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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『AMNESIA for Nintendo Switch』感想


☆あらすじ


とある架空世界の、架空の国の、とある架空の街での物語。それは8月1日のこと。朝、目覚めた主人公は、突如として8月1日以前の記憶を「全て」失ってしまっていた。自分がどのような人生を送ってきたかも、周囲の人間関係もまっさら白紙の状態。そんな彼女の目の前に現れたのは自身を「精霊」と名乗るオリオンという少年だった。オリオンの導きにより、記憶を取り戻すために奮闘することになる主人公。名前も顔も知らない主人公の「恋人」であるらしい「彼」との出会い。誰を信用するべきか不明な状況で、相手に記憶喪失を悟られないよう行動する彼女。それにより物語は複雑に絡み合っていく。

☆スタッフ


・企画プロデュース・監修: 島れいこさん
・ディレクター: 山口みきはるさん
・イラスト: 花邑まいさん
・シナリオ: 月海りせさん、夜空茜さん

☆MUSIC


・OP: 「Reverberation」 織田かおりさん
・ED: 「深愛なる物語」 織田かおりさん
・メインテーマ: 記憶のポーカー

☆主人公


・主人公


ある日、突如として全ての記憶を失ってしまう女の子。自分の部屋や周囲の人間を調べていくうちに、学生であることやバイトをしていたことなどの基本情報をはじめ、様々な「自分」に関わる事柄を知っていくことになが…。
この通りデフォルト名もないので、なんとなく「マイ」って名前でプレイしました。マイちゃんっぽかったし。この作品の特性上パラレルワールド的な感じだからワールドによって性格も少しだけ違ってきている気がしていたし、基本的には自我がない。まあだからこそオリオンがいたんだと思うけど。とはいえ全く自我がないわけではなく、芯が強くて頑固なところもあり、控えめな印象。このゲーム一番の被害者。

☆攻略対象と感想


・シン (CV.柿原徹也さん)


病院のベッドで目覚めた主人公に、唐突にキスを仕掛けてくる青年。どうやら幼なじみ兼恋人であるらしい。 父親が殺人を犯したため周囲から阻害され、年に不似合いなほど冷めてしまっている。感情的になることはほとんどないが、1度内側に入れた人間には情の深いところも見せる。
こっちは記憶がないことは気づかれないようにしようと挑んだのに、秒速で記憶がないとバレた√。そこが幼なじみって感じだけどね。さすが。一番サスペンス色があって主人公が巻き込まれた事故の謎を解明していくのが楽しかった。初っ端から「とにかく、全責任はオレある。怪我のことも、記憶がないならそのことも、全部面倒みるつもりでいる」っていう頼もしさを見せるし、責任感もあって本当に年下…?ってなる所もありつつ、年相応に生意気な所もある可愛い男でしたね。クールなイメージで実際クールだけど、「……あの事故の時、お前が死んだかと思った。すげえ怖かった」とか「思い出せるよな?全部なくなったりしないよな?」って縋ったのも父親が事件を起こして周囲の態度が一変したっていう経験があったからだろうな。シンは
大切な人をとことん大切にするキャラだと思うし。「オレはもうおまえのこと女としてしか見てない」「おまえがどうしても嫌だって言うなら無理強いはしない。だけど幼なじみには戻らない」「付き合おう。今の距離感なんか、すぐに忘れさせるからっていう強引さも見え隠れしていて良きでした。ハートの男なだけあって愛情深い。警察にシンが任意同行されたりとかハラハラする場面もありつつ、幼なじみのトーマが色々こじらせて起こした(まあ過失致死みたいな感じだが)事件だったってことがわかった時が一番楽しかった。覚悟を決めたシンと臆病なトーマの対比が良きでした。「オレのこと責めてもいいよ。でも、絶対放さない」って言葉が好き。あとシンが意外と血とか殺人が苦手なのギャップだったし、照れ顔出た時は手叩いて喜んじゃった(笑)

・イッキ (CV.谷山紀章さん)


