その服にあうね
「文法は暗記だ」という先生はたくさんいらっしゃいます。
実際、文法は覚えるべき項目が多く、
演習を重ねて初めて自分のものになる、
と私も思います。
だからと言って、
「ワークやっとけ」でいいのでしょうか?
「文法は暗記だ」と言うならばなおのこと、
暗記しやすく授業する必要があるし、
授業時点の知識でもわかるように教え、
その知識の位置付け、見通しを持たせることも大切になります。
そもそも、英文法に比べて、
国文法を学ぶモチベーションは低いです。
理由は、
「知らんかっても喋れるし」
です。
その低いモチベーションを上げなければ、
ちまちました解説をすすんで読めないし、
パターンを覚えるまで問題に取り組めません。
文法学習へのモチベーションをどう上げるか、
今回は、それについて書きたいと思います。
多くの生徒にとって英語は
「文法をつかんで、喋れるようになろう」
というモチベーションが通用します。
一方、試験に出るから、受験で要るから、
というのも一定のモチベーションになりますが、
それだけではやりきれないくらい、
国文法で問われるものは、
中学生にとって膨大で複雑です。
だから、
おもしろいというモチベーション
が必要なのです。
例えば、
「その服にあうね」という例文。
ワークに掲載されているものですが、
生徒が楽しめる状況を与えます。
Instagramに自分のお気に入りのコーディネートの写真を載せた。
コメントに「その服にあうね。」と書いてあった。
「どっちやねん!?」
ともすると、
読まずに飛ばして、見向きもされない例文を、
状況を与えられただけで生徒は自発的に考えます。
この場合、
「その服似合うね。」なら、
自分自身を褒められていることに、
「その服に合うね。」なら、
服とパンツの合わせを褒められていることになるので、
リプライも変わってくる。
というところを入り口に、
文節、単語、を復習し、
自立語、付属語へと導入していきます。
自立語、付属語の定義を説明した上で、
先程の例文を見ると、
自立語の特徴である、
文節の頭にひとつだけあるというものに気付きます。
これが、
文節に区切る問題の確かめに使えるという、
知識の位置付けをすることで、
役に立つという動機付けができます。
そうすると、
子どもたちは自立語の有用性を認めますが、
付属語を不要に思います。
そこでまた状況を与えます。
交換留学生のボブがうちのクラスに来てもうすぐ1ヵ月。
初めは文化の違いや、すれ違いでケンカもしたけど、
あと少しでお別れ。
なんだかここのところボブの元気がない。
夕暮れの河川敷に座り込むボブの隣に座って、
「どうしたんやボブ。この親友に話してみ?」
するとボブがぽつりとつぶやいた。
「…僕…彼女…好き…」
っちょっと待てよボブ!?
落ち着け俺!!
ボブそれ、
「どっちやねん!?」
これでもう、子どもたちは、
隣の生徒に状況を説明したくなります。
つまり、
「僕が彼女を好きだ」なのか、
「僕を彼女が好きらしい」のか。
アドバイスが変わってくる。
このように付属語には、
関係を示したり、意味をそえたりするものがある、
ということを例示すると、
付属語の必要性も理解できます。
さらに、
自立語はそれだけで意味がわかる語、
付属語はそれだけでは意味がわからない語、
という区別の境界線がはっきりしてきます。
そして、
全ての単語は自立語か付属語に分類できる、
ということが、中学3年生の文法、
受験でも大切になってくる、
という知識の位置付けでモチベーションし、
問題演習に取り組ませます。
「ワークやっとけ」では、
やる気もわかず、
意味もわからず、
宿題も答えを写してきてしまう生徒も、
問題に取り組むようになります。
文法の学習では
A:試験に出るというモチベーションを上げる
B:知識の位置付けを示すことでモチベーションを上げる
に加えて
C:生徒が楽しめる状況を与えることでモチベーションを上げる
ということをオススメします。
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