始めに断っておくと、「『扶桑奇伝』『Secret Base』の繋がり、その1」は、過去記事「拙作語り㉑~扶桑奇伝、更に追記(裏話)」に相当します(爆)
現代学園短編連作小説『Secret Base』の主要登場人物の造形に関し、過去の拙作『扶桑奇伝』中のキャラのイメージ・設定を流用している話は、過去記事でも何度か書いていて、この拙作語り㉒では、「茜・斉璽(『扶桑奇伝』)と咲良・斎(『Secret Base』)」について掘り下げます。
その1(=「拙作語り㉑」)同様にネタバレがありますので、目下公開中ステータスの『扶桑奇伝』本編本文をこれから読もうという気持ちが少しでもある方は、ちょっと待った方がいいかもです。。
あと…この記事は、いつになく画面がすこぶる縦に長い長文なので要注意です。。
『扶桑奇伝』での二人
少女忍者・茜は、極初期から主人公・兵衛と共に行動し、情報収集など自身の技能を活かしつつ彼に協力しながら各地を旅し。
各地の争乱勃発の裏にある「何か」が見えかけたところで、久しぶりに彼女が生まれ育った忍の里に戻ってみると違和感しか無く、里長・柾の許へ駆け込み事情を問えば、この里の忍である樒が許しのないまま里を出、ならず者を集め凶行に走っている、という。
樒は、彼女にとって優しく気のいい兄のような先輩の忍であり、
「そんなはず…!」
と動揺する彼女に、彼女を追って里へやって来た旅の同志の一人で占者の白菊が、
「『艮(※北東。鬼門とされる方角)からの禍星』…これに皆惑わされているよう」
「今までのことをたどると、善い人が何かをきっかけにして『狂っていった』のが多いと感じたの。そして、その全てを貫くのが『艮からの禍星』…北東のほうから飛んだという流星」
と告げる。
(樒はきっと何かに狂わされている。だけど、何に狂わされているのかが分からない。だから、どうすれば元に戻せるのかというのも分からない…)
茜は冷静に状況を整理し、
今為し得る、彼を止める手段はただ一つ。文字通り、彼ごと『鬼』の息の根を止める…彼ごと葬り去ること、それしか無いのだと悟り、
(せめて、あたしのこの手にかかって討たれて。それが、あたしに出来る、せめてもの……!)
と、悲壮な覚悟を胸に、里長の邸を飛び出して行く。
里長が、白菊と兵衛とに「剣技、術、敏速さ…互いにどちらも譲らぬ子らです。正面からぶつかり合えば、死闘になるのは目に見えております。どうか、あの子らを…」と願い出たのが必然であったかのように、茜と樒という同郷の忍二人の戦いは熾烈を極め、
樒の亡骸を思い出の丘に埋葬した後で、茜は仲間たちの許へ戻るのだが。
彼女は、切り落とした自分の髪を尽きることのない涙と共に彼の墓へと置き残し、再び里を後にするのである。
そして、絶体絶命の危機の後、一行は命拾いするも各地へ散り散りとなるが、茜は自身の郷里の傍で気を失い倒れていたところを里長に発見されるも、高熱を出して何日も寝込むことに。
兵衛たちは、それを「この里であった、あの一件のことを、きっと茜はずっと我々に隠して胸中で苦悩し続けてたんだろうな」と思わずにはおれない。
仲間たちが訪ね来たときにも茜の高熱は引いておらず、治癒術に秀でた瑞樹の力で元気を取り戻し、再び旅に加わることに。
再集結をほぼ果たした一行は、動静落ち着かぬ世情から都から少し距離を隔てた里邸で暮らす王女・巴に会い、王女から「もし、出雲で本当に何事か起こっていたならば…出雲宮の者たちに力を貸してあげてください」と乞われ、出雲へと向かう。
その出雲で出会うのが伝説の大蛇の姿を借りた「災禍」であり、周辺の里を守るべく怪物の動きを封じ続ける出雲宮の関係者で。その最高祀官というのが、祖母の死去によりわずか八歳で大宮司職を引き継ぎ、このとき十六歳の少年・斉璽であった、という。
彼を遠目に見た茜は、不幸な死を迎えた同郷の忍・樒の面影を重ねてしまい(それは兵衛も客観的に「(斉璽と樒とは)面差しがどことなく似ていた」と認めている)、何事もない風を装いながらも、彼と相対し会話するのにはどうにも意識しすぎてしまうところもあり。
