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超短編集

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自分の投稿した1~3分で読める読切超短編小説集。 黒色は暗めの、白色は明るめの話。 名前のない彼等の1頁。
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2021年9月の記事一覧

でかい後ろ姿

おれの後ろ姿はでかいと言われる。 大きい、ではなく、でかいと言われる。 これは家族からも…

sai
2年前
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何もない

彼は何もない暗闇をじっと見つめていた。 いつもいつも同じ時間に同じ分数だけ見つめて、さっ…

sai
2年前
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月艇

子供の笑い声が聞こえない国は不幸である。 ボクたちはそれを理念として活動をしていた。 ボ…

sai
2年前
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怒りの発生源

バタンと大きな音をたてて扉が閉められた。 またやってしまったと後悔しつつ、こちらも大きな…

sai
2年前
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セルフィーユ

珍しくあの子が私を呼んだかと思えば、間引きをしてほしいという呆れた理由だった。 確かに私…

sai
2年前
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深夜の家出

天候は良好。 旅立つには絶好の日。 それは間違いない、間違いのないことだ。 問題は両親に…

sai
2年前
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初勝利

昨日は真夏日で死ぬほど暑かったというのに、今日のこの寒さはなんだろうか。 マフラーを引っ張り出して首に巻き付けても、全くと言っていいほど効果がなかった。 さすがにまだコートは早い、そう思ってクローゼットの奥の方に眠らせたまま。 その選択が間違いだったことは認めるけれど、それでもまだコートは早い。 今はまだ秋である。 しかもまだ始まったばかりだ。 せめてコートは冬になってから、そう決めている。 ヒーターも……、冬になってから。 そう決めているのに。 なんでもう

ヘッド

空が薄暗くなってぽつぽつと雨が降り始めた。 それをだだっ広い家のこれまた大きすぎる窓の前…

sai
2年前
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サインをよこせ

やっぱさ、擬態するためには暗い髪の色の方が良いと思うの や、待て待てこの地域だと明るい髪…

sai
2年前
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三ヵ月と十日

小さい頃から朝に歩くのが好きではなかった。 できることならば、登校時間ギリギリまで横にな…

sai
2年前

マイナスフィルター

私の片目は現実を映さない。 いや、正しくは映すけれど左右で見える景色が変わることがあるの…

sai
2年前

いらないプライド

四歳の妹は最近いつもぐずっている。 落ち込んでいる。 俺には理由がわかるけれど、母親には…

sai
2年前
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欲しかったもの

子供の頃にさーと、急に彼女は話し始める。 僕はオレンジジュースを飲みながらそれに耳を傾け…

sai
2年前
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デプリヴェイション

ギフトを無駄にする者からギフトを剥奪する。 それが我々の使命。 大人しくギフトを返却するのであれば、我々は手荒な真似はしない。 しかし、もしギフトの返却を拒んだ者からは武力によって返却させる。 教本にはそう記されているが、実際には返却ではなく剥奪だ。 だから我々は返却とは言わない。 返却リストに載っている者に接触した時、ギフトを剥奪しにやってきましたと言う。 そして大人しくギフトを差し出すなら、そのまま生きていけますよ、と付け足す。 大抵の者は大人しく剥奪され