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活躍する現役ライターに聞く!案件を獲得するコツや愛用する仕事道具は?~法人成りライター 夏野かおるさん編~


2021年に法人成りをされた、『ICT教育ライター回覧板』の発起人である夏野かおるさん。
編集・ディレクションも務める夏野さんは、「研究が本業!」と語るとおり、仕事と研究を両立されています。

仕事の速さ、ライターとの丁寧なコミュニケーション、有識者様への取材記事。
さまざまな場面でフリーランス・ライターとしてのスキルに驚き、尊敬の眼差しを向けずにはいられません。

今回は、夏野さんに研究に奔走していた学生時代の話や法人成りされてから変化があったことなどを伺いました!


塾講師を通して教育の楽しさ・面白さに触れた大学時代

飲み物〇

ーー夏野さんは国語の先生の資格も保有されているとのことですが、いつ頃から教育に関心があったのでしょうか?

私は貧乏だったバックグラウンドがあるので、「安定する公務員になりたいな」と思っていました。大学では文学部に所属していて、必要な単位を取れば教員免許が取れる学部だったんです。同じ学費で免許を取得せずに卒業するか、免許を取得して卒業するかなら、「絶対に後者の方がお得だ」と思い、教員免許を取得する道を選びました。

また、その頃に、効率良く稼げるバイトとして、週6日くらい塾の先生をしていたんです。その当時の関西圏の最低賃金はまだ700円台でしたが、塾講師の時給は1時間あたり1,500円以上もらえたので有難かったです。その塾では、中学受験するようなレベルの高い小学生を教えていました。

ーー塾講師をされていた頃の思い出深いエピソードなどはありましたか?

数学が苦手な生徒がいたんですが、徐々に仲良くなりながら、少しでも出来たらすぐさま「できるやん!」って、めちゃくちゃ褒めたんです。そうすると、その子もとても嬉しかったようで、宿題や授業をしっかりとやるようになり、数学の点数が50点くらい上がったんですよ。

それまで32点だったのが、80点代を取れたときの笑顔を見たら、私もすごく嬉しくて。中学受験に挑む子ども達のなかには、日々の勉強に疲れている子もいましたが、「せめて、私の授業では元気を出してほしい!」という気持ちで臨んでいました。そうしたら、いつの間にか私が教育という仕事を好きになっていました。

ーー生徒さんとそういったやり取りがあると、本当にやりがいに感じそうです。研究と教員、どちらの道を選ぶか迷ったこともあったのでしょうか?

私が教育ではなく研究の道へ進んだのは、先生からの言葉がきっかけになりました。とあるレポートを大学で出したときに、中国から来た先生に廊下に呼び出されて「君は、将来、何になりたいのか?」と聞かれたんです。「今考えているのは、学校の先生ですかね」と伝えると、「もったいない!こんなレポートを書ける人間は、研究の道に行くべきです!」と、すごい圧で言われました(笑)。

それで、「そうか。そんなに褒めてもらえるなら、研究の道へ進んでみようか」と考えるようになったんです。それに、研究の道と教育の道、どちらを選択するとしても大学院に行くメリットはありました。というのも、教員免許は、大学院に進むと専修免許状(教頭や校長のような管理職に就任する資格がある)が取得できるんです。

このような背景から、地方の公立大学を卒業後は大学院に進みました。院試を受けたら京都大学と大阪大学に両方合格できたので、京都大学に進みました。


ライターデビューしたきっかけは、塾講師時代に本を執筆したこと

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ーー研究の道へと進んだ大学院生活は多忙を極めたかと思いますが、夏野さんがライターの道へと足を踏み入れたきっかけは何だったのでしょうか?

