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112日間入管収容場の中で運動させなかったことを違法とした2002年東京地裁判決とそれを覆した2003年東京高裁判決

2024年5月17日の入管問題調査会で、改定法により処遇はこう変わる、というお話をさせて頂きました。

その中で、現在の被収容者処遇規則28条では原則毎日とされている戸外運動が、改定法では「日曜日その他法務省令で定める日を除き、」(55条の38)とされたことをお話ししました。そして「その他法務省令で定める日」とは、改定後の出入国管理及び難民認定法施行規則により、土曜日、祝祭日、年末年始(12月29日から1月3日まで)となる見込みです(改定法施行規則50条の19が引用する50条の15第3項2号)。

1年は52週間ありますから、土日だけで104日。祝祭日は16日。年末年始で元日を除くと5日。祝祭日や年末年始が土日に重なることもあるので、日数は年により変わりますが、単純合計すると125日と、1年の3分の1は運動できないことになります。明らかな改悪といえます。

112日間運動できなかったことを違法として20万円の支払いを命じた2002年12月20日東京地方裁判所判決

この条文に関連して、5月17日にお話しした国賠事件、古いことなのでご存じない方も多いと思いますから、ご紹介します。
この事件は、クルド人の難民申請者が申請中にもかかわらず収容令書によって収容されたことで、大橋毅弁護士と収容の違法性を徹底的に争った事件でした。
その主張の一部は、後に、「『全件収容主義』は誤りである」という論文にして、移民政策学会の学会誌創刊号に掲載してもらいました。

一審判決では残念ながら、こちらの主張はほとんど認められなかったのですが、冒頭で述べたとおり、被収容者処遇規則では毎日戸外運動の機会を保障しなくてはならないとしているのに、収容されてから仮放免されるまでの112日間、一度たりとも運動させなかったことについて、東京地方裁判所は


2002年12月20日東京地方裁判所判決(平成10年(ワ)3147号)

自分たちが決めた規則を112日間も守らなかったのだから、違法と言われて当然だと思います。

当たり前の結論を覆した2003年東京高裁判決


ところが、その控訴審である東京高裁は、国側の理屈を丸呑みし、一審判決を破棄、112日間運動させなかったことも違法ではなかったと判断しました。

2023年8月27日東京高裁判決(平成15年(ネ)581号)

違法ではないとした理由は



・収容場に運動場設備がないのはオーバーステイ事案の急増に対処する必要があったから
・被収容者には居室内でストレッチ体操等の軽い運動をすることについては特に制限しなかった
・居室内への採光は十分可能(→可能でもやっていない)
・適宜居室窓を開けて外気を採り入れることができた
・各居室には冷暖房が設けられていた
・各居室にはテレビが設置されており、午前9時(点呼終了後)から午後9時まで視聴が可能だった
・居室内の飲食、喫煙についても比較的自由が認められていた
・被収容者から体調の変化や体調不良等、健康保持に関する申出がある場合には、医師又は看護士の診察を受けさせ、あるいは外部病院へ連行することなど、被収容者の健康管理には配慮がなされていた

ということですが、今改めて読んでも全然理解できないですね。
こんなの当然のことで、自分たちで決めた、「毎日」戸外運動の機会を保障するというのをナシにできる要素でも何でもないことは、小学生でも分かるのではないでしょうか。テレビ見られるんだから外で運動させないで良いというのはどういう理屈なのか、さっぱりわかりません。


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