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11-3 月経困難症


月経困難症とは?

月経困難症とは、月経に随伴して起こる病的症状のことをいい、月経痛や随伴症状が現れます。月経痛では、強い下腹部痛や腰痛を生じ、随伴症状として、頭痛、嘔吐、下痢や気分変動等を伴うこともあります。

月経困難症は、器質性と機能性に大別されます。
器質性月経困難症は、子宮や卵巣、骨盤内に痛みを生じる原因疾患があるため、原因疾患の治療が必要です。痛みの強い月経困難症の多くは、子宮内膜症や子宮筋腫が潜んでいる場合があります。

そのため、月経痛が強く我慢している人に対して、痛みを我慢するのではなく、一度婦人科に相談することを薦めることは非常に大切です

また、機能性月経困難症は、子宮や卵巣、骨盤内に原因疾患がない場合をいいます。機能性月経困難症に対しては、低用量ピルを使って治療することが、医療保険でも認められている(低用量ピルは、ホルモンを安定させ、症状を軽減させる効果がある)

月経痛の原因はプロスタグランジンが収縮させる

月経周期において、妊娠しなかった場合、肥厚した子宮内膜は剥がれ落ち、経血と一緒に体外に出されます。これには、体内で産生・分泌されたプロスタグランジンが作用しています。プロスタグランジンが、子宮を収縮させることで、剥がれ落ちた子宮内膜を体外に押し出すことができます。しかし、同時に腹痛も引き起こします。

月経痛に対して、疼痛緩和の目的で、ロキソプロフェンなどの NSAIDs が用いられます。NSAIDs は消炎鎮痛薬であり、起炎物質であるプロスタグランジンの合成を阻害することで、消炎鎮痛作用を示しています。月経痛は、炎症性の痛みではないが、プロスタグランジンによって子宮収縮することが痛みの引き金になっています。そのため、プロスタグランジン合成阻害作用を持つ NSAIDs が有効です。

腫れたり炎症を起こしている訳ではないのに、月経痛に NSAIDs が効くのはなぜ?・・・メカニズムを考えると理解できます。


低用量ピル

低用量ピルは、機能性月経困難症の治療に用いられています。「低用量ピル」は、もともと、避妊を目的として開発されてきました。その副効用として、月経困難症の症状緩和にも有効であることがわかってきたため、現在では、両者を区別するようになりました。

  • OC :経口避妊薬

  • LEP:月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的として使う薬剤

OC と LEP の違い

成分:合成エストロゲンと、合成プロゲステロンの合剤
成分は、 OC と LEP では共通

適応症
現在の医療制度では、保険診療では、あらかじめ認められた適応症に対してしか使うことができません。そのため、OC と LEP は、それぞれの適応症に応じて、正しく使い分けます。

低用量とは?

低用量とは、エストラジオールの量のことです。
 50μg を超える量:高用量
 50μg:中用量
 50μg:低用量

避妊法の一つであるヤッペ法は、1970年代から使われていた避妊法で、中用量を使った避妊法です。(プラノバール(ノルゲストレル+エチニルエストラジオール)を、リスク行為があった72時間以内に2錠服用し、さらに、その後、12時間以内に2錠服用する)

その後、効果を得ながら、かつ、副作用を少なくするために、改良が続けられてきています。
そのため、現在では、LEP には、30μg という極低用量の製剤もあります。

低用量ピルの薬理作用

低用量ピルは、次のような目的で使用されます。

OC

排卵・受精・着床と3箇所をブロックすることで避妊効果を示すため、経口避妊薬(OC)として使用されています。

  • ホルモンを補充することで、ホルモン調節の上位中枢は妊娠した時のような状態だと錯覚し、FSH や LH が減少するため、排卵が起こらなくなる

  • 子宮内膜の増殖が抑制されるため、着床しにくくなる

  • 頸管粘液の粘稠度が増加するため精子が侵入しにくくなる

毎日正しく(飲み忘れなく)服用したら、避妊効果は、99% と言われています。

LEP

子宮内膜の増殖を抑制することで、月経困難症の症状緩和や子宮内膜症の治療に用いられています。

月経移動

低用量ピルを服用中は排卵が起こらなくなるため、服用中は排卵せず、休薬中に消退出血が起こます。これにより、大切な予定に合わせて、月経を移動させるために、低用量ピルを用いることが可能です。

低用量ピルは妊孕性には影響しません。つまり、服用終了したら妊娠成立します。

注意)アスリートが大会の予定に合わせて月経移動させることも可能です。ただし、副作用としてむくみなどの可能性があります。そのために、体重管理が困難になる可能性もあるので、大会直前に開始するのではなく、前もって数ヶ月前から計画的に対策することが重要です。


日本では、いまだに、低用量ピルが正しく理解されていない場面もあります。他の薬剤と同様に、正しく使うことで健康上のメリットも大きいことを、正しく理解しましょう。

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