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3-2 抗結核薬

抗結核薬

結核菌は、抗酸菌属に分類される桿菌であり、結核菌による呼吸器感染症が、結核です。

一般細菌のほとんどは、細胞外で増殖しますが、結核菌は細胞内及び細胞外の両方で増殖します。

「細胞内寄生菌」であることは、結核菌に抗病原菌薬が効きにくい一因といえます

結核の治療は、薬物治療による内科的治療が中心となります。
その治療目的は、結核病巣にある結核菌をせん滅させることです。

抗結核薬の中でも、特に主要なものが、イソニアジドリファンピシンです。

前述の抗菌薬と同様に、ヒトの細胞と細菌の違いが、薬理作用のターゲットとなります。
また、結核菌は、分裂増殖の活発性により、分裂増殖期→半休止期→休止期に分けられ、薬剤によってもどの時点に有効性かは異なります。治療初期は、いろんな状態の結核菌が混在している状態であるため、いろんな状態の結核菌に効果を発揮するように、抗結核薬の多剤併用が必要です。

結核治療の中心は、抗結核薬を用いた内科的治療です。
標準療法ができれば、再発する可能性は 2% 以下とも言われており、標準療法の完遂が重要です。

薬物治療の原則として

①多剤併用・継続

薬物耐性を防ぐため、感受性がある薬剤の併用が行われます。
(A法)は中心薬剤である RFP, INH, PZA に、補助として、EB または SM を併用する4剤併用を2ヶ月行い、その後、RFP, INH の2剤を6ヶ月目まで行います。ただし、4剤併用を2ヶ月しても、症状改善がない場合は、RFP, INH に EB または SM を併用する3剤併用が行われます。
(B法)PZA が使えない場合(*)は、B 法を選択しますが、A 法よりも長期間を要します。
(*)肝障害、80歳以上、妊婦

②確実に服薬する

治療は6ヶ月以上かかりますが、完遂すれば、再発する可能性は極めて低く、有効性が高い治療法です。薬剤耐性を防ぎ、治療効果を上げるためには、確実に服薬してもらうことが重要です。症状がなくなると、治療継続が困難な場合もあります。
そこで、DOTs (ドッツ)が行われているところもあります。
DOTs とは、直接服薬確認療法のことで、医療者の見守りのもとで、服薬してもらう方法です。院内 DOTs に加え、退院後は、地域 DOTs が行われます。

③副作用を早期に発見し対応する

長期に服薬するうちで、副作用が発現する可能性はあります。
治療完遂のためには、副作用をできるだけ早期に発見し、対応することが重要です。
定期的な血液検査に加え、副作用の初期症状を説明したり、他覚症状を確認することは大切です。

また、臨床において、抗結核薬が使われている場面として、予防的に使用されている場面に遭遇することが多くあると思います。

予防的に使う場面としては、「免疫抑制」状態にある時、があります。
通常、結核菌は弱毒菌ですが、免疫が低下している状態では、感染したり、再燃する可能性があります。
そのため、免疫が低下するような状態、例えば、血液系の悪性腫瘍の化学療法中や、別の疾患の治療のために、免疫抑制薬を使用中の時などに、予防的に使用する場合があります。
この場合は、INH の単独投与がよく行われます。

抗結核薬の相互作用

リファンピシン

◎酵素誘導

リファンピシンは、CYP3A4 だけでなく、他のトランスポーターも誘導(酵素の発現量を増加させる)ことが知られています。

代謝酵素が増加すると、代謝が促進されるため、薬物血中濃度が低下し、併用薬の効果が失われる、という結果になります。

CYP3A4 の基質となる薬のほか、CYP1C9 や他のトランスポーターの基質薬など、たくさんの薬の薬物動態に影響するため、併用薬には、注意が必要です。

RFP を併用し初めて2日後には、相互作用が確認されたという報告もあり、酵素への影響は、速やかに生じるといいえます。
→相互作用の影響はすぐに出るので要注意!

RFP の併用をやめると、相互作用の影響は2週間後には解消された/解消されなかった、両方の報告がありますので、注意が必要です。
→併用をやめても影響が残るかもしれないので注意!

(※薬物動態学的には、酵素誘導を起こす薬物は、限られた数しかなく、リファンピシンは重要です)

イソニアジド

イソニアジドには、食品と相互作用の可能性があります。
(ただし、食事制限の指示は行われない場合もあります)

チーズ、ワインなどチラミン含有量が多い食品
イソニアジドは、チラミンの分解も阻害するため、チラミンが増加し、血圧上昇や動悸が起こる可能性があります。

マグロ、ブリ、サバなど、ヒスチジン含有量が多い食品
イソニアジドは、代謝物のヒスタミンの分解を阻害するため、頭痛などが起こる可能性があります。

これらの作用は、個人差も大きいです。(食事制限の指示がない場合もあるほど)

ただし、これまでに、食品をとって、副作用症状が出たことがある人には、特に注意が必要だといえます。



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