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響け!ユーフォニアム3期 メンバーの入替評

足掛け9年、遂に響け!ユーフォニアムシリーズが完結しました。色々なことがあった中でまずは無事完走されたことをめでたく思います。本当にお疲れさまでした。
筆者は実は、最終回放送時は所用でリアルタイムでの鑑賞が叶わなかったのですが、その日の夜にネットをほんの一瞬追いかけるだけでも情報の嵐。原作は既に読んでいたのでおおまかなあらすじに影響はしないだろうと思っていた(実際さすがにそうだった)のですが、かなり早い段階でこんな情報が目に入りました。


なんとあの東浦心子がA編成漏れ。まさかの事実に筆者は大変驚き、悲しい気持ちになりました。
Perc.の東浦といえばユーフォファンなら大変おなじみのキャラクターです。リズと青い鳥では1年生ながらPerc.の花型であるティンパニーを務めた実力派でした。一年の詩でも関西大会までは順当にA編成入りしていたところ、全国大会のステージにその姿はありません。
アニメ12話では「オーディション自体に不満を抱く部員はいなかった」とされていますが、残念、筆者はちょっと不満です。なぜこんな入替が起きたのか、そしてこの入替に本当に不満が出なかったのか、きちんと整理して納得したいと思いこのコラムを書くことに決めました。

まずはこの1年間、各パートにどんな入替があったのかを見ていくことにします。




クラリネット

関西:BassCl 坂崎(2年)→中田(1年)

全国:BassCl 中田(1年)→坂崎(2年) 

   1st   加藤(2年)→井村(2年)

BassClで原作ユーフォパートを彷彿とさせる入替がありました。全国大会で再び選抜された坂崎は「極度の恥ずかしがり屋」だったはず。絶対にステージに戻ってくるという強い気持ちが彼女の力となったのかもしれません。
B♭Clでは1stパートに入替あり。府・関西と自信を持って吹いていた加藤は入部時には初心者。それだけにに全国大会にも希望があったはず。直前には悔しさがあふれていたに違いないでしょう。
しかし強豪パートともなるとパート内競争も熾烈ですね。





フルート&ピッコロ

関西:3rd 江藤(2年)→中野(3年)

入替は関西大会の1回のみ。中野が府大会でA編成ではなかったのは、モナカの経験者として初めからB編成を導く役割があったからかもしれません。こうしてみるとフルートパートの3年生は実は実力者揃いで、イントロ・アウトロの重要な部分がフルートだったことも一年の詩を選ばせた一つの大きな要因であり、加えて久美子世代の影の立役者だったのかもしれないと思いました。




オーボエ&ファゴット

入替なし

比較的順当に選抜された印象があります。元祖ダブルリードの会の兜籠コンビの実力派やはり計り知れないものがあります。梨々花も堂々と重要なメロディーラインを何度も吹き上げていましたね。さすがに上手すぎて週1でみぞれが教えに来ている可能性を想像しました。



サックス

入替なし

アンコンでも三重奏が投票上位に加わったパートですが、別コラムでも書いた通り主力とB編成組に実力の大きな乖離がある可能性があります。次世代の課題になるかもしれません。




ホルン

入替なし

1年生の三木がA編成入り。3回全てA編成で吹き切った1年生は三木を含めて4人しかおらず、特にこのホルンパートは2年生が4人もいたので、かなりの実力があるかもしれません。




トランペット

入替なし

最後まで説明不要の実力者集団でした。夏パートの重要な効果音を小日向ひとりで吹いていたのがよかったです。




トロンボーン

全国:2nd 葉加瀬(2年)→浅野(1年)