自宅マンションで目覚めた主人公に、突然の着信。着信表示の名前は覚えのないものだが、彼は主人公のことを深く知っているようだ。その後マンションに迎えにきた彼は、何故かたくさんの女性を周囲にはべらせていた…。どうやらアイドルのように人気がある青年で、そして主人公の恋人でもあるらしい…?『目』が合った異性は『誰でも恋をしている気分』にさせてしまう特異体質を持つ。誠実な付き合いをすることをあきらめ、刹那的な享楽に身を任せている遊び人の大学生。その『目』が効かない主人公に興味を持つ。
私こういう男が生涯の唯一を見つけるストーリーめちゃくちゃ好きです…。例に漏れずこの男に落ちました。最初は数多の女をはべらせている姿に「絶対落とす…」って闘志マシマシだったのにすぐ落ちた…絆された…。女をはべらせているのに、主人公に対して優しかったり、思わせぶりな態度をとったりしてきて振り回されまくったけど、それもまた一興…。この世界で主人公は一人で全部できてしまうタイプだからこそイッキに「他の奴じゃなくて彼氏の僕を頼って」って言われても頼れないし、女に囲まれてるし記憶喪失で信用していいのかわからないしで、上手く頼れない感じがあってそこのすれ違いがたまらんですね。「少なくとも、僕以外の男に落ちるのだけはやめてよね」とか言ってくるし、「時々僕は……本当は女の子が凄く嫌いなのかもしれないって思うよ」っていう弱さを見せてくれて一歩前進かと思いきや夏祭りの待ち合わせで延々待たされたり。割とラストの方まで本心のわからない男だったからずっと振り回されていましたね。まあそこが楽しいんですけど。この世界でトーマは義兄なんだけど、そのトーマが主人公の家に上がっていた時めちゃくちゃ嫉妬していて個人的には大歓喜だった。イッキの発言の中で「3ヶ月経った時が鍵」とか「……あと半月しかないからさ」とか意味深な発言があって何?と思っていたけど、実はずっと主人公のことが好きだったっていう…この男…。「君は僕にとって本当に特別な存在なんだ。……信じてくれる?」って言われた時は本当に幸せでした…。主人公が記憶喪失ってことを明かした時に「6月から必死で君を口説いてたことの方は全部忘れられているんだ……はは」って寂しそうに言ったのもすばらしかったし、「……ごめん。そうだね、ほんとに不安だったよね……」「僕が普段からもっと言ってればよかったのか。好きだよって。君だけだよって」って伝えられた時は今までの努力が報われた気がして好きでした…。FCもリカもちょこちょこ恐怖だったけどハピエンの方はまあハピエンなのでそんなにではあったかな。あと私はイッキのバドエンがどれもこれも大好きで、「君を壊した子たちを壊してくるよ」の「……守ってきたのに……」「我慢して……我慢して……大事に守ってきたのに……!!」「どうして……たったひとつだけ望んだものを壊されなきゃいけないんだ……!!」からの病みの流れが天才でしたね。それにきわめつけは「やるじゃない、神さま」エンド!!これ本当に好きです!「……どうして……どうして言ってくれなかったんだ。僕を頼ってくれなかったんだ……!」っていうイッキ…。イッキ視点あったの激アツでしたね。もうとにかくこの男がMVPです。

・ケント (CV.石田彰さん)


自分のマンションで目覚めた主人公の携帯には、「おはよう」「おやすみ」と一言だけのメールが大量に入っていた。送信者のケントという男は、どうやら無愛想な彼氏らしいが…。常に俯瞰目線で物事を見ようとする、数学科の院生。理屈で割り切れない現象を面白がる傾向があり、周囲の人間やその感情を観察対象にしている。恋愛感情すら、彼にとっては理屈で割り切るべきものである。
ケントの理屈っぽい性格に石田さんの声がめちゃくちゃ合うんですよね…。ナイスキャスティングです。この世界の主人公も起きてすぐベッドメイクしたり連絡先をこまめに登録したり几帳面だからcpとしてはお似合いだと思うんだけどね。恋人同士だからそりゃそうなのかもしれないけど主人公の名前を下の名前で呼ぶのギャップでしたね…。良きギャップ。ケントの方が歩くの早くて先行っちやったり未成熟な所があったり、理詰めかつ上から目線で話される感じが耐えられないって思う部分があったけど、オリオンがいたからなんとか乗り越えられた。まあケントも不器用だけどね。優しい所もあるし、8月8日に「君と口論ではない話がしたい」って言われた時は不意うちすぎて「えっ!?」ってなりました。付かず離れずというか、せっかく近づいたと思ったら「なんでそんな事言うの!?」って思ったりすることもあり…。もどかしい男だった。ストーリー進むにつれて「主人公に相当嫌われてたのに食い下がって付き合うところまで行った」っていう爆弾情報投下されたりするのでね。相当嫌っていたケントを理解しようとしていた主人公も菩薩かな?ケントはケントで対話をしようとしてきた所が新鮮で嬉しかったんだろうな。ケントからの「ずっと君が好きだった。ずっとこんな風に話がしたいと思っていた」って言葉がとても良きでした。まだ恋の序章って感じが初々しかったです!