ライターを始めたのは、塾講師をしていた頃に本を執筆したことがきっかけになりました。バイトをしていた学習塾のアドバイザーとして、とあるタレントさんが就任されたんです。その当時に、「あなた、文章を書くのが得意なら、タレントさんの発言をコラムにしてよ」と声を掛けていただきました。

もちろん、その仕事は単発で終わったんですが、そのタレントさん経由で、とある出版社の担当さんから「今度タレントさんが本を出すから、夏野さん、書いてくれない?」とご依頼をいただきました。その本を書くまでにも、知人から"2,000円で1本書く”といった案件は請け負っていましたが、ライターと名乗るようになったのはその頃だと思います。

ーーブックライティングがきっかけになったのですね!その後は、研究者への道を順調に歩まれたのでしょうか?

それが、順風満帆とはいかない大学院生活を送っていました。京都大学は時空が歪んでいるので、気がついたら留年したり、休学したりする人が多いんですよ(笑)。私もご多分に漏れず、修士2年間のなかでうつ病を患い、留年・休学しました。

なんでそうなったかというと、京都大学にいる学生は天才ばかりで、凡人が努力しても到達できるものではないな、と感じてしまったから。30カ国語喋れる人がいたり、全く知らない言語の音を、1週間後でも完全に再現してしまう人がいたり……。そこまで特別でなくとも、異様な努力で天才に近づく人もいます。でも、私は本当に根性無しで凡人だし、「到底、そのレベルには到達できない」と痛感しました。

今なら図太くなったので、「私には、私の特技があるさ!」という捉え方ができます。でも、当時は20代前半だったので、「研究室の名前を汚している」「先生に手間をかけさせてしまって申し訳ないな」とか、色んなことを気にしてしまっていました。

京都大学って罪深くて、これまで「勉強ができるね」といわれて、地元では負け知らずだった人が、大学に入ると「お前は凡人!」とガツンとやられるんです。そのためか、生え抜きの学部生でも心を病んでしまう人は一定数いましたね。

大学卒業

ーーそんなに厳しい世界なんですね。私は大学へ進学しなかったので、想像もつかない世界です。

それに、博士課程に進むと20代後半になるので、皆悩み始める時期なんです。一般の方では、キャリアも3年目で、子どもが出来た人や家を買う人も出始めます。それに対して、自分は定職に就かず、学費を払って大学院に行っている立場でしたから。

私の場合は奨学金を借りていましたし、飲み会に行くときにも、4,000~5,000円くらいの飲み代もとても高く感じていました。そんな状況がたまらなくなって、ある日、指導教官に何も言わず、勝手に東京に引っ越したんです。

ーー東京へ引っ越しをされたのは、気分転換でしょうか?

いえ、研究者の道を諦めようと思って失踪したんです。1年かけて心の整理をして、新幹線に乗って先生のところへ行きました。先生は優しい方なんですけど、良い厳しさも持っている方です。「みんなみたいに能力がないから、やめます」と言った私に、「そうやって周りの人のせいにしているのは研究にも失礼だし、今後のためにならないよ。研究者はこつこつやるのが大切なのだから、資質のせいにしてはいけない」と言われました。

それで、「私、甘かったな。もっと頑張ろう」と思えて、また新幹線に乗って東京に帰り、復学して研究を続けました。今年の4月にようやく卒業して、最近はようやく心が穏やかになったところです。


法人成りに踏み切った2021年は、研究と仕事のバランスをとる日々

法人はんこ

ーー卒業後、間もなくの法人成りだと思いますが、決意されたのはどのような心境だったのでしょうか?

「心が強くなった」ことの表れでしょうね。以前の私なら、「研究をせずに週7日で仕事をしているなんて、邪道だ」「こんな甘い人間が業界にいても良いのか」と気にしていたと思いますが、30歳になって図太くなりました。「研究はライフワークだから、私なりのペースでやれば良い」と折り合いが付いたから、仕事も純粋に頑張っています。

ーー「30歳という節目を超えると強くなれる」こと、とても共感します。それでは、現在の夏野さんのお仕事について伺えますか?