問題の入替①。
入替対象となった葉加瀬は部内のお騒がせ娘でしたが、実は強豪・南中での経験者であり、トロンボーンのキャリアだけであれば塚本・赤松を超えるベテラン奏者です。トロンボーンの2年生世代はリズで誰もA編成入りしていなかったこともあり葉加瀬の全国デビューは確実・・・と思いきやなんと1年生との入替という結果になりました。
実はこの入替は原作の描写と全く相違がなく、原作には葉加瀬みちるというキャラクターは存在しないが「2年生と1年生が入れ替わった」描写があり、すなわち2年生が1人しか選抜されていなかった以上、葉加瀬の入替は最初から既定路線にあったと言わざるを得ません。
葉加瀬みちるというアニメでのキャラクターは、秀一との親密な様子やピーキーな愚痴をこぼす様子から久美子ファンからするとあまり面白い存在ではなかったでしょう。ただおそらくパート内や演奏シーンにおいては確実に重要視されていた存在だったに違いありません。葉加瀬みちるの去就は後述の久石や東浦と同様に次世代の糧になるであろうと同時に、これも後述する入替の意味を決定付ける重要なヒントになっているような気がします。



低音

関西:Euph. 久石(2年)→Tu. 鈴木さ(2年)

   EuphSolo 黄前(3年)→黒江(3年)


本編の中核的な要素なので詳細は割愛します。いずれにせよ「全国大会金賞」という誉のために、部の中心人物2人が辛酸を舐めた事実は一生忘れてはいけない糧になるでしょう。




パーカッション

全国:Timp. 東浦(2年)→林(2年)

問題の入替②。
低音以外のパートについては各個人の演奏をこれまで全く聴くことができていないので、極めて印象ベースでの考察、もとい妄想で所感を書き残しました。ところがこの東浦に関してはそうではなく、前述のとおり東浦は前年リズと青い鳥でティンパニーのソロパートがばっちり音付きで描写されています。凄い演奏を聴いていたことが、東浦の入れ替えについてダントツで納得できなかった大きな要因でした。
さらに悲しいことにこのPerc.の入替もなんと原作通りであり、入替対象となった2年生は「泣き崩れている」とされています。アニメでは強気に腕組みをして3年生同士の議論に耳を傾けていた東浦がそんなことになっているなんて心を痛めざるを得ません。てかそんな後輩がいる状況で写真撮るときに「ハイ、ティンパニー」とか言ってる釜屋つばめちゃんマジでメンタル鉄強かよって思いました。

この状況を前提として今回の入替、ならびにその他のパートの入替で一体何が起きていたのか、もう少し具体的に掘り下げてみようと思います。



府→関西の変更点

低音パートの久石→鈴木さつきの入替に着目すると、やはり低音域を中心としたパワー不足が府大会での課題だったことが考えられます。そのためBassCl.に関しても、坂崎より1年生の中田の方が音量で評価された可能性があります。BassCl.も低音パートみたいなものですから、徹底的な低音域の強化が求められた表れだったかもしれません。中田が経験者だったという可能性もありますが、Tu.で初心者の釜屋妹が府大会からA編成入りしている状況からして、おそらく経験やテクニックよりも音量に重きを置いた指針が最初からあったのかもしれないですね。同様に、Euph.ソロについても久美子よりも真由の方が音量で評価されている側面があったことが想像されます。もっとも、このEuph.ソロはTr.とのソリパートであるため、例えば両者の音のバランス等が求められる等の要素も考慮され得ることから、一概に引き合いに出すことはできないと思います。



関西→全国の変更点


基本的な指針は変わりませんが、低音域の強化が進んだためバンド全体に更なる音量を求めての入替となった可能性が考えられます。別コラムでも書いている通り、全体の人数に鑑みると男子1人≒女子2人分の音量感でバランスを計算している可能性があるので、単純に言えば男子を入れてしまえばその分ボリュームは増加すると考えられそうです。
葉加瀬はその仮説にピッタリ当てはまるように男子の浅野との入替となったのです。非経験者であっても選抜される可能性があるのは釜屋妹の例に漏れないので、一貫して音量を重視する傾向が強い印象があります。言葉を選ばずに表現するのであれば、葉加瀬は今年のバンドの指針にマッチしなかったと言えるかもしれません。悲しい。
ティンパニーについては女子同士の入替でしたが、林は見るからにパワー系です。リズと青い鳥での東浦の演奏は非常に繊細で、一音一音の強弱が短いフレーズでもわかるほどのテクニックの持ち主でしたが、全国大会ではそれほど強く求められる要素ではなかったのかもしれません。最終回の林のティンパニー見ましたか?打面を突き破るんじゃないかという勢いでマレットを振り下ろしていましたが、あの姿こそが滝昇が求めていた要素のひとつだったように感じています。
1年生の浅野はもちろんのこと、林は前年度B編成だったため、初の檜舞台でした。もしかしたら全国大会に向けたオーディションにかける思いは強く、それがプレッシャーの無い大胆なプレイングに昇華した可能性を想像してしまいます。

