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70年前に逆戻りしたかのような永住取消の法改悪

2024年6月14日、故意に公租公課の支払をしない場合等に永住許可の取消ができるとした入管法改悪案が参議院本会議で可決、成立してしまいました。

たまたま、昭和27(1952)年の国会議事録を読んでいたら、当時審議されていた出入国管理令について、こんな議論がされていたのが目に止まりました。

本令第二十四條によりますと、癩病者、精神病者、微罪で懲役を受けた、ストライキをやつた、デモ、ビラ、何にでも引つかけて強制送還できるようになつております。特にひどいのは、貧困者という理由で、できることであります。戰争中に日本軍国主義は、朝鮮、台湾から三十余万の労働者を強制的に連れて参りましたが、この人たちが如何に貧困な状態において終戰を迎えたかは言葉を費す必要がない。然るにその後、歴代の政府、特に吉田政府は何の面倒も見なかつた。就職、生業資金、住宅の世話、税金の減免、何一つやつていない。これで貧困者以外に如何なる道が残されているというのか。

昭和27年4月28日 参議院本会議  兼岩傳一議員の意見


そう、当時の出入国管理令24条4号ホは次のように定められていました。

24条 左の各号の一に該当する外国人については、第五章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
(中略)
4号 ホ 貧困者、放浪者、身体障害者等で生活上国又は地方公共団体の負担になっているもの

昭和56(1981)年には削除
ところが、この条項は、昭和56(1981)年の改正時に削除されています。その理由について、政府委員である法務省入国管理局長大鷹弘氏は次のとおり説明しています。

御指摘のらい病患者であるとか精神病者、貧困者、こういう者はわが国にとって好ましからざる者として上陸拒否のあれになっておりますが、一たんわが国に入国した外国人でらい病になったような人あるいは精神病者それから貧困者、こういう者につきましては、たとえば国際人権規約ですべての人に人権を保障するというようなことが定められておりますし、さらに難民条約で、貧困を理由にその難民を追放することは許されないというような規定がございますので、そういう事実、さらに実際上こういうことで退去強制にしたという例が非常に少ないということも考えまして、退去強制事由の中からこの三つを落としたということでございます。

昭和56年5月22日 衆議院法務委員会 大鷹弘法務省入国管理局長答弁

なんと、国際人権規約や難民条約を根拠としていたのですね!

ところが、それから40年以上経った今日、故意に公租公課の支払をしない場合等に永住許可を取り消す制度が作られてしまいました。事情が変わって、貧困で支払えない場合もあるでしょうに。

今回の改悪、70年以上前の出入国管理令当時まで戻ってしまったかのようです。情けない。

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