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好きと苦手

毎年五月に能登の山々に咲き誇る「野田藤」。
名付け親は土佐が生んだ植物学者、牧野富太郎。
彼の最終学歴は小学校二年生中退。
小学校へ向かう山道で大好きな植物採集に没頭していたら、いつの間にか日が暮れていたそうな。
学校には辿り着けないまま、日本植物学の父と呼ばれるようになった人。
94歳で亡くなる直前まで全国をまわって植物標本を作り続けた人。
「好きなことと仕事は分けて考えるべきだよ」と、僕に助言をくれた大人がこれまでに何人かいる。
残念ながらやっぱりまだ一度も納得できたことはない。
僕はきっとそういう生き方が苦手だ。
就職活動のために買ったスーツは一度着ただけで、虫に喰われた。
もったいないから誰かもらってほしい。穴、空いたままやけど。
「好きなこと」と「苦手なこと」は、人に流されずにはっきりさせていた方が、楽に生きられる気がする。
たまに迷ったとき、僕は心の中にいる富太郎くんに話しかける。
「このまま、行ってもいいよね?」と。

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