<答え>2020年度 特別区(福祉)専門記述 過去問解答例


福祉職の専門記述は、過去問からの出題がほとんどです。
2020年度の過去問リメイク率は、50%でした。



〜皆さまへお願い〜

こちらは、一解答例となります。正答が公式に発表されていない以上、「記述式」という問題の特性から、特別区人事委員会側の期待する解答とは異なる場合がございます。そのことをご了承の上、受験対策の一助としていただけましたら幸いです。


番号1 社会学概論

テンニースが分類した 2 つの代表的な社会集団について説明せよ。

◇解答例

テンニースは、「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」という2つの社会集団について提唱した。「ゲマインシャフト」とは、愛情など、人間の「本質意志」によって結びついた集団のことである。例えば、血縁による家族や地縁による村落、友情による都市などが該当する。一方「ゲゼルシャフト」とは、目標を達成するための利害や打算などの「選択意志」によって結びついた集団のことである。例えば、結社や大都市などの近代的な社会が該当する。両者は同時代的に併存する者であると同時に、歴史的に見ると、前近代では「ゲマインシャフト」が優位であったが、近代になると「ゲゼルシャフト」の優位に推移・進化してきたという。

◇過去問分析

「テンニース」★★★★☆
→2005年と、2009年に出題されています。


番号2 社会福祉論①

地域包括ケアシステムに関する次の問( 1 )、( 2 )に答えよ。
(1 )地域包括ケアシステムの内容と、その構築が求められる背景について説明せよ。
(2 )平成26年に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(医療介護総合確保推進法)」による介護保険法改正の概要について説明せよ。

◇解答例

(1)
地域包括ケアシステム
とは、重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを継続できるよう、医療・介護・福祉・予防等を一体的に提供し、地域において包括的な支援をしていく仕組みのことである。地域包括ケアシステムが求められる背景として、日本の急速な高齢化が挙げられる。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、さらに住民の医療や介護の需要が高まるとこが見込まれる。そのような状況の中で、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の一層の強化を図るため、このようなシステムが構築された。

(2)
さらなる医療と介護の連携を強化するため、2014年に「医療介護総合確保推進法」が成立した。同法は、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、)地域包括ケアシステムの構築を通して地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するためのもので、同法との整合性を図るために介護保険法が改正された。改正の主な内容として、①「地域包括ケアシステムの構築」と、②「費用負担の公平化」が挙げられる。①「地域包括ケアシステムの構築」に関しては、市町村に「地域ケア会議」設置の努力義務が課せられたほか、全国一律の「予防給付」が、市町村の行う「地域支援事業」(の1つである「介護予防・日常生活支援総合事業」のうち「第1号事業」)へと移行された。また②「費用負担の公平化」に関しては、一定以上の所得のある者に対し、自己負担を2割に引き上げる一方で、低所得者の保険料軽減が拡充された。※()部は、省略可。


◇過去問分析

「地域包括ケアシステム」★★★☆☆
→関連用語「地域包括支援センター」が、2013年に出題されています。

ひとこと:(2)は細かいなぁ。

◇参考資料

(2)厚生労働省老健局「医療介護総合確保推進法 (介護部分)の概要について」、2014年、p.6(2022年8月16日 最終閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000061858.pdf



番号3 社会福祉論②

児童相談所に関する次の問( 1 )〜( 3 )に答えよ。
(1 )児童相談所の主な業務(里親に関する業務を除く。)を 3 つ挙げよ。
(2 )「児童虐待の防止等に関する法律」で定義されている児童虐待の行為を 4つ挙げ、それぞれ説明せよ。
(3 )里親の種類を 4 つ挙げ、それぞれ説明せよ。

◇解答例

(1)
①児童に関する相談・支援業務
②児童の心理的・医学的判定業務
③児童の一時保護業務
(そのほか、入所措置業務、市町村の児童家庭相談対応に対する援助 etc.)

(2)
児童虐待には、①心理的虐待②身体的虐待③ネグレクト(育児放棄)④性的虐待の4種類がある。①心理的虐待は、児童に対する著しい暴言や拒絶的な対応、児童の面前でのDVなどが該当する。②身体的虐待は、殴る・蹴る等により児童の身体に著しい外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行を加える行為のことを指す。③ネグレクトは、育児放棄とも呼ばれ、児童の正常な発達を妨げるような著しい減食や長時間の放置など、児童の監護を怠る行為のことを指す。④性的虐待は、児童にわいせつな行為をする、またはさせる行為や、ポルノグラフィの被写体にすることなどを指す。

(3)
里親には①養育里親②専門里親③養子縁組里親④親族里親の4種類がある。①養育里親は、原則18歳未満の要保護児童を一定期間自分の過程で養育する里親のことを指し、②専門里親とはそのうち、虐待・非行・障害等により、専門的な援助を必要とする者を養育する里親のことをいう。③養子縁組里親は、将来養子縁組により養親となることを希望する里親を指す。④親族里親は、実親等からの養育が期待できない場合に、代わって養育する親族のことをいう。