・トーマ (CV.日野聡さん)


目が覚めると、見覚えのない道路で倒れていた主人公。そして、ちょうどその現場に居合わせのが、トーマだった。なぜこんなところで倒れていたのか、状況を理解できない貴女にトーマはそっと囁く。「俺がお前を守るから」と。これまでずっとお兄さん的存在として、主人公を近い距離で見つめてきたというトーマ。主人公を守り慈しみたいという気持ちが非常に強く、そのせいで精神が不安定になることも…。
いや不安定になりすぎだよ!主人公が女神で本当に良かったね!檻に閉じ込めやがって!あとトーマだけバドエンスチルあるのずるすぎ!…と言いたい放題ですが。本当に主人公がとてもとても良い子だったのよ。この√の主人公が一番好きだった。「俺とおまえは、恋人同士だった」とかいうホンマかそれ?という言葉から始まり、どんどん怖くなっていき…。主人公への嫌がらせも、それは違ったけど割と途中までトーマの自作自演説疑っていたからな?日頃の行いのせいです。しかも主人公にちょこちょこ薬盛っていて、やり口が本当…法曹界志望の人間がやることとは思えないっすよ…。なんというか優しいけど憶病なトーマだからこそこういう檻に閉じ込めるとか薬盛るとか遠回しの手段しかとれないんよね。だからこそトーマに手を差し伸べる主人公がより女神に思えたんだろうね。主人公が告白していたとかがわかった時、あまりにも主人公がいい子すぎて。「じゃあ、最悪のトーマを好きになる女の子なんて、私くらいだよね。だったら嬉しい。トーマを他の子にとられる心配しなくていいから」って言えちゃう主人公があまりに強キャラすぎて。この√の主人公が特に好きなゆえんはここなんですよ。トーマは本当主人公に感謝した方が良い。バドエンはスチルあったの羨ましすぎたのと、守り方の方向性を一緒に考えようぜってなったよね。

・ウキョウ (CV.宮田幸季さん)


どこにでもふらりと現れる奇妙な青年。主人公に謎の警告を発して去っていく。主人公を守りたいのか、著したいのか、その目的もはっきりしない。
まさかこの男の√でこんなに号泣すると思わんやん…。あまりゲームで泣いた記憶がないからこそびっくりしてしまった。他の√にも度々出てきて、なんなら殺されたりもしたからウキョウって何がしたいんだ?って思ったりもしたんだけど、とても純粋で愛の重い男でした…。まあだからこそ裏ウキョウっていうもう1つの人格が生み出されたわけだけど。主人公を死なせないために何度もやり直して、そのたびに主人公は不幸なめにあって、そして決して自分の恋人にはならない、そんなウキョウもさ、人間なのよ。自分の心を守ろうとするのよ。裏ウキョウが生まれた背景にはそんなことがあったんや…と苦しくなった。「君に、生きていて欲しいだけなんだ」ってそこまで自分をかけられるほど主人公のことが大事なんだなってわけですよ。むしろここまでの感情を抱いているのに危険っていうこともあって近づかないようにするウキョウも仕方ないとはいえ切ないよな。そして運命に反していくcpという世界。ケントの√あたりでウキョウに似た男が飛び降りで死んだみたいなのがあったと思うけど、その時は「ウキョウ死んだが?」ぐらいにしか思っていなかったのに、「……なのに、それでも俺の『オマエに生きていて欲しい』という願いは叶わない。なんたって、オマエが生きていることを、俺が生きて確認できてないわけだからさ」って言われた時なるほど…ってなった。異物として世界から消されるウキョウ…。オリオンが主人公と同化した理由とかがわかる真相√で、私としては「でも、死ぬまでの短い間は、彼女のことをずっと見てた。笑う顔、楽しそうな声、落ち込んだ表情、それから―誰かと、幸せになる姿。……それは決して俺のものじゃなかったけど、それでも俺は嬉しかった」っていう言葉で涙腺が終わってしまった…。オリオンとの別れのシーンでも泣いたし…。もう本当にここまで貫いた純愛、ずっと幸せであれ…。

☆総評


サスペンスもの好き人間としてはとても楽しめた!アムネ自体名前は知っていたけど、まさか9年も放置して私は一体何をしていたんでしょうか…。顔自体はシンが好きだったんだけど、イッキのストーリーがあまりにも刺さりすぎてイッキが推しになりました。はい。ホラー×サスペンス×SFっていう夏にプレイするのにぴったりな内容じゃないかって感じた。まあ実際アムネシアの舞台も夏真っ盛りの8月だしね。主人公が記憶喪失って設定だから仕方ないんだけど、名前がない、自我がないのはちょっと切なかったり…。だからこそのオリオンだと思うし、オリオンが色々代弁してくれたから物足りなさとかはなかったけど。じゃあ良いじゃんですよね…本当その通り…。一方で攻略対象の男たちがやり方は違えど皆それぞれ主人公にクソデカ感情抱いているのがとても良かった。でも皆そのクソデカ感情をうまいこと隠して距離感がもどかしくなったりもするから、クドすぎないというか、良い塩梅で楽しめた。真相があるゲームはキャラとくっつく過程に加えて真相を暴く楽しさがあって好きなんだよね。

☆攻略順


ケント→イッキ→シン→トーマ→ウキョウ

☆CERO


C (15歳以上対象)

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