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はぐくむ湖畔の物語(エッセイ作家ふぉーさんの作品)

こんにちは、はぐくむ湖畔です。

今日は、お客様であるふぉーさんが書いたはぐくむ湖畔を舞台にしたエッセイをご紹介します。

とっても素敵なお話ですし、はぐくむ湖畔の大切にしていることも書かれているので、ぜひお読みいただければ幸いです。



最近できた「お気に入り」の場所

                          ふぉー

東松原の改札を抜けて、すぐ。
駅前の通りに面した、大きな窓から
あたたかい光が溢れている。

きょうは「面接」で訪れたわけだけれど
緊張をやさしく溶かしてくれるような
そんな甘くてゆったりとした時間が、
ここには流れている。

私とこのカフェとの出会いは、ほんの数週間前のこと。

「あったかい場所に行きたい!」
というひょんな気持ちから、コミュニティディナーに申し込んだ。

実家ぐらしで、お友達もいて。
そんな私が井の頭線に乗ってはるばるやって来たのは、
寂しかったから、だった。


気仙沼で知った「人のあたたかさ」

2023年夏、私は宮城県気仙沼市に足を運んだ。
ワーキングホリデーという名の、
旅行でも移住でもない、不思議な時間。

そんな2週間、私はたくさんの新鮮な体験に恵まれた。

シェアハウスに帰れば、「おかえり」と出迎えてくれる。
その中には、いつの間にか立ち寄ったらしい、ご近所さんもいたりなんかして。

ひとりで出かければ、どこまで行っても顔馴染みがいる。
大きく手を振って挨拶をされて、心がほっとした。

都会暮らしの私にとって
そのどれもが当たり前ではなかったのに、
あっという間に馴染んでしまった。

だからこそ、東京に帰ってからは

「私のことをお隣さんすら知らない。それってすごく寂しくない?」

と感じてしまったり。


「居場所」ってなんだろう?

さて、気仙沼に出かけた当初の私のテーマは
「子どもの居場所をつくる地域の取り組みを知りたい」。

元々、少年非行やネグレクトなどの社会問題に興味があり、それらを防ぐためには、どういった環境が大切なのか、考える機会を探していた。

気仙沼では、母子連れの集まるカフェや託児施設で働きながら、
子育て団体の方にお話を伺ったり、
勉強会に参加したりして過ごす中で、

居場所が必要なのは子どもたちだけ?
たとえば、私の居場所ってどこにあるんだろう?
あれ、居場所ってなんだっけ?

という新たな問いが生まれてきた。

都会は「個人単位で行動する」
ことが多いような気がする。
それなのに、

「おひとり様に厳しい」
と私は感じる。

ぼーっと考え事をしたいだけなのに、カフェでドリンクを頼まなきゃだめ?ぶらぶらと品物を眺めたいだけなのに、買わなきゃ気まずい?

こういった悩みは「ソロ活」あるあるかもしれない。

「何かやりたい」人も、「ただそこに居たい」人も、
居ていいんだと思える環境。

それがいまの私の、居場所観だ。


コミュニティディナーでのこと

そんなふうに、
人のあたたかさに触れたい!
この大都会に居場所を見つけたい!
と思いつきで参加した、コミュニティディナー。

集まったゲストさんは、「おひとり様」がほとんど。
みんなそれぞれに、特別なニックネームを名乗る。

私は「聞き役」派なので、居てもいいのかな?
と申し訳なく感じることもあった。

しかし、終わった後のこと。
ひとりのゲストさんが私を引き留めた。

「にこにこ、たくさん頷きながら話を聞いてくれてありがとう」

とのこと。

私は、おはなしするという目的を持って来たわけではない。
いわば、「ただそこに居たい」から来ただけの人だ。

それでも、頂いたひとことで、
ここに居ていいのかも
と自分で思えた。

私は今日も、お店に向かう。

はぐくむは、

きっと誰かにとっての「居場所」として、

湖畔のように静かに、

やさしく佇んでいる。


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