◇過去問分析

(1)「児童相談所」★★★★☆
→2002年Ⅱに出題されています。特別区は2016(平成28)年度の児童福祉法改正により児童相談所の設置が可能になりました。児相関連は絶対押さえておきましょう!
(2)「児童虐待」★★★★★
→2005(平成17)年度と2008(平成20)年度に出題あり。
(3)「里親」★★★☆☆
→2004(平成16)年に出題されています。また関連用語「社会的養護」については2015(平成27)年度にも出題されています。

◇参考資料

(1)厚生労働省「児童相談所運営指針」第1章(2022年8月15日 最終閲覧)

(3)東京都福祉保健局「里親の種類」(2022年8月15日 最終閲覧)



番号4 社会心理学

ソシオメトリーについて、次の問( 1 )~( 3 )に答えよ。
(1 )ソシオメトリーの理論の考案者を挙げ、その内容について説明せよ。
(2 )ソシオメトリック・テストにおいて指定される条件を 3 点挙げよ。
(3 )ソシオグラムについて説明せよ。

◇解答例

(1)
提唱者:ヤコブ・モレノ 
内容:ソシオメトリーとは、集団における個々の関係性を、人間関係に着目して測定するものである。

(2) 準備中・・・

(3)
ソシオグラムとは、集団の人間関係について、誰が誰に対し、どのような感情を持っているか、どのような影響を与え又は与えられているかについて、矢印を用いて図式化したもののことである。


◇過去問分析

「ソシオメトリー」★★☆☆☆
→2006(平成18)年度に出題あり。


番号5 児童心理学

社会性の発達について、次の問( 1 )~( 3 )に答えよ。
(1 )国際的に用いられている発達障害の診断基準を 2 つ挙げよ。
(2 )学習障害について説明せよ。
(3 )エリクソンが唱えた発達に関する理論について説明し、青年期の課題を挙げよ。

◇解答例

(1)ICD・DSM

(2)
学習障害とは、知能は正常範囲にあるにもかかわらず、読み書き・計算・聞く・話す・推論等の特定の学習能力において困難を示す障害のことである。学習障害は脳の機能障害であるとされ、鏡文字となったり、数の概念を理解できなかったりする。また、落ち着きがない、集団行動ができないなど、行動の一部に偏りがみられることもある。学習障害を持つ者への援助において大切なことは、学校場面においては、黒板を写す時や発表時、宿題等の学習面からの支援と、座席の位置等の環境面での支援が大切である。

(3)
エリクソンは、「ライフサイクル論」を提唱した。これは心理社会的発達理論とも呼ばれ、人の発達を、社会との関わりという側面から理解しようとしたものである。乳児期から老年期までの人生を8つの発達段階に分け、それぞれの段階で生じる発達課題(心理社会的危機)を示した。
青年期の課題:「同一性(アイデンティティ)」対「同一性の混乱(拡散)」

◇過去問分析

(1)(2)「発達障害」★★★★★
→2003年(自閉症児)、2005年(アスペルガー)、2008年(ADHD)、2013年(発達障害)、2016年(自閉症スペクトラム)と、2004年(学習障害)についてが、過去に出題されています。
(3)「エリクソン」★★☆☆☆
→関連人物「ピアジェ」が翌年度に出題されています。

◇参考資料

(3)①社会福祉士養成講座「心理学と心理的支援」、中央法規、2022年、p.104 ②「保育士合格テキスト&問題集 下巻」、ナツメ社、pp.43-44


番号6 ケースワーク

相談援助の技術について、次の問( 1 )~( 3 )に答えよ。
(1 )ジェノグラムとエコマップについて、それぞれ説明せよ。
(2 )パールマンが当初に提唱した 4 つのPを挙げよ。
(3 )ソーシャルワークにおけるアドボカシーについて説明せよ。

◇解答例

(1)
ジェノグラム:ジェノグラムは、アセスメントツールの1つで、家系図のことである。基本的に3世代までさかのぼり、クライエントの家族関係を図式化していく。
エコマップ:エコマップとは、アセスメントツールの1つで、利用者本人を取り巻く家族や関係者、社会資源等の環境との結びつきを明らかにするものである。
(2)人・問題・場所・過程
(3)
アドボカシーとは、代弁や権利擁護とも呼ばれ、認知症患者や知的障害者、精神障害者などの自分自身の意志を表明することが困難な人々の意思や意見を代弁し伝え、本人の生活や権利を擁護することをいう。アドボカシーは、クライエント個人に対する「ケースアドボカシー」と、同じような状況下の人々に対する「コーズ(クラス)アドボカシー」に大別できる。

◇過去問分析

(1)ジェノグラムやエコマップの関連用語である「アセスメント」については、2013年に出題されています。
(2)パールマンの「4つのP」:2006年に出題あり。また東京都採用試験福祉Aでも,、2018年に出題されました。
(3)「アドボカシー」は、2015年にも出題されています。また、関連用語の「成年後見制度」が1年前の2019年と2010年に出題されています。

◇参考資料

(1)「~とにかく書こう!ジェノグラムとエコマップ~」今治市・地域包括支援センター主任ケアマネ部会、2020年、(2022年8月16日 最終閲覧)https://www.city.imabari.ehime.jp/kaigo/center/yosiki/assessment_siryo02.pdf



今回は以上です。
お疲れさまでした(^^)/

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