そして返り咲きのあったBassCl.について。考えられるのは、坂崎と中田にはそもそもそれほど音量や技量に大差がなかった可能性。もしくは、坂崎自身がオーディションやバンドの指針を理解して音量を意識した演奏を心がけていた可能性もあります。クラリネットパートは強豪ですが、そうしたひとりひとりの努力があったのかもしれないと想像したくなってしまいます。



実際の全国大会

これはちょっとメタ的で余談のような視点ですが、実際の吹奏楽コンクール、特に高校の部についてはバンド全体の音量が大きいと金賞に近づく印象があります。ブロック大会(ユーフォでいうところの関西大会)ではそれがより顕著です。事実、男子部員のみで構成された龍聖はテクニックを会得することで全国金賞を獲得しました。高校生レベルだとそれほど音量に男女差は無いことが多い(リアルだと女子校の玉名や精華と、かつて男子校だった淀工の音量差に大差は無い印象)ですが、微差が積み重なると大きな差になる可能性は大いにある世界だと思います。
本編のどこかで滝昇も言及していたような気がしますが、もちろんただ大きいだけではダメで当然ハーモニーを損なっては本末転倒ではあるものの、綺麗だけれどずっとメゾピアノレベルの音量しか出ないというのはコンクール的に評価されませんし、演奏会などでもちょっと物足りなく感じるのが自然です。滝昇はずっと明浄工科など全国常連のサウンドを研究していましたが、音量についても一つ成長の重大要素として捉えていたのかもしれません。



疑問とこれから

アニメ3期にて、府大会オーディションの結果に疑問を持った久美子は滝昇に選抜の意図を聞きました。ただこれはオーディションという制度そのものに少なからず影響をもたらす可能性が高いことから、普通の部員にはなかなかできることではないでしょう。では滝昇は日々の指導の中で、今の北宇治に足りないものや金賞のために求められると考える要素を部員全体に平等に伝達していたのでしょうか。アニメ3期は余白が多い作品なのである程度勝手に妄想していいと自己都合で解釈していますが、おそらく彼はあまり伝達できていなかったのではないかと筆者は感じています。そうなると、気付いた者だけがどんどんオーディションで求められる人材になっていく。オーディションが複数回ある以上は競争のためになかなかそうした情報が部員間で共有されない可能性もあるように思います。それは高校生の部活としてはあまり健全ではないような気もしますが、組織が大きなす目標を達成するために必要な競争だと言われてしまうと、高校吹奏楽というのは非常に残酷なものだなあと感じるところです。

そして、そうした残酷な運命に煽られて憂き目にあった久石や東浦、葉加瀬といった面々は、来年の最後の年にどんな奏者になっているのでしょうか。東浦は全国大会前日の夕食で林と隣り合わせで喋る様子もあったので、きっと純粋で良い子なのでしょう。純な気持ちは素直に成長につながると思います。葉加瀬は目を付けられていたドラムメジャーがいなくなり、晴れやかな気持ちで絶対に見返してやるとすら思っているかもしれません。そういえば最終回のシーンがエモい写真揃いだったけど、あの流れで葉加瀬と麗奈がしゃべってるシーンとかあったらおもしろかったな。さすがにないか。
いずれにせよ、部長・黄前久美子が見せていた悔しさをバネにして部のために奮起する姿は、彼女たちの目にも強く焼き付き、受け継がれていくことでしょう。響け!ユーフォニアムは北宇治吹奏楽部の物語であり、すなわち部員ひとりひとりの物語でもあるでしょうから、それぞれがどうにか幸せだったと思えるようなものになることを祈っています。










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