023 [おとなの研究] 研究のための文章を書く方法
研究を進めていくと最後のタスクとして立ちはだかるのが、研究論文を書くということです。論文で使われる文章は実用文と呼ばれる文章です。実用文とは、事実と自分の考えを正確に伝えるための文章です。そのために、文章全体としての一貫性(コヒーレンス)が重要となります。それは書かれた論文が曖昧に解釈されないための技法なのです。
今回は研究を含め、あらゆる活動のアウトプットをするための基礎スキルである「書く技術」について書いていきます。
・200字くらいでひとつの段落(石)を作る
私は2019年に技術評論社から『伝わる文章を書く技術』という本を出しています。
この本で書きたかったことは、伝わる文章を書くためには、200字でひとまとまりのことを書けるようになることが最初のステップだということです。200字というのは、読みやすい文章の一段落に相当します。ツイッターの投稿は140字に制限されています。たまたまでしょうけれど、この字数は直観的に読みやすい長さです。
ワインバーグの『ワインバーグの文章読本』という文章の書き方の本があります。
この本では、「自然石構築法」というテクニックが紹介されています。「自然石」というのは、ひとかたまりのアイデアのことです。必ずしも文章の「かたまり」とは限らず、写真や図や引用といった「かたまり」も自然石として使えます。そしてこれらのかたまりをモルタルでつないで「壁」を作るという作文法です。
・段落(石)をモルタルでつないで文章(壁)を作る
「石」だけではバラバラになってしまいますから、石をつないで固めるモルタルが必要なのです。そしてそのモルタルは接続語であったり、文章の方向性や種類を示す文であったりします。つまるところ、伝わる文章を書くという仕事は、
・素材としての「石」を集める
・石を置く順番を試行錯誤する
・石と石をモルタルでつないで「壁」を作る
という仕事なのです。
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