現在は、専業で法人を経営しながら、ライティングや編集を中心に行っています。しかし、あくまで本業は研究活動。博士号を取るために、研究を行っています。ですから、意識的には、副業という形で仕事をしていますね。

スケジュールは、理想を言えば週3日は研究・週2日は仕事、のようなスタイル。でも、実際にはそうはいかない部分もあります。有難いことに仕事をたくさん頂けているので、正直なところ、研究の時間がとりづらいんです。学会に採択していただけたときには、「3日間だけ音信不通になります」という状況にして研究を進めています。

ただ、アカデミックなキャリアを真っすぐに進む人でも、それだけの時間を研究に割ける人は多くないそうです。なぜかというと、駆け出しの人はさまざまな大学で非常勤講師をすることで生計を立てる人が多いんです。そのような人は授業の準備で本当に忙しく、研究は週に1日とれていたら良い方だと聞きます。

ーー研究と仕事のバランスを上手にとられているんですね。現在は、どのようなクライアント様のお仕事を請け負っているのでしょうか?

定期的にお仕事をいただいている媒体は、朝日新聞EduA、コエテコbyGMO、Workship MAGAZINEの3つです。その他にも「webサイトを作るから1本だけ書いてほしい」とか「本を出すから4ページだけ書いてほしい」といった仕事を3カ月に1回くらい頂けることもあります。総数でいうと、クライアント様は10社くらいです。

ーーSNS経由でお仕事が依頼されることもあるのでしょうか?

いえ、確かにTwitterでご連絡をいただくことはありますが、クライアント様ではなく、駆け出しのライターさんからいろんな質問をいただくことが多い印象です。

ちなみに、SNSに関して話すと、クライアント様は私のTwitterやnoteを結構見てくださっているようです。教育というジャンルで執筆しているので、Twitterで過激なことを言う人や反社会的な人格の方は採用が難しい部分もあるのかもしれません。

ーーディレクション・編集・ライターもされているなかで、月に書く本数は何本くらいでしょうか?

一番忙しかった時期では、月に10~15本くらいインタビューの原稿を書いていました。逆に言えば、どれだけ必死に書いても15本。これでは媒体様が成長するスピードが鈍ってしまうので、最近は私がディレクションをして他のライターさんに仕事を割り振る方に力を注いでいます。

それでも、ライターは辞めたわけではなく、他のライターさんに割り振るのが難しい案件は、私自身が担当することもあります。現在は、月に書く本数は、平均すると8本くらいでしょうか。

ーー夏野さんは教育系の記事を中心に書かれているかと思いますが、noteに掲載されていた北海道旅行の記事は、とても素敵で読み応えがありました。旅行系の記事も仕事で書かれているのでしょうか?

それは書いていないですね。旅行関係は自分用には書きますが、媒体様にご提供することはないです。「好きだからこそ、商業化したくない」という思いがありまして。私は仕事人間だから、媒体様に記事を載せていただくとなると、表現を調整したり、媒体様にマッチした観光ルートを選んだりしてしまうと思うんです。「せっかくの旅なのに、仕事にするのはもったいない」と思ってしまうので、今後も旅行ジャンルでは書かないんじゃないかな。分かりませんが。


法人成りをしてから、少しずつ確立されるワークスタイル

法人用

ーー法人成りされてからは、従業員も雇っているのでしょうか?

現在、正社員は採用していませんが、業務委託でお仕事をご依頼しているアシスタントが2名います。お1人が事務作業や細々とした業務をお願いする方で、もう1名が編集者です。業務委託なので稼働時間帯は定めず、基本的な時間給を決めて、「働いたら働いた分だけお支払いします」という形にしています。仕事が入ってきたら、Slackの専用チャンネルに「こういう仕事をお願いしたいです」と書き込んで、アシスタントの方が承諾して下さったら、「何時間働きました」と時間をつけていただくスタイルにしています。

ーー夏野さんが「法人化して良かったな」と感じていることはありますか?

