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「長期収容の理由として治安上の考慮を強調することは、日本人の出獄者との扱いとの関連より適当ではない。」とする1955年外務省アジア局第5課作成文書

李英美さんの「出入国管理の社会史 戦後日本の『境界』管理」という本を読んでいます。

昨日読んだところで、60〜70年前の日本政府は、私自身の考えと同じ見解を取っていたことがわかりました。今より遙かにまともだったのですね。

収容の目的〜在留活動禁止は含まれない


一つ目は、収容の目的についての以下の記述です。

「入国者収容所とは、法務省の見解(1965年)によれば、『出入国管理令の規定による退去強制令書の執行を受ける者を送還するため、一時これらの者を収容する機関』である。すなわち、送還のための『船待ち所』であった」

李英美「出入国管理の社会史 戦後日本の『境界』管理」115頁(明石書店 2023年)


 国は収容の目的は、送還確保だけではなく、在留活動の禁止を含むとして、逃亡の危険が無い人や、送還停止効によって送還が法律上できない難民申請者の収容を正当化しようとしていますが、それは誤りだということを常々訴えております。

 詳しくは、ここに書きました。

https://www.akashi.co.jp/book/b356723.html

移民政策のフロンティア

入管収容の目的は何か――「在留活動禁止説」を批判する【児玉晃一】

入管収容を予防拘禁として用いるのは許されない

また、1955年に外務省アジア局第5課が作成した「大村収容所に収容中の朝鮮人に関する問題」には、次のような文書があるそうです。

「アジア局第5課作成文書には、長期収容の問題について『継続的収容は法的には可能』であるが、『長期収容の理由として治安上の考慮を強調することは、日本人の出獄者との扱いとの関連より適当ではない。』」

李英美「出入国管理の社会史 戦後日本の『境界』管理」119頁(明石書店 2023年)


2018年2月28日に法務省が出した仮放免指示では、重大犯罪で刑務所から出て来て収容されている人とか、再犯のおそれが払拭できない人とかは仮放免を原則として不許可にするとしています。1955年の外務省アジア局の方がはるかにまともな考え方をしていたことがわかります。

2024年5月29日 15時54分追記
原文を入手できましたので、以下に保存しておきます。本当に書いてありました。



この点は、「入管問題とは何か 終わらない『密室の人権侵害』」にも書かせてもらいました。


私の見解に対しては、入管OBの方から批判を受けましたので、それに対する再反論は以下に書いておきました。

60〜70年前の官僚の考えの方が遙かに常識的でまともだったのがわかりました。逆に、今なぜこんなに後退してしまったのか、残念でなりません。

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