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11-7 男性ホルモン関連薬


男性ホルモンの調節機構

男性ホルモン(アンドロゲン)は、精巣のほか、副腎皮質でも作られています。

男性ホルモンの分泌は、上位中枢からの制御を受けて調節されています。調節経路には、大きく分けて二つあります。

視床下部から放出される LH-RH によって、下垂体から LH が分泌されます。これは、精巣からのテストステロン分泌を促します。

視床下部から分泌される CRH は、下垂体から ACTH 分泌を促し、これは、副腎性テストステロン分泌を促します。

男性ホルモンの合成経路

男性ホルモンは、コレステロールを原料に合成されます
男性ホルモン(アンドロゲン)は、テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ジヒドロテストステロンの総称です。この中で、多く存在するのが、テストステロンであり、いわゆる男性らしい体を作るために作用しています。
テストステロンは、5α還元酵素によって、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。

(男性の体内でも、男性ホルモンから変換して女性ホルモンが合成されている)

抗アンドロゲン薬

アンドロゲン受容体拮抗薬

(薬剤例)ビカルタミド、フルタミド
アンドロゲンの作用で組織が増殖することを抑制するために使用されます。前立腺肥大症治療薬と前立腺がん治療薬があります。

5α還元酵素阻害薬/前立腺肥大治療薬

(薬剤例)デュタステリド(アボルブ®️カプセル)
前立腺細胞内において、テストステロンは、5α還元酵素の働きによって、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。DHT は、アンドロゲン受容体に結合して、前立腺細胞の増殖を促進します。
そのため、5α還元酵素阻害薬は、前立腺を縮小させ、排尿障害を改善させる効果があり、前立腺肥大症の治療に使用されます。

5α還元酵素阻害薬/男性型脱毛症

(薬剤例)
デュタステリド(ザガーロ®️カプセル 0.1mg)
フィナステリド(プロペシア®️錠)

DHT は、前頭部や頭頂部の毛髪に対して、毛母細胞の分裂を抑制し、ヘアサイクルにおける成長期を短縮させます。その結果、毛髪が軟毛化します。
5α還元酵素阻害薬は、DHT の生成を抑制することで、増毛効果を示します。
【自費診療】

男性型脱毛症以外の脱毛症には、無効
・円形脱毛症
・閉経後女性の男性型脱毛症(女性型脱毛症)

(関連)
ミノキシジル(リアップ®️)
血管拡張作用をもち、もともと降圧薬として開発されましたが、多毛という副作用があることがわかってきたことから、発毛薬として開発されました。
OTC としてのみ開発されており、局所投与で用いられます。
なお、現在のところ、発毛薬は、抗癌薬やコルヒチンの副作用としての脱毛に対する効果はないとされています。

勃起不全(ED)改善薬

(薬剤例)シルデナフィル、バルデナフィル
細胞内で情報伝達する cGMP の分解酵素である PDE5 を阻害することで、cGMP 濃度が増加します。その結果、陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させるため、血流が増加し、陰茎を勃起・維持させます。

【注意点】
狭心症治療薬である硝酸薬とは、併用禁忌です。
硝酸薬は、cGMP の産生増加に働くため、どちらも cGMP 増加に作用します。
これまでに、バイアグラ使用後の死亡事例も報告されており、併用禁忌の硝酸薬を併用していた事例もありました。ED 改善薬は、本来、医師の診察を受けて処方箋がないと、入手できませんが、個人輸入などで不正に入手した場合、相互作用の確認ができないため注意が必要です。
また、ネット販売や個人輸入で、偽造品のトラブルが多く発生している点でも、不正入手に注意が必要です。

ED 改善薬は、これまで、自費診療で、医師の診察をうけ、処方箋に基づき、調剤を受けていました、2022年に、不妊治療目的に限り(他にも条件を満たした場合のみ)、健康保険が適用されるようになりました。


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