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島根の教育は、なぜ注目されるようになったのか?①

今年も NPO法人eboard では、島根県益田市に職員、インターン、社会人ボランティアが滞在させて頂き、5日間の合宿を実施します。eboardに参画して2、3ヶ月のメンバーもいるため、「島根の教育がなぜ注目されるようになったのか」、外部の人にも知って頂きたく、ここにまとめておきます。

隠岐島前高校の奇跡

「島根の教育魅力化」の始まりは、隠岐島前高校の魅力化から始まりました。隠岐島前高校は、島根県の北約60kmに位置する隠岐諸島島前地域(海士町、西ノ島町、知夫村)唯一の公立高校。人口減少に伴い、高校への入学者数も減少し、平成9年からの12年間で生徒数は、1/3になり、統廃合の危機に瀕していました。

短期的な経済合理性の観点から見ると、学校や自治体の統廃合を適切と考える見方もあるかもしれません。しかし、以下のような要因により、むしろ統廃合は人口減少を加速させ、地域の生産・消費を減退させ、地域経済にも大きな損失をもたらします。
・一度地域から出て行った高校生は、そのまま進学や就職を域外でするケースが多く、人口流出に直結する。
・場合によっては、家族(しかも働き盛りの世帯)ごと域外に流出するケースも。
・地域に学校がないところには、子育て世帯はUIターンしたくないよね。

ここで、隠岐島前高校の魅力化について書くのは、(私は当事者でもなく)適切ではないので割愛しますが、平成20年を最後に入学者の減少は止まり、生徒数はV字回復を遂げました。すげぇ。

http://miryokuka.dozen.ed.jp/about/ より

詳しくは、書籍「未来を変えた島の学校」を読んでいただくと、V字回復に至るまでのストーリーを知ることができるかと思います。

高校魅力化プロジェクトの共通点

ここでは、ストーリーの代わりに、その後の県内外の高校魅力化プロジェクトに引き継がれた要素、共通しているポイントをまとめてみたいと思います。
・町予算による高校への教育投資
高校は都道府県立になるため、通常は都道府県教育委員会の管轄。高校に対して市町村が大きな予算を割くことは、あまりありません。隠岐島前を含む島根の魅力化プロジェクトには、市町村の予算が充てられています。その中でも、隠岐國学習センター のような公営塾(公設塾)の設置は、象徴的・特徴的なものになっています。
・寮の設置と町外・県内外からの生徒募集
高校への入学者数を増やすためには、①域内の中学生の高校進学率を上げる、②域外からの進学者を募集し増やしていく、しかありません。域外から来る高校生のための制度や、量などの住環境等を整備。
・外部人材の活用
予算と制度を作っても、域内外を問わず、生徒が集まる魅力的な学校を作っていかなければなりません。ただでさえ、人口が減っている中、都会のように大学生を活用することもできないので、長期に関われる教育に長けた人材を外から引っ張ってきます。島根では、「教育支援コーディネーター」「魅力化コーディネーター」と呼ばるようなポジションで、都市部からやってきた若者が活躍していたりします。先ほどの、公営塾でもこうした「ワカモノ・ヨソモノ」が講師を勤めていたりします。
・高校のカリキュラム改革
そしてもちろん、公営塾のような学校の外だけではなく、中、つまり授業内での魅力化も、総合の授業を皮切りに進んでいきます。地方の高校魅力化の要件として、「他の高校との差別化をいかに図るか」が必要になってくるため、「そこにしかない」地域の魅力や社会課題に対して取り組むプロジェクト型の学習が、積極的に取り入れられるようになってきました。

島根県内、全国の高校魅力化

隠岐島前高校でこれだけの成果が出れば、そりゃみんなほっておきません。地方創生、地域の人材育成の観点からも、各省庁や全国の自治体から注目が集まり、まずは島根県内、さらには全国へと高校魅力化の取り組みは広がっていきました。

島根については、県外からの進学を積極的に募集している高校をまとめた以下のようなページもあります。

島根までの道中。バスと鉄道で10時間。まだ1/5といったところです。


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