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米インテルの共同創業者、ゴードン・ムーア氏が死去

3/24 米インテルの共同創業者で「ムーアの法則」の提唱者として知られるゴードン・ムーア氏が自宅で死去された。

ゴードン・ムーア氏

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN250OA0V20C23A3000000/

 ムーア氏は「ムーアの法則」で有名で半導体業界で知らない人はいないでしょう。半導体業界の物差しのような存在で、今も使われています。特定の産業で、これだけ定着している法則は珍しいです。

 「ムーアの法則」に従ってLSIの集積度が上がり続けたこの50年は、計算機の歴史であり間違いなく何度目かの「産業革命」の時代になるでしょう。集積度が上がる(=部品が小さくなる)ことで、消費電力が下がると共に計算速度が速くなります。最初のIntel CPUの4004と今のIntelのCORE i9 を単純に1bitの計算速度(bit数、クロック、コア数の掛算)で比較すると、100万倍以上の速度になっています。並行して、通信速度も記憶能力も同じように飛躍的に伸びています。つまり、計算速度も記憶機能も通信機能もタダになったみたいなものになっていて、これを元にインターネットの世界が広がっています。

 フェアチャイルドセミコンダクタを設立し、トランジスタから集積回路へと発展させました。ムーアの法則を提案した当時はまだ、アナログICがほとんどでしたが、デジタル化を予見していたようです。集積度向上に適したデジタルICは、MOSトランジスタの実用化によって進化。フェアチャイルドを退社してロバート・ノイス氏と共にインテル社を創設してからは、1968年にインテルを設立。電子機器の「頭脳」にあたるマイクロプロセッサーを開発し、世界的な半導体メーカーに飛躍する礎を築いた。1979〜1987年まで会長兼最高経営責任者(CEO)を務め、その後も1997年まで会長、2006年まで名誉会長として、インテルの最盛期を支えた。その後は、慈善活動の財団を奥様と共に設立、環境保護やチャリティ、患者のケアなどに51億ドルを寄付しました。

 インテルについては、日本ではあまり知られていない極めて重要な経営判断があります。まだインテルが小規模だったころ、日本の半導体大手企業がシステムLSIをインテルに外注しました。インテルは、仕様通りに作るには特注の半導体の開発に無理があると判断しました。それで半導体を汎用の安価なものとして、代わりにソフトウエアを精緻にする構造にしました。こうして完成したシステムLSIを納入したとき、インテルは代金はいらないので特許を欲しいと申し出ました。そして、特許を得たことがソフトウェアの革新とインテルの快進撃に繋がっていったのです。当然ムーアはこのディールを主導したことでしょう。

 米国半導体工業会(SIA)は、「彼の死は一つの時代の終わりを意味するが遺産は永遠に生き続ける」。この言葉の通りで、人類の文明が継続する限り永遠にその名が語り継がれている巨星。ご冥福をお祈り致します。

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