【おとなの研究】(11)すでに確立した理論が自分の現場においても適用可能なのかということを検証するところからスタートする
2024年2月3日(土)
前回は、Google Scholar で先行研究の調査をして、関係のありそうな論文を探して、その論文を読むことについて書きました。学術論文には共通の形式がありますので、それを把握していれば、読むのは難しくありません。もし難しく感じるとすれば、それは自分にその知識がないだけの話ですので、そこから勉強を始めればいいのです。
さて、自分の研究テーマに関連する論文を集めて読んでいくと、最初は思いつきに過ぎなかったものが、徐々に1つの研究テーマとして形作られていきます。
この段階で、「自分だけが気づいている」と思っていたテーマについて、すでにたくさんの研究者が研究していることがわかってしまうこともあります。このとき、すでにたくさんの研究者が取り組んでいるテーマであれば、自分が発見できることはほとんどないのではないかと考えて、違うテーマに変更することも可能です。
また逆に、それほどたくさんの研究者が取り組んでいるということは、そのテーマが重要であることの証拠であると考えて、あえてそのテーマに入っていくことも可能です。
「銅鉄研究」というコトバがあります。「銅で明らかになったことを、素材を変えて鉄でやってみました」というような研究を揶揄したコトバです。つまり素材を変えただけで、新しいアイデアが入っていないような研究は揶揄されるということです。
とはいっても、すでに理論化され、いろいろな形で検証されている説であっても、自分の現場でそれが成立するかどうかