丸山真輝プロデュース 和歌山で演劇しよ!WS公演  HOME 登場人物で思うこと


1時間の短い物語ゆえに登場人物の役割はハッキリとしているはずだという前提で、それぞれに感じたことをメモとして残しておきたいと思いました。

ヒロイン 灯(あかり)
彼女にとってこの物語は、実母に見捨てられた自分が血の繋がっていない家族体験を通して、愛されるべき存在だと確認するまでの道程でした。
母に育児放棄された瞬間に感情が固定されてしまい、マザーシップで出会った仮の母の別れ際の「家族」の言葉を聞くまで、ここに自分は居ていいの?という怖れが続いているさまを、灯役の井上 芯さんが見事に演じられてました。
母に見つめられる中で自分が居ていいんだと確信する姿がもう灯ってこういう子❗️としか言えませんでした。

晃(あきら)
田中家の中で灯の兄となる存在。
南出 亮さんがポジティブな兄を演じておられました。そんなポジティブさとはなんぞや?を考えてて、そういや年頃の男の子が年頃の女の子と出会って家族になる物語につきものの恋愛感情がここにはないことが気になりました。南出さんの視線にも態度にも兄の自覚しかありません。孤児院育ちの彼がマザーシップにいるということは、孤児院には彼の求める家族の姿はなかったということ?
田中家では南出さんが生き生きと兄を演じるということは、晃にとって守りたいと思う人がいる場所が家族なんじゃないかな?
さらに言うと守り守られる場所。
街で彷徨う灯と出会ってマザーシップに呼んだ時にはもう灯は晃にとって妹だったに違いない。
始終、南出さんが灯と絶妙な距離感を掴んでてまさに兄。


田中 奈美(母)
家族の要。借金で身を隠すのが本来の目的だったはずなのに、確固たる家族の絆を作ってしまうほどのパワーが溢れる人。なので借金を作ったのは絶対に旦那の方。押さなくてもいい印鑑を押してしまったんだろうね。
演じる坂元さんのナチュラルさが終盤の兄弟に向けた愛情に説得力を生んでいました。

田中 孝史(父)
奈美さんがいなかったらどうなっていたんでしょう、この人。
演じる久田さんが孝史を演じようとしてるのか、孝史が父を演じようとしているのか。演出の妙というべきか。以前から久田さんを存じているので、作/演出の丸山さんの観察力と応用力が怖い。

田中 春子(仮の祖母)とエリ
始まりと終わりのふたり。実の親子かどうかは僕にはわかりません。
このお芝居の肉が田中家なら骨格は春子とエリ。
エリが家族を求め、春子が家族としてエリを選んだのか?
ふたりの別れと再会が何かしらファンタジックなのは、痴呆と年齢不詳のせいなのか、それと灯と実母の過去と未来の写し絵だからか?
演じる宇都宮さんが新宅さんを守ろうとする姿は純度100%
新宅さんの衣装で脳みそが揺れる。なのに納得してしまう存在感。

シスター
物語としてのあの事件は、家族を解体して見えるものを生み出すきっかけなんだけど、マザーシップを密輸?の隠れ蓑にしたというより経営上の必然だったと思うんだ。つまり現実が見えていた人。
前陸路さん、シスター姿なのに敏腕経営者に見えた。

矢野
たぶんシスターがマザーシップを利用してコソコソやっているのが許せなくて、報酬だけじゃなく正義感から警察に協力していたんだと思う。でもマザーシップを守るつもりが、解体する羽目になるなんて思いもしなかった。
對馬さんの最後にオロオロする小さな善人が絶品。

佐藤 祐一
ドライの権化。でも彼がいないと灯もエリも自分を取り戻せなかったのだから皮肉だね。
岡本さん、日常の会話でも恵美子に心を許してなかったよね、恐ろしい。

佐藤 恵美子
この物語で一番の悲劇に遭った人。旦那に利用され、新たに手に入れた家族は嘘。前半の超ご陽気さとのギャップが辛い。演じるこたにさんのキャラクターに救われたと言っても過言ではない。

実母
いつか灯に「仮の家族でもいいから始めてみない?」と言ってもらえたら救われる。
それが春子とエリだと思うんだ。
演じる納谷さんはおそらくこの座組の中で最も演技経験が無いはず。
背中、照明と演出を駆使して彼女をサポートしてるのを観て泣けたw

以上。






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