って、ある一定期間ともに生活することにおいて、学べることはなんであるか。」それを検証し、吟味し、次の行動に(さらにはキャンプ後の行動に)応用し、変化していくためのプラットフォームとしてのキャンプ環境でなければ鳴らないと思っている。

体系化されたOrganized Camp

Organized Campを当時の人々は「組織キャンプ」と訳した。
この言葉ははじめ私に誤解を与えた。
私ははじめ「組織だってキャンプを運営する」ことが組織キャンプだと思っていた。

組織キャンプは、自然環境の中で、集団生活を通じて、創造・レクリエーション・教育の機会を提供し、有能な指導者とともに、自然環境を活かし、キャンパーの心理的・身体的・社会的・精神的発達に貢献する。(ACA, 1993)

今では、このACA(American Camp Association)の定義を理解することができる。


2012第八版のキャンプカウンセリングには、

Organized / Supervised Camp

と書かれている。
オーガナイズされた、スーパーバイズされたキャンプ。
どちらもカタカナで理解した方がスムーズかもしれない。

豊かな自然環境の中で、人間の体魂霊を育むために設計されたキャンプが、組織キャンプなのである。

Camp Counseling には副題があり、

Leadership and Programing for the Organized Camp

キャンプカウンセラーの人間的資質とキャンプをどう組み立てていくかの計画と実践の2本立てで構成されている。

Part1 Growth, Structure, and Values of Organized Camps 1-5(1)
組織キャンプの発展、構造とその価値

Part2 The Role of Camp Staff 6-11(55)
キャンプスタッフの役割

Part 3 Camp Activities 12-20 (139)
キャンプアクティビティ

Part4 Outdoor Living, Camping, and Trail Skills 21-31(221)
野外生活、テント泊、遠征技術

以上の4つのパート、31の章から構成されている。
この構成からもわかる通り、組織キャンプには「有能な指導者」が不可欠である。

人が出会い、喜びも悲しみも、怒りも慰めも、希望も、すべてを保持しながら生きていく。その社会体験をキャンプの中で引き出したり、導いたり、寄り添ったりするのである。

全337ページの137ページまでは、「キャンプカウンセラーとはどんな人間なのか?」が書かれているのである。

プログラムをどう作るかやどうやって評価するか、またはキャンプ指導者に必要なスキルは、この本の後半で言及される。
前半部分をいかに読み込めるかが、勝負である。

学びから実践、実践から学び、そして共有へ

私たちが歴史を学ぶのは、未来を予測するためである。

「学問とは未来を予見することだ」

組織キャンプには大変多くの実績がある。
この本にある歴史も含め、あらゆる人間の発展の歴史に触れることが必要だ。

なぜならキャンプという営みは、文化の延長線上にあるからである。

「テント生活の名残は何か?」

その答えがわかるだろうか。

私たちは自然の営みから人間の生活を切り離してきた。

カーテンを開けて光を入れる時、またカーテンを閉じて夜を迎える時。
布を開けて閉じるその営みは、テント生活の名残なのである。

" If camp is indeed a microcosm of the real world,
then the skills learned will carry over to that world. "

体験学習サイクルをキャンプの中だけで回すのではなく、キャンプとキャンプで回すのではなく、いつでも現実の世界とキャンプの世界を繋いで置かなければならない。

このことが、民主主義がおそらくまだ成熟していない日本にとって、
テクノロジーが発達し、より高度なコミュニケーション技術や倫理観が求められる未来にとって、
キャンプが必要なものであることの証明になるはずだからである。

この第八版に触れながら、日本のキャンプを一緒にアップデートしていきましょう。

2018年より試みを始めています。

One Camp 異なる境遇で過ごす私たちがともに生きる世界へ


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