法人化して、めちゃくちゃ仕事が増えました。というのも、大きな企業の場合は、個人への発注金額が大きくなると、「賄賂が発生しているのでは?」と問題視されることもあるんです。もちろん、多くの場合は見破られますが、うまくやれば、仕事を依頼した体にしてお金を流すこともできます。日大みたいにね……。

そのような事情もあり、「大きな仕事を頼みたくても、個人では頼めない」と前々から言われていました。法人化したことで信用力が上がって、そういった部分をクリアできたのが主なメリットですね。

ーー本当にお忙しく働かれている日々かと思いますが、週何日ほどお休みはとっているのでしょうか?

週7日間のなかで、1日休めれば良い方です。家族でのんびりする時間もないくらいに、今は働いています。相手も仕事人間だから許されてるやつです(笑)。でも、しんどくはないですね。むしろ充実しています。ちなみに、教授クラスの大学の先生でも、ゴールデンウィークのような長期休みでなければ、まとまった研究の時間が取れないという方も多いようです。


多忙な業務のなかで身に付いた上手な時間の使い方とは?

ご飯

ーー仕事や研究活動もされていて、夏野さんはどのような時間の使い方をされているんだろう?と、とても気になっていました。

時間の使い方といえば、面白い話があるんです。とある文学の先生がいらっしゃるんですが、先生は2人のお子さんを育てておられる方で、短期間、助手のアルバイトとして雇ってもらえたんです。女性同士でざっくばらんに話せるところもあって、「正直、お子さんが生まれたら研究活動って停滞しちゃうんじゃないですか?」と伺ったときに「いや、私、今の方が全然活躍できていますよ」っておっしゃるんです。

「時間の使い方の質が全然変わった。子どもはいる。仕事はある。じゃあ、残りの時間をどう過ごすか?がとても上手くなったんですよね」と仰っていて。私はといえば、学生時代は時間が自由に使えるので、1本の論文を読むのにも「あー、めんどくさい」と思いながら、本来1時間で読めるものを4時間もかけて読んでいたこともありました。

でも、今は週7日働いていて、いっぱい前倒しで仕事をして、なんとか週2日だけ時間を作れるような状態。だとすると、集中的に論文を読んで、書かなければいけないんです。だから、「気分が乗らないな」ということもなくなりました。ライターさんの原稿を読むときにも、「2.5倍速くらいで働くスキル」が身に付いたと思っています。

ーー限られた時間のなかで、集中力を最大限に発揮されているんですね。多くの仕事や研究などタスクが平行することもあるかと思いますが、優先順位の付け方はありますか?

メインの取引先様が3社あるなかで、公開までのスケジュールをコントロールできるのは1社のみなんです。他2社は、原稿を送った後は何もできません。だから、土曜や日曜に1日だけ時間を作って、3本くらい一気に原稿を書くんです。原稿を書いて送れば、後からは細かな確認しか来ませんから。

それこそ、現在お世話になっているWorkship MAGAZINE様の連載も、実はけっこう先まで原稿が出来上がっている状態なんです。たぶん2カ月先くらいまでやることがないと思います(笑)。締め切りを守るのは前提として、そんな感じで、柔軟に仕事をコントロールしながらやっています。


構成の綺麗さを実感する瞬間がライターのやりがいにつながる

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ーー夏野さんがライターとしてやりがいを感じる瞬間は、どのようなときでしょうか?

「この記事、構成がめちゃめちゃ綺麗だな」と思った瞬間ですね。ライターのスキルが出るのは、全体の論理構成だと考えています。たとえば、商品紹介をするときに、(駆け出しの頃の自分を含めて)経験が浅いと、「これ、美味しいですー!」「商品情報これですー!」「ところで、美味しいですー!」と、話があちらこちらに行ってしまうんです。

私は論文で鍛えてきましたので、綺麗な構成で書けるという特技を持っています。だから、納得感があるクオリティが高い記事をしっかりお出しできると、仕事のやりがいにもつながると感じています。

ーー満足のいく記事を納品された後には、クライアント様に内容について伺うこともあるのでしょうか?

