くも膜下出血の血管攣縮にステロイドを使う、に思うこと


ステロイド治療の立ち位置は?

ガイドライン2021改訂版では血管攣縮に対する治療はこのように記載

ガイドライン2021改訂版

一番目立つところには記載はない・・・目をしょぼしょぼさせながら読む細かい字の羅列の中に3行の記載を発見!

ガイドライン2021改訂版

唯一の引用文献を探してみると・・・

Randomized, double-blind, placebo-controlled, pilot trial of high-dose methylprednisolone in aneurysmal subarachnoid hemorrhage

JNSの2010に収載された論文だ
全文は読んでいないが、結論としてはこう

  • 症候性の血管攣縮はプラセボ26%に対して使用例26.5%

  • 1年後のpoor outcomeはプラセボ34%に対して使用例15%

その他の論文は

Preliminary Report: Effects of High Dose Methylprednisolone on Delayed Cerebral Ischemia in Patients at High Risk for Vasospasm after Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage

こちらも全文は読んでいないが、血管攣縮の程度・頻度とも使用群で低下がみられたそう。合併症増加なし。

Effect of High-dose Methylprednisolone on Vasospasm After Subarachnoid Hemorrhage

これは1990年投稿の犬を用いた実験の論文
ステロイドに期待する効果としては下記のようなものが挙げられていた

  • 血管径そのものの維持力

  • 血小板凝集の抑制

  • 抗炎症作用による血管壁の保護

  • CBFのauto regulationへの効果

結果的に脳底動脈の計測、血管壁の組織学的評価でspasmの効果や壁保護効果はあるとされた。血小板凝集やCBFへの影響は確認できず。
ちなみにhigh doseなステロイドとは明確な決まりはなく、10mg/kg以上のことを指すことが多いようだ。

近所で使う人の意見としては

・day5とかday7とかでルーティンに使用する
・症候性のspasmで他にできることがなければ使用する
・使用してみると元気にはなる ご飯食べられるようになる
・アルブミンが下がる

といった意見があったように思う。
つまり今のところエビデンスが強い治療というよりはexperience basedな治療だと言わざるを得ない。

自分の使用感としては

施設によってはルーティン使用したことも、必要に迫られて?使用したこともあるが、確かに「元気になるひとが多い」のだ。例えば頭痛が強くなってぐったりしていた人が良くなったとか、経口摂取量が減った患者が食べられるようになった、とかそういった変化は経験がある。ただ確かに、定量的な臨床的尺度で効果を実証できていないのがこの治療の問題点だ。

ステロイドを血管攣縮治療に使う、について

まず動物実験の結果的に血管径はプラセボより太く維持されており、何らかの攣縮予防?効果が存在する可能性はある(予防効果なのか、改善なのか)。
ただ日常臨床で得られる効果が全身状態に関与する漠然とした変化なので、攣縮に効果が出ているのかはわからない。個人的には相対的な副腎不全であった患者に副腎ホルモンを投与して改善しているのでは、と感じる。しかしながら、副腎不全なら投与効果は長く続かないし、ネガティブフィードバックでしばらくリバウンドが来そうなものだ。
どうしてもの時には頼ることがあると思うが、やはり定量的評価が必要。

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