大阪市:学力テストの結果を待遇に反映する方針に、反対する理由

change.org の署名キャンペーンにも、賛同させてもらいました。また、私が反対する理由について、ご質問も頂いたので、ついでにこちらにも、書いておきます。

大阪市長が表明された方針は、以下をご覧ください。

人によって反対する理由は様々でしょうが、私が反対する理由は、以下の3つです。個人的には教員のパフォーマンスに応じて、待遇を変えること自体には賛成です。成果を上げている先生・頑張っている先生の待遇はよくすべきと思うのだが、成果=学力テスト(だけ)ではないし、効果があるか疑わしい。

① 成果(学力テストの点数向上)が期待できないと思われる

学力テストの点数が上がること自体はいいことではあるが、学力テストの上下に対して、金銭的インセンティブを付与した場合に、成果が上がったという明確なエビデンスがない。正確には全くないわけではないが、逆効果だった、影響しなかったという研究結果も多い。
中室先生の『学力の経済学』にも、学力と教員への金銭的インセンティブについての事例がいくつか紹介されていましたね。

② 学力テストの点数以外での負の影響が想定される

①に関連して、学力テストの点数以外の面で、マイナスの影響が出てしまうという報告もあります。評価がそこに傾くと、当然指導や学校活動にも偏りが出てしまいます。よく研究・指摘されるものとしては、米国の no child left behind 政策による影響など。以下の書籍がわかりやすいと思います。

③ 人事評価制度として不適切

学力テストという教員の業務および児童・生徒の(広義の)学力の極一部分のみ、かつ教員の指導以外の影響因子も大きい、学習の結果に対してのみ関連づける学力テストという一部の評価基準のみで、教員の待遇を決定するのは、人事評価制度として不適切ではないでしょうか。民間で考えてみても、メンバーのパフォーマンスが上がる施策とは言えなさそう。


まずは、学力テストの点数が低い状態にあることの原因や要素(変数)の検証から始める。その上で、インセンティブを付与することが有効な要素(変数)が見つかり、付与の効果について妥当な仮説が成り立つようであれば、十分な制度設計をした上で、やってみればよいのではないでしょうか。それでも、学力テストの点数のみにインセンティブを出すことには、反対ですが。

ちょっとその後の自分のボーナス削る発言なども見ていると、そこまでの考慮があるとは思えないですよね。有効な施策の検討にエネルギーを割いてほしい!


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