見出し画像

サヨナライツカ

「君は死ぬ前に、誰かを愛したことを思い出すかな? それとも誰かに愛されたことを思い出す?」「愛されたことかしら」

結婚を控えた青年が、価値観も金銭感覚もあらゆることがかけ離れた年上の女性と赴任先のバンコクで送った性愛の日々を綴った物語、「サヨナライツカ」。作者は辻仁成氏。中山美穂さんの元夫です。

女性は、青年に婚約者がいるとわかっていながら自分を捨てた富豪の夫に見せつけたいとの思いから、青年を惑わしたのだが、徐々に青年に惹かれていく。青年も、婚約者とは正反対の気性が激しい彼女の危険な魅力と甘く淫ら日々にはまっていく。しかし、青年の挙式が現実のものとして迫ってきたことで、心の綱引きが二人の間で始まり、お互いの高まったストレスの解消のため、さらに二人は性愛におぼれていく。

挙式寸前、彼女は「きっともう一生会えないわね」との言葉を残し自ら身を引き東京へ帰り、青年は婚約者と家庭を築く。

25年後、順風満帆に出世の道を上り詰めた青年は会社の専務取締役となっていた。会社の重要な行事のため再びバンコクを訪れる機会があり、偶然、彼は彼女と再会する。彼女は、彼と過ごした4ヶ月のことを忘れることなく、彼を愛したことを心に秘めて生きてきていた。二人は再会を喜び、食事をともにし、思い出話に浸ったものの、それぞれの立場を理解し、わきまえたまま、それぞれの生活に戻った。

日本に帰った彼は魂が抜けたような日々を送っている中、彼女から手紙が届く。そこに次のように書かれていた。
「最初は愛されたことを思い出す、と答えました。でも4ヶ月を経って、私は愛したことを思い出すだろうと申し上げ、その通りになりそうです。その気持ちが今も変わらないことを誇りに思います。」
 さらに5年後、癌を告知された彼女の病床のもとに駆けつける・・・。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?