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週刊牛乳屋新聞#11(中国を観察する時に気を付けていること)

こんにちは!今週は、中国関係でいろんなニュースがありました。様々な意味においてこの一週間は歴史的な転換点であったと同時に、中国ってどういう国なのか?を再び考えるようになりました。中国ネタは感情移入しやすいので、今回は自分なり中国を見る上で気を付けるべき点をまとめてみました。

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昨晩、竹内亮さんの『好久不见,武汉(邦題: お久しぶりです、武漢――日本人監督が見た武漢)』を見ました。このドキュメンタリー映画では、都市封鎖解除後の武漢を訪れて新型コロナウイルスが人々の生活にどのような影響をもたらしたかをインタビューしています。

竹内さんは千葉県出身で、中国江蘇省南京市在住のドキュメンタリー監督です。他にも代表作として中国で生活する日本人を主人公としたドキュメンタリー紀行番組の『我住在这里的理由(邦題:私がここに住む理由)』が挙げられます。この時期に中国へ留学していた方や駐在していた方は耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。

この作品後半部の李杰さんのくだりが非常に印象に残りました。李さんは武漢市近くの大李村出身で、10日間で建設された雷神山医院の建設作業員でした。村出身の建設現場作業員である李さんが食つなぐために必死な話を竹内監督が伺っている様子を見て、李さんみたいな方が中国人の多数派を占めていると改めて感じましたし、李さんみたいな人を抜きにして中国の実情は語れないと思いました。今回は統計を基に、李さんみたいな人がどのような位置づけなのかを見てみたいと思います。

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人々はどこで生活しているか

2020年1月19日の人力資源和社会保障部(日本の厚生労働省に相当)が発表した『2019 年度人力资源和社会保障 事业发展统计公报』によると、2019年時点の就業人口は7億7,471万人いると発表されております。その中の約57.1%の4億4,247万人が都市部(城镇)で就労しております。また、国家統計局が2月28日に発表した『中华人民共和国2019年国民经济和社会发展统计公报』によると、全人口の60.6%は都市部に居住するとされています。

ただ、都市部とはどこを指すのでしょうか?我々がイメージする中国の都市部と言えば、こんなところではないでしょうか?

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中華人民共和国都市計画法(城市规划法)第三条によると、「この法律で使用される『都市』という用語は、行政制度に従って政府が設置した直轄市、市、鎮を指す」と記載されております。都市の定義が曖昧で、よく分かりません(笑)

ここで、2019年末の中国の超巨大都市(一線都市)における定住者人口(中国語:常住人口)を見てみましょう。北京市の総人口は約2,153万人上海市は約2,428万人広州市は約1,530万人深圳市は約1,344万人で、合計しても約7,455万人です。これを2019年年末時点の中国の総人口(14億5万人)で割ると、約5.32%です。湖南省長沙市と貴州省貴陽市の間に位置する湖南省懐化市(以下画像、市内全景)でも常住人口が約498.33万人とされているので、都市は広範囲に渡っておりますし、更なる定義付けが必要に感じます。

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ちなみに、日本の場合、「総務省の住民台帳による調査(平成31年1月1日時点)」によると、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、関西圏)の人口割合は51.71%です。こうやって見ると、中国は超巨大都市に人口が過度に集中していないことが分かります。

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人々はどんな仕事をしているのか

ちょっと前に巷を賑わせた記事で僕が大好き(?)な一節があります。

負けたのだ、日本が。少なくとも経済的には

先進国を定義するための指標はたくさんありますが、ここではペティ=クラークの法則を見ていきたいと思います。簡単に言うと、経済・産業の発展につれて、第一次産業から第二次産業、第二次から第三次産業へと就業人口の比率および国民所得に占める比率の重点がシフトしていくという法則です。

総務省の「労働力調査」によると、2019年における日本の第一産業(農業・漁業)従事者は約222万人で3.3%、第二次産業(製造業・工業)従事者は約1,564万人で23.3%、第三次産業(サービス業)は約4,938万人は73.4%です。第三次産業従事者が多数を占める社会に変化を遂げたため、この法則に従って日本は先進国と言えるでしょう。

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一方、中国はどうでしょうか。『2019 年度人力资源和社会保障 事业发展统计公报』によると、2019年において中国の第一産業従事者は25.1%、第二次産業従事者は27.5%、第三次産業従事者は47.4%です。日本の1960年代前半と似た労働構造と言えます。

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ニッセイ基礎研究所がまとめた資料によると、2012年頃までは第一次産業従事者が労働者人口の最大を占めていました。ブルーカラー労働者(第一次・第二次産業者の総称)だけで三分の二を占めるので、サービス業が多数派ではないことを物語っております。GDPの規模が日本を越えたとは言えども、国民の就労状況を俯瞰すると先進国とは言い切れない構造になっています。

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最新トレンドよりも大切なこと

超巨大都市に人口が集中しているわけではないこと、今なおブルーカラー労働者が労働人口の約半分を占めていることが分かりました。

メディアやSNSでは、都市部を中心に盛り上がる「中国最新トレンド」の方が目立ちます。知人と話していても農民工(出稼ぎ労働者)や長距離列車の二等席でのハプニングの話よりも、IoT、AI、ブロックチェーン技術、オンライン教育の話のほうがウケが良いです。これはある意味、仕方ないかもしれません。

ただ、30年しかない中国ITの歴史から、トレンドを語るには物足りません。それよりも、貧困と向き合ってきた歴史や中央集権的な統治手法の歴史の方が長く、最新トレンドは、中国の歴史から説明できることがほとんどではないのでしょうか。実際、上述したブルーカラーの存在は中国の貧困問題と密接に関連しており、中国を観察する上で避けて通れない大きな存在です。ECプラットフォームやショートムービー(TikTokや快手)が盛り上がったのはブルーカラー労働者の存在とは無縁ではないはずです。

人の往来が制限された今、日本で生活する私が中国の空気感に触れるのは不可能です。ただ、物理的に離れているからこそ、一歩引いた目線で中国を観察できると思うようになりました。

色々書いて疲れたので、参考図書を添付し、最後に #中国川柳 で締めます

渡航できん! 油まみれの 麺食べてーーー!

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