直接やり取りをしている編集者様には、「今回の原稿を読まれて、納得感はありましたか?今後やった方が良いことはありますか?」と、伺うようにしています。反対に、私が編集するときには、先生方から指導していただいた方法をそのまま使っています。つまり、モグラ叩き的に直すのではなく、理由を伝えて直していただく、ということです。

たとえば、単に「Aの言葉をBにしましょう」と言われても、理由がわからなければ学びにならないですよね。それを「Aという表現にはこういった意味合いやニュアンスがあるので、相手の気持ちを損ねるかもしれない。だから、Bにしましょう」と言われると、新しく「C」という表現が出てきた場合に、同じロジックで「D」に直せると思います。モグラ叩き的に直しを入れてもライターさんに力がつかないと思っているので、フィードバックにも時間をかけています。


気分転換の方法を段階別に分けておくことで切り替え上手に

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ーー以前にZoomのオンライン会議で「趣味はゲーム」だと伺いましたが、他に楽しまれている趣味などはありますか?

趣味はたくさんありますよ。短時間で気分転換できるもの、しっかりと時間をとって切り替えるものなど、ウェイトの異なるいろんな趣味を作っておくようにしています。たとえば、短時間で切り替えるなら「これ、絶対にどこにも塗っていかないでしょ!」と思うようなきらきらのマスカラを買ったりだとか。そんなふうにショッピングで気を紛らわしたり、今日みたいにネイルサロンに行って気分転換することもあります。

1時間使って気分転換をするなら、バーベルを持ち上げに行きます。さらに時間をとる気分転換なら、旅行に行きます。ちなみに、夫も仕事が大好きで、私と同じくらいに働いているので「旅行のときは仕事・パソコン禁止!」という風に決めています。通知も全て切っていくので、旅行中はスマホの電池が全然減らないんですよ。

もちろん、クライアント様には、仕事を前倒しで終わらせた上で3週間くらい前から連絡しています。「私の認識では、仕事はないですよね?3日くらいいなくても大丈夫ですよね?」みたいな感じで(笑)。万が一を考えて電話番号はお渡ししますが、かかって来たことはないです。

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ーー段階別で気分転換の方法があるのは良いですね!夏野さんは、読書をして気分転換をすることはありますか?

仕事に関連する本はもちろん読みますし、研究に関わる学術書もしっかりと読んでいます。それ以外には、トレンドを把握するために、芥川賞を受賞しているような本を買うこともあります。

あと、研究者仲間のなかには、本を勧めてくれる人が何人かいるんです。「絶対これ好きでしょ」と謎の学術書を勧めてくれることがあるので、紹介してもらった本は無条件で読むようにしています。あとは、友達から「この映画について議論したいから、見て来てほしい」と言われたら、見に行くようにしていますね。

本棚


こだわりのアイテムは高速で処理可能なMac mini

ーーそれでは、夏野さんこだわりの仕事道具について伺ってもよろしいでしょうか?

ズバリ、超速いパソコンです。具体的には、Mac miniというデスクトップパソコンを使っています。以前はMac Book Proを使用していましたが、写真の処理をするとパソコンのファンが「ウォーー!!」と、ものすごい音で回っていたんですよ。

写真の処理にはそれだけパソコンのパワーが必要なので、私のこだわりとして、パソコンを買うときには必ずカスタムするようにしています。具体的には、メモリは2倍にしているので、もともとのメモリが8GBなら16GBくらいのカスタムモデルにしています。

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ーーこだわりが詰まったパソコンなんですね!パソコンはこれまでに何台か使ってこられたんでしょうか?

