美しいものは美しく枯れてゆく。
むしろ、枯れてゆく時、美しいものの美しさは初めて露わになる。
生命力の彩りがこぼれ落ちてゆく時、美しく燃える心臓は初めて透けて見えるのだ。
美しく老いた目はそのまなざしで見て来た美を宿している。
美しく老いた口元は100の言葉よりも深長な微笑みを湛える。
人はあまりに大きなものを前にすると、言葉を失う。
海の美しさをただ「美しい」としか言い表せないように、
美しく枯れゆくものの美はあまりに大きく、私たちから言葉を奪う。
美しいものは美しく枯れてゆく。
蓄積された美が蒸発するように、静かに顕れる。
高山康平 もくじ>>