8-4 抗不整脈薬
不整脈
不整脈とは、心拍数やリズムが一定ではなくなる状態である。心臓での電気刺激の形成異常や、伝導する過程に異常が生じることで発生する。
心臓は、微弱な電気刺激によって規則正しく収縮することができる。正常な脈の状態を、「洞調律」という。
正常な洞調律は、
①洞結節で起こった電気的興奮が(ペースメーカー電位)
②心房内に伝わり
③房室結節にはいり
④ヒス束から、右脚・左脚へと伝導し
⑤プルキンエ線維を介して、左右の心室に正しく伝えられていく
この電気刺激は、イオンチャネルの開閉によって発生している。
心筋細胞は、通常、マイナスの電荷を帯びているが(分極)、興奮するとプラスの電荷になり(脱分極)、再度、マイナス電荷に戻る(再分極)。
心筋細胞では、
興奮の始まり:Na チャネル
興奮の維持:Ca チャネル
興奮の終了:K チャネル
が作用しており、通常、興奮が終了するまでは、他の刺激がきても収縮しない(不応期=活動電位持続時間)。これによって、正常な洞調律が保たれる。
不応期に、他の刺激に反応して興奮して筋肉が収縮することが、不整脈の一因である。
不整脈の機序:
刺激形成異常:
洞結節が興奮しすぎる
洞結節の興奮頻度が長くなる
洞結節以外のところから電気刺激が発生している
刺激伝導異常:
伝導ブロック:電気刺激が伝わらない
リエントリー:一方通行のはずの電気刺激が、再度伝わって、過剰に伝導されるような状態
不整脈は、
心拍数が速くなる:頻脈性不整脈
心拍数が遅くなる:徐脈性不整脈
リズムが不規則になる:期外収縮
この3つに大別でき、異常の発生部位や機序などにより、細分化されている。
不整脈のうち、突然死や重篤な合併症の危険性がある重症の不整脈は、積極的な治療の対象となる。
頻脈性不整脈を整える:抗不整脈薬
徐脈性不整脈:ペースメーカー
アトロピン
β刺激薬
テオフィリン(適応外)
シロスタゾール(適応外)
抗不整脈薬の分類
抗不整脈薬の分類として、ボーン・ウィリアムス分類とシシリアン・ガンビット分類がある。抗不整脈薬の特徴を捉えやすいボーン・ウィリアムス分類を示す。
Ⅰ 群:
Na チャネルを阻害して、活動電位の立ち上がり速度を減少させる薬剤。
活動電位(APD)に対する影響の違いや、Na チャネルとの結合・解離速度の違いから、さらに、Ⅰa, Ⅰb, Ⅰc 群に分類されている。
Ⅱ 群:β 受容体を遮断することで、交感神経による過剰な心臓の興奮を抑制し、心拍数や心筋収縮力を抑える。
Ⅲ 群:K チャネルを遮断することで、心房・心室両方において再分極を抑制するため、活動電位持続時間や不応期を延長する。
Ⅳ 群:Ca チャネルを遮断することで、洞結節の自動能や、房室結節の伝導を抑える。
(Ca 拮抗薬のうち、抗不整脈薬として用いられるのが、主に、べプリジルである)
ジギタリス製剤:ジゴキシン
‥心筋細胞を遅く・強く動かすため、心不全を心房細動には、第一選択となる
抗不整脈薬の有害事象
不整脈がある人は、すべて抗不整脈薬を開始するわけではなく、重篤な合併症がある人等が、抗不整脈の対象となる。そのため、不整脈があっても、「このまま様子を見ましょう」と説明される方も多い。それは、抗不整脈薬のデメリットも考慮した上での対応。
○陰性変力作用
陰性:減少
変力:心筋収縮力
特に Ⅰ 群薬では、心筋収縮力が減少する可能性もあることに注意をしながら使用する。
不整脈の症状や、血圧を確認しながら使用する。また、心不全による心肥大がないか、胸部 X 線を定期的に確認する。
○催不整脈作用
抗不整脈薬には、催不整脈作用、つまり、既存の不整脈を増悪させる可能性・新たな不整脈が出現する可能性がある。
他にも、向精神薬や、クラリスロマイシン、抗アレルギー薬など、薬剤性の不整脈の原因薬剤にはいくつかある。
兆候として、心電図で、QT 延長(心室筋が興奮してから回復するまでの時間の延長)が見られる。(薬剤誘発性 QT 延長症候群)
そのうち、TdP が発生する可能性がある。
そのため、
抗不整脈薬が投与されている人には、薬が必要な理由がある
ことを理解した上で、
確実に服薬してもらうことが重要
副作用兆候に注意して、アセスメントが必要である
心房細動
最も頻度の多い不整脈が心房細動である。
心房が痙攣して、心房内で血液が滞留して、血栓ができる可能性がある。血栓が脳で詰まると心原性脳梗塞が起こる。
そのため、抗凝固療法が重要である。
脳梗塞リスクを判定し(CHADS2スコア)、脳梗塞リスクが高い場合は、抗凝固療法の適用となる。
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