パソコンは、2~3年に1度は買い替えているんです。また、パソコンに限らず、全ての電化製品は壊れなくても買い替えるように心掛けています。たとえば、写真のデータを入れているSSD(ソリッドステートドライブ)は、データが飛んでしまったら本当に困るので、1年おきに買い替えています。「動きが遅くなってきた、壊れてきた」という頃には、もう手遅れなので。万が一のときに壊れてしまって、クライアント様の写真が消えてしまって記事が出せないということがあったら、大変な迷惑をかけてしまいますから。

ほかには、Mac Book Proのノートパソコンも持っていますが、コロナ禍になってからはあまり出番がありません。取材を2件いただいていて、取材の間が4時間くらい空くときには、ノートパソコンを持参して仕事をすることもあります。

あとは、「Magic Mouse」という高機能マウスや、「Happy Hacking Keyboard(HHKB)」という少し高額なキーボードも愛用しています。仕事道具には多少お金をかけてでも、「クライアント様に迷惑をかけないことが第一」だと思っています。あとは、仕事道具といえるかはわかりませんが、仕事中はカロリーを消費するのか、飴をたくさん食べますね(笑)。

仕事環境


エモい文章を書く人に憧れも。文章に深みを持たせるために心掛けていることとは?

ーーさまざまな仕事道具をみせていただき、ありがとうございます。それでは、夏野さんは筆が乗らないときには、どのようにされていますか?

前しか向いていないので、基本的には筆が乗らないときはありません。「筆が乗らない」と言っていたら、スケジュールが全て壊れてしまうので。

ただひとつ、私が恵まれているなと思っているのは、会社なので事務作業でやることがたくさんあるんですよ。皆さんに報酬を振り込む作業やSlackで質問に答えること、ポストに契約書を出しに行くといった事務作業がたくさんありますので、「原稿のテンションじゃないから、溜まっていた事務作業を全部やっちゃおう」っていう時もあります。

ーー作業の順番を変えて、上手に気分転換されているんですね。ちなみに、夏野さんはここが弱点と思うポイントはあるのでしょうか?

エモい文章が書けないことです。世の中には、たとえ表現が拙かったとしても、内容が強烈で、めちゃくちゃ読んでしまう記事があると思うんです。普通の日常について書かれていても、ついつい読んでしまうような……。そういった、カリスマ性がある記事が書ける方は羨ましいなと感じますね。

北海道

ーー夏野さんが北海道旅行で書かれた記事は、思わず引き込まれてしまうなあと感じましたが……。

いえいえ。「小説家になりたい!」と思っていた時期もありましたが、すっかり自信を折られました。実は、小学校3~4年生の頃から、小説とかいろいろなことを書いていたんですが……。その過程で、「エモい文章は書けないかも」と気付きました。

いま思うのは、良い文章って、小手先で書けるものではないんですよね。たとえば、Twitterでツイートされるようなぽろっとした出来事でも、その出来事がすごくユニークだと読んじゃうじゃないですか。

そういった意味で、「良質な体験をしているか」とか「さまざまなアンテナを張って情報収集しているか」というのが、記事の面白さにつながると思っています。今後も気を抜かず、情報収集はやっていきたいですね。


新米ライターさんに伝えたい!取材時に注意するべきポイント

ーー夏野さんは有識者様へ取材することも多いかと思いますが、気を付けているポイントは何でしょうか?

