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年の差。その2

前回の投稿に続いて「年の差。」の話。
西東京に住む友人宅での東京滞在のことを。

昨年まで雑誌の編集者として働き、現在はフリーランスのライター・編集者として働いている友人(女性)。父は映像制作、母は文筆家で、皆が個人事業主という、あまり僕の周りにもいない家系だ。
その友人の住む平屋は、彼女の実家から自転車で30分程で、毎日出勤するように実家と平屋を往復をしているらしい。今回の滞在では、僕も実家にお邪魔して仕事をさせてもらっていた。

友人とその母親が隣同士のデスクで、それぞれモニターに向かって作業をし、その向かいのダイニングテーブルに僕はノートPCを広げて作業をするという、今まで経験したことのない環境だった。彼女の母親とは、以前一緒に仕事をさせてもったこともあり顔見知りではあった。毎日、娘と一緒に実家に上がり込む僕に嫌な顔一つせず、よく来たねと言わんばかりの笑顔で迎えてくれたのが思い起こされる。

時に、二人が各々の仕事に対して意見を言い合ったり、アドバイスをし合ったり(僕にくれることもあった)、一緒にお昼ご飯を食べたり、彼女抜きで父母妹と夜ご飯を食べたり、録画した男はつらいよを見ながら話をしたり。
本当になんてことのないことを、恋人で家族ぐるみの付き合いがあるならまだしも、一友人の家族とするなんてこれまであっただろうか。

そんな風に数日を過ごしたある日、僕は体調を崩した。
しかも友人は打ち合わせ等で外出していて、夜は直接平屋に帰るという。「そのまま泊まって行けばいい」という言葉に僕は甘えてしまい、しかも晩ご飯まで頂き暖かい布団で眠ってしまった。
翌朝には体調も大分よくなった。が、ここで問題が起こった。彼女の母親の体調が芳しくないというメッセージが、友人から届いたのだ。このとき「あぁ、やってしまったな。ついつい甘えすぎてしまった。」と、気が付いた。

僕も気を使っているつもりだったが、それ以上に友人の母親は僕に気を使ってくれていたのだ。「自分の親ではない」ということは、最初から分かっていたことなのに。友人の母親であり他人なのだ。しかも親と子ほどの年齢差のある。

こうやって書くと、すごく突き放した言い方のように聞こえるもしれないが、そこは変わらない事実なのだ。僕が、ずかずかと土足で彼女の家のプライバシーに踏み入れてしまったのだ。
僕自身が、周りの人に対して節度を持って、ある程度一定の距離を保ちながら、時間をかけて人間関係を構築していくことに、今まで一番に気を使ってきたつもりだったのにも関わらず。

今回は、相手の好意に甘えてしまい、時間や色々なものを飛び越えてしまったのが原因だろう。きちんと時間をかけて関係を構築していれば、これは避けられたかもしれない。互いに言いたいことを言えて、気を張らずに接することができる仲になっていれば。

「今日も泊まっていけばいいのに」と僕の体調を案じて言う友人の母に対し、ありもしない予定を話して彼女の実家を出たのは言うまでもない。

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