一方で、斉璽には顔も知らない「産みの母」の存在があり、母が形見に残していった巻物というのがどうやら忍者の心得書であることから、「自分の母親は忍の者だったのでは」と考えており。だからこそ、母の形見の巻物を見せたときに「これ…似たようなの見た覚えがある」という顔をした、おそらく母と同類のくノ一である茜に寄せる思いは強くなり。
過去記事・ブス論の中での話ではないが、欠けた部分をもつ同士のほうが引き合い埋め合おうとする力は強いのだろうと。そういう意味では、後で眞楯が評するがごとく、
…ということなのだけれども。
後日、母の形見の巻物の件で、斉璽は里長・柾と話す機会をもち、その時に彼が柾に語る言葉こそ、茜に火の霊性を振り分けたことと深い深い関わりが……
この言葉に、柾は「全くもって、茜の本質をよく見抜いておる」と感服し、茜にとって彼と共に在ることはきっと幸せへ繋がるのだろうと感じ、「(あなたさまが茜を本当に妻に迎えたいと望まれるのならば)私に出来うることはいたしましょう」と告げて去るのであり。
里に戻ってきた茜を捕まえて行儀作法からみっちり仕込み直す…という展開に(そこは本編には書いてないのだけど:汗)。。
『扶桑奇伝』には多くの夫妻・恋人たちが登場し、その関係性も様々なのだけれど。ドラマ性では結構上位ではないでしょうか…少なくても、互いに惹かれ合う強さが違うし、相手の素の魅力だけでなく、その裏というか先にあるものゆえに、より「離したくない、叶えたい」と思い続けるところが。。
『Secret Base』での二人
過去記事で何度か触れているように、『Secret Base』のメインキャラと『扶桑奇伝』のメインキャラにはキャラ造形の相互関係みたいなものがあり(汗)
扶桑奇伝 Secret Base
茜 → 石動咲良(デル・リオ)
斉璽 → 祝部斎(ベイツ)
という図式が成り立ちます(爆)。
咲良には大学生の兄・直樹が居ますが、それは樒のイメージから付けたもので。こちらでは兄妹ずっと仲良しでいてほしいと。。
それと、こちらの話では斎からみて魅羽(『扶桑~』の瑞樹に対応)が従姉という設定になっていますが、それは斉璽と瑞樹が同じ人物を共通の先祖とする遠い親戚だからです。だいぶ近くなりました(爆)。そして、家が神社というのもそのまま継承という形に(汗)。ちなみに彼の家族が神職をつとめる筑波八重垣神社は実在しないネーミングのはずです…「ここ」というイメージモデルは存在しますけど(さらに汗)
彼らの出会いは高校入学時。
・・・そんな感じになるのですが、事件が。
・・・といったことがあり、斎が咲良の専属講師みたいになって、三年間が過ぎ。
その間、学園祭での出し物の相談をする中で、咲良は大学助手のフィールドワークに付いていけるかもな流れとなり……
あとは、「色々お世話になるから何か恩返しを…」と咲良が斎の家の手伝いとして七五三と正月に神社の巫女さんアルバイトをボランティアで引き受けたり、春に宣言した通り、斎が咲良を翌年度Bクラスに昇格させたり、があり。
更には、幼少時の記憶でハッキリしていなかったのが、咲良のほうも筑波八重垣神社の御守や境内を見ているうちに「見覚えがある気がする…」となっていき。
そして、2011年3月を迎え―――
このまま終わるのか――と思うと、顔を合わせることになる二人。
「駅は人生の縮図」は高校時代の国語の先生の名言です。。
B’z「HOME」とソルヴェイグの件は、時を越えて二度繰り返すこととなります。
『扶桑~』だけでなく、『Secret Base』でもドラマ性の非常に高い二人でした。。
そんなこんなで、『Secret Base』の全文再掲は無理(特に文化祭セクションが無理;)ながら、テーマというか流れごとに関連部分を切り出すことは出来るのかな…などと思ったりしています。。
今更ですが「引用」の使い方を覚えました…拙作引用の自作再掲なのですが、この書式のほうが分かりやすいかなと。。。