まずは、時間厳守です。新米ライターさんの取材に同席していると、時間のコントロールが苦手な方が多い印象があります。話を掘り下げたくなるのはわかるんですが、「送っている質問の2割くらいしか聞けていないのに、40分も経ってしまった!」という状況は、避けてもらいたいです。

相手は取材時間が“1時間”と提示されたら、「その時間内で話をしなければ」と思っているんです。相手から最初に「今日はとても暇なので、3時間くらい話しても良いよ」という断りがない限りは、基本的には皆さんお忙しくされているので。「45分でここまで聞けた。それじゃあ、後は1問あたり5分くらいで答えてもらわないと」とか、インタビュアーがしっかりと時間をコントロールすることが大切です。

そのためには、「時計を見るようにして、思い切って話を切る」ことも大事なんですよ。取材で話を広げるのは大前提ですが、話が逸れてしまって記事にできなさそうな内容に差し掛かったら、「すみません!夢中になってお話を伺っていたら、30分くらい経っていました!(笑)。次の質問、良いですか?」と和ませながら、次につなげて行くと良いと思います。

ーー私も今後、取材中にはしっかりと時計を確認するようにしていきます!夏野さんは、ディレクターとしてクライアント様とライターの間に立つことも多いかと思いますが、苦労することや工夫していることなどはありますか?

気を付けているのは、ビシっと伝えることです。むろん、チームの空気が良い方がライターさんのパフォーマンスも上がるので、基本的には仲良くしたいと思っています。でも、不注意でライターさんがミスをしてしまったときに、無条件に「良いよ、良いよ!」とフォローするのは違うと考えています。たとえば、カメラが必要な現場にライターさんがカメラを忘れていったとして、「ドンマイ!(笑)」と声を掛けるのは違うな、と。「それは困りますね」とはっきり伝えないと、ディレクターとして務まらないなと思っています。

ただ、相手を見て伝え方は変えています。たとえば、こちらの要望を全く無視して、ライターさんの趣味全開の原稿が上がってきた場合。相手が少し調子に乗ってしまっていたら、「困りますね。納品扱いにはできません」と伝えた方が改めてもらいやすいでしょうし、真面目な方の場合は「私は好きなんですが、ちょっと方向性が違うようです」などと伝えるようにしています。

基本的には「ご本人を傷つけないように」と配慮していますが、しっかりとライターさんに伝えることで、クライアント様はもちろん、ライターさん自身からの信用も得られると思っています。「普段は仲良くしましょう。でも、言うべきことは言いますよ」と、メリハリをつけるように心掛けています。

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ーー最後の質問になりますが、今後はどのようなライターを目指したいですか?

今後、ライターとして活躍するためには、専門分野があると強いのかなと思っています。「なんでも書けますよ。安いですよ」と自分で言っていると、いずれ疲れてしまいます。「これに関しては任せて」と言えるジャンルがあったほうが、クライアント様も仕事を頼みやすいと思うんです。

たとえば、「グルメが得意です。なんでも書けます」というライターさんよりも、「単価は1.5倍ですが、私は豆腐に関しては異様に詳しいんです」というライターさんがいたら、大きな企業ほど後者を選ぶ傾向があります。そういった意味では、私もこれからは尖っていきたいです。

具体的には、官公庁の統計や学習指導要領を読めますし、霞が関の文章もしっかりと読み込めるよという「データを踏まえて喋れます・書けます」という部分は強みなのかなと思っています。今後は、そちらで認知されるようになっていったら嬉しいなと思っていますね。

ーー今後の夏野さんのご活躍も楽しみにしております。本日は、お忙しいなかありがとうございました!


信念を持ち追求することと、視野を積極的に広げる柔軟性を持つことの大切さを学ぶ

夏野さんの仕事や研究に対する考えを伺うことで、信念を持って挑むことや柔軟性を持つことの大切さを教わったように感じます。取材をするときのポイントや仕事外でのアンテナの張り方についても、「試してみよう!」と思えるお話をたくさん伺えました。

「活躍する現役ライターに聞く!」シリーズは、今回で最終回になります。
ご協力いただいたライターさん、貴重なお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました!

取材を重ねるなかで、取材の方法や取材記事の書き方を学ぶだけではなく、ライターとしての心構えや仕事をするうえでのコツなど、多くのことを教えていただきました。私自身も、皆さんから教えていただいたことを今後のライター生活にどんどん活かしていきたいと思っています。


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