見出し画像

雑誌の印刷部数公表から読む「伸びる雑誌・消える雑誌」

日本雑誌協会(JMPA)では、雑誌協会加盟誌を印刷証明付きで年4回、3ヶ月単位の平均部数を公表しています(公表していない出版社や雑誌もあります)。どのカテゴリが伸びそうなのか、なくなりそうな雑誌はどれなのか、2019年10月~12月分と1年前の数字を比較して、雑誌の行く末を予想したいと思います。

成長率No.1! これから確実に伸びる女性シニア誌

この雑誌不況の中、破竹の勢いで伸びているのがハルメク。1年でなんと32.8%も伸びており、323,667部と女性誌の中ではトップの部数です。前身は「いきいき」。書店置きせず郵送、自社通販を同時に行うことでユーザーの囲い込みを行い、通販で雑誌以上の利益を出しています。
ハルメクは読者の意見を採用した商品を自ら作って売るという、商圏を作り出すことに成功しており、シニア向けファッションや化粧品などの市場がまだ整っていないことから、新規参入も含めまだまだこれから伸びるカテゴリであると言えます。
他の50代以降向け雑誌は微増〜微減といったところですが、今後ファッションや化粧品大手と組んでブランドを開発し一般展開したり、旅行や医療、お墓などへマーケットを広げたり、千趣会などの通販会社が書店向けにシニア誌を創刊したりも十分あり得ると思います。
男性シニア誌は、女性シニア誌がある程度成熟してからの発行でないとうまくいかない気がします。

ファンがしっかり支える、不動の女性週刊誌

女性セブン女性自身週刊女性の3誌とも前年から1%ほどしか変動しておらず、この出版不況の中では根強いファンを持つ安定した媒体です。昨今は女性週刊誌初のスクープも多いので、メディアの中での立ち位置も強くなった気がします。
近いカテゴリの写真週刊誌(FLASH、FRIDAY)、一般週刊誌(週刊文春、SPA!など)、総合月刊誌(文藝春秋、Wedgeなど)は5%ほどの減少傾向にあるので、「女性週刊誌」の特異性が際立ちます。

ほとんどの雑誌が1〜2割減、ネット移行が進むコミック誌

少年向け、男性向け、少女向け、女性向け全てで2桁減が当たり前。全てのカテゴリの中でダントツの減少率です。若年層の減少とネット移行が主な原因と考えられるので、この流れは今後も続くでしょう。すでに1万部を切っているサンデージェネックス、月刊少年シリウス、月刊!スピリッツ、FEEL YOUNGなどはネット展開のみになる可能性が高いです。
週刊少年ジャンプは昨年から10万部減らしながらも1,602,083部(6.1%減)と、相変わらずの強さ。2位は週刊少年マガジンの649,167部(12.8%減)、3位は月間コロコロコミックの563,333部(15.1%減)。この3誌が公表部数の中ではトップ3の部数ですが、減り方が大きいので来年は部数3位が週刊文春(今季551,692部/8.4%減)になりそうです。

休刊が続きそうな男性誌

Men’s JOKERSAPIOが休刊。ラグビーW杯でSports Graphic Number PLUSが売り上げを伸ばした以外は平均で5%くらいの減少。MEN’S PreciousENGINEの部数が危険水域に入ってきています。ENGINEは車離れですかね。

少子化で減っていくマタニティ・育児誌

対象者が年々減るためじわじわと部数を減らしています。Pre-moBaby‐moたまごクラブ初めてのたまごクラブなど同じ出版社のものは、来年あたり合併しそうです。子供誌は30%、40%近く部数を落としている雑誌がある反面、20%以上増えている雑誌もあるので、まだ大丈夫そうな感じです。

その他

・女性誌は減っているものもありますが、増えているものもあり、割とまだ元気な印象。CanCam以外の赤文字系(Ray、ViVi、JJ)とSeventeenの減少幅が大きいのに時代を感じます。
東京ウォーカー、九州ウォーカーは他地域のウォーカーに比べて減少傾向のため、横浜・東海などと合併になる可能性あり。
アニメディア、声優アニメディア、メガミマガジンは学研プラスから別会社に買収されたため、部数非公表になりました。これが吉と出るかどうか。
・テレビ情報誌は不定期刊行になったテレビブロス以外はまだまだ安泰。

まとめと考察

全カテゴリに言及するのは無理そうだったので、特徴的なものを抜粋して取り上げました。雑誌は全体的には減少傾向にありますが、カテゴリによってバラツキがあり、消滅せずWEBに移行していくものも多いため、現時点ではそんなに悲観的になることもないんじゃないかと思います(出版社的にはそうもいかないでしょうけど…)。

出版社の今後の課題としては、WEBとの親和性と出版以外の収益が必須だと思っています。例えば料理雑誌なら作り方を動画でも見ることができ、材料や道具をECで購入できるような仕組みです。料理家の先生のイベントを開催して誌面に載せた料理を実演してもらったり、雑誌プロデュースの調理雑貨を売ったりと、雑誌を売っておしまい、のビジネスモデルからは脱却する必要があると思っています。

人気コンテンツを持つと同時に、複数で収益を得られるようなビジネスモデルへ移行できるかどうかが、これからの雑誌の盛衰に大きく関わってくると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?