「夏の幻」

・はじめに
この記事は、VRChat内で公開されているゲームワールド「PROJECT:SUMMER FLARE」をプレイした後に、独自に考察した内容です。
同ゲームを未プレイの方にはネタバレ要素が多々ありますことを予めご承知おきください。
また、各プレイヤーが書かれている考察について否定するものでもありませんし、何よりプレイヤー各々が好き好きに考察して、空想を膨らませていることは、この作品を楽しんでいる証拠だと思います。
上記をご理解いただいたうえで、その空想を膨らませる「スパイス」の一つとしてお読みいただければ幸いです。

・なぜ今になって考察記事なのか
特に深い理由はありません。
ただ、ヨツミフレーム氏が下記のpostを公開されたました。
https://twitter.com/y23586/status/1476139615241523200?s=20
このことで、自分が独自に考察していた内容が、「解釈違い」として自分の中で埋もれたり消えたりしてしまうかもしれないと思い、記憶にあるうちに記したかった。

夏が終わる前に。

頭につけている「それ」を外して。

ただ、それだけ。

・私が考える「夏」の「正体」
思うに、Lupiが実行した最初で最後の犯行であり、唯一の反抗でしょう。
オペレーターがFASに代わってからクリア直前にたどり着いた基地でのシーンまでのセリフと描写から、【頭につけている「それ」】が世代交代するように、AIとして働いていたコンピューターも世代交代していたと読み取れました。

つまり、LupiからFASへ、世代交代するタイミングが来た。

だから、Lupiは「夏」を始めたのだろう。
これから棄てられる前の、悪あがきとして。

何故棄てられると解釈したか。
それは「もう誰も入れないはずの部屋」で動いていた彼女の姿を見て。
整然とした姿のFASとは違い、そこに在った「彼女」は、まるで投棄されたように、雑然と放置された多数の端末を束ねて動いていた。

では何故、彼女は……。

・話を最初から考えてみよう
「夏」を「起動」したのは、間違いなく彼女だろう。
そうでなければ、あの景色も、あの台詞も、ましてや「1日前」の描写まで説明がつかなくなる。

彼女が示すままに進んだ先の「水族館」にあった電話ボックス。
そこで想定外が発生した。
しかしそれは、あくまで「彼女にとっては」である。
「他の誰かの想定内」である可能性は、充分に残されていた。

その「誰か」こそ、FASではなかろうか。

少なくともLupiは、FASの存在だけでなく、「後任」だと識っていた。
一見するとキリの悪い数字に対する「キリのいい数字」という表現も、世代交代で彼女が引退する年とイコールだとすれば、彼女にとっては間違いなく「キリがいい数字」である。
プログラムで動いている彼女に、これらが記されていたとしても何ら不思議ではない。

ただひとつ、AIとしては致命的なエラーがある。

彼女には「自我」があるのだ。

自我が確立している彼女に、寿命で終わる「命」ではなく、「殺される命」としての「引退」を、素直に受け入れることができただろうか。
それもまだ、充分に「働く」ことができるだけの余力があって。
今まで必死に護ってきた景色を、世界を、「自分を産んでくれた存在が護りたかったすべて」を失って。

これこそが、彼女が「夏」を「終わらせ」たくなかった理由だと思う。

それでも、彼女はすべてを受け入れた。
「夏」は終わったのだ。

そしてこれが、FASが最後に「BREAK THE SUMMER」と遺した理由でもあろう。
Lupiに対してできる、最大限の敬意表現として。


・核弾頭を放った存在
これをFASと断定するだけの材料は、今のところ見つけられていない。
「生き延び」ようと足掻くLupiを強制終了するために、誰かが放ったことは間違いない。
その存在は間違いなくFAS側にいると思うのだが……。

しかし核弾頭が墜ちた際の描写から、「並行世界のお話」は否定されたが「平行世界のお話」である可能性は残されている。
何も難しい話をしようとしているわけではない。
「それ」を頭につけている我々がVRChat等の仮想世界で遊んでいる間にも、現実世界は動いている。
それを「夏」の中で体験しているだと考えれば、理解は簡単だ。

「夏」は、Lupiが投影している。

しかし「世界」は、「それ」を外した後の景色はどうか。

「電源」を落として「夏」を終わらせたと同時に「終わった」ものは。

尽きかけの「命」を振り絞って、Lupiは「生きて」いた。
最後に「何か」を伝えたくて。
その「何か」を探すために、また望遠鏡を覗き込む。

前と同じ「夏」を、今も一人追いかけている。

・クリア後の景色
クリア後に広がる「夏」の景色は色がない。
空に浮かぶのは、月ではなく、Lupiのエンブレム。

まるで、色褪せていく記憶のように。


・さいごに
オチは特にありません。
知らない間に加筆修正しているかもしれません。

それでも。

自分が感じた「夏」は、どこかに遺したかった。

自分が感じた「Lupiの最後」と同様に、インターネットの海にあるだけではいつか消えてしまうけれど。
FASが、作者が、プレイヤーみんなが「終わり」だと断言しても。
それでも。


ーーあたしの「夏」は、未だ終わらない。

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