両親の「夫婦の空気感」が、この上もなく好きな話。

自分の家庭環境を、良いものだったと言えることが幸せな時代に生きている。息子3人が巣立った後の実家には、50代前半の父と母が2人で生活を営んでいる。

休暇をとって実家へ戻ってきた。相変わらず、母は思いついたことをひたすら父に言い続けている。父はイヤホンをしてタブレットで動画を見ているのだが、お構いなしに母は話し続ける。独り言なのか誰かに話しているのか全くわからないのだが、父もたまに応じている。別に空気が悪いとか話を聞いていないわけではなく、自然な距離感が保たれている。

また新しい、夫婦のエピソード(というかネタ)を聞いた。

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このご時世で、マスクや消毒用品がドラッグストアから姿を消しているのは実家のある街もそうなのだが、ようやくこれが手に入ったらしい。

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赤ちゃん用のお尻拭きなのだが、とにかく衛生用品が手に入った母は、とても嬉しかったらしい。

夜になり、父が仕事から帰ってくる。父はこの騒ぎで会社の大幅な売上減や部下の健康管理などストレスフルな日々を過ごし、疲れ切っていたらしい。そんな疲れ切った父に、母はこの「アヒル」を持って、

「ねえねえ!今日やっとこれが手に入ったんだよ!ちょっと口のところ(黄色い部分を押すと口が開き、お尻拭きが取れるようになる仕組み)押してみてよ!」

父が疲れ切った顔で、黄色い部分を押すと、仕組み通り口が開く。と同時に母は「グワァッ」とアヒルの鳴き声を出す。母は蓋を閉めると「もう一回押してみてよ!」「グワァッ」と全く同じことをした。

これには疲れ切った父も笑うしかなかったようで、結婚して良かったなと思ったらしい。確かに家に帰ってきてまで「どうしよう、また感染者増えたよ!どこにもマスクが売ってないしどうしたら云々」という妻だったら、父は家庭でも疲れることになっていただろう。

凄く良いバランスが取れている夫婦だなと思う。母の名誉のために言うと、家事を全て完璧にこなしながら、パートで塾の採点補助をしていて、金銭管理も一手に担うよく出来た母である。

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もうこのエピソードを聞いてから、ずっと一人でゲラゲラ笑っている。一番下の弟が巣立って、熟年夫婦上手くいってるかなと心配していたが、どうやら杞憂のようである。子どもからは見えない大変なこともあるとは思うけれど、これからもこういう絶妙な空気感で仲良くやっていってほしいと思う。

ぼくの幸せ観って、こういう感じで醸成されてきたんだろうな。日常が幸せや楽しさに満ち溢れていた。大人になってから、自分の部屋持ったことないとか、お小遣いもらったことないとか、別の家庭との違いを知ったけれど、それで不幸だなんて思ったことなかった。本当に良い家庭に生まれ育ったな!と心から思う。

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これから、両親を大事にしたいなと思うし、もっと実家に帰ってきたいと思うし、いつまでも元気にいてほしいと思う。

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