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子ども虐待とその後の影響、回復の可能性 ACE研究を基に -研究会報告-

子ども虐待とその後の影響、回復の可能性 ACE研究を基に

先日、ご縁のある対人援助職の方々とセミクローズドの研究会を開催しました。テーマは、「子ども期の体験とその影響~その後のケアや回復の可能性について~」です。米国と日本で子ども虐待の研究や臨床に取り組んでおられる小児科医をお迎えして講義をしていただいた後、参加者で話し合いました。講師の先生及びご参加くださった皆様に感謝を申し上げます。その時学んだことを少しだけここにまとめておきたいと思います。

子ども期の逆境体験 ACEs


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子ども期の逆境体験【Adverse Childhood Experiences (ACEs)】が、長きに渡ってその人の健康状態に影響を及ぼすという調査研究が多く報告されています。逆境体験とは、虐待や、家族の精神疾患・離婚・薬物問題などの家庭機能不全のことを指します(各研究者によって定義に少し差はあります)。

子ども期(18歳まで)の逆境体験が増えれば増えるほど、成人になってからも肥満や自殺、慢性肺疾患など多くの疾患や健康問題を生じるリスクが高まることは米国だけでなく日本でも調査研究の結果明らかになりました。

今回の研究会では、子ども期の逆境体験だけでなく、良い体験の指標についても教えていただきました。良い体験があることで、上述したような健康問題へのリスクが軽減するというデータがあるそうです(Bethell, et al (2019) JAMA Pediatrics)。良い体験とされる7つのことを下記に示しておきます。

①家族に自分の気持ちを話すことができた
②家族が大切なときに支えてくれた
③地域の伝統的なイベントに参加して楽しかった
④学校に居場所があった
⑤友達に支えられていると感じられた
⑥自分に興味を持ってくれる大人が親以外に二人いた
⑦家にいる大人が守ってくれて、安全だと感じていた

研究会後半のフリーディスカッションでは、上記の7つの体験の中で「その子に興味を持って関わる大人」として対話や行事、居場所づくりをしていくことが私たちにもできるのではという話で盛り上がりました。

トラウマインフォームドケア

トラウマインフォームドケアの視点についても話題になりました。目の前のリスクや問題行動だけに意識を注ぐのではなく、その人の背景も含めて理解し、その人のレジリエンス(回復力)を支えるようなケアプランを考えていけるとよいだろうとのことでした。言うは易く行うは難し、です。時折このような会で学び直し、意識にとどめるようにしながら、日々の臨床に向き合っていけるといいでしょうか。

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この研究会は、ご縁のある対人援助職の方々(心理職、精神科医、作業療法士、看護師、助産師、医療事務、教員など)と共に、勉強もしつつ日頃の労をねぎらい合うことを大切にしていきたいと思っています。会の名前は「心のケア多職種研究会 Lemonade」と言います。これからも不定期ですが、会を企画していこうと思います。

“When life gives you lemons, just make lemonade.”
 辛くて酸っぱいモノゴトから美味しいレモネードを作ることができる。一緒に作ろう。

(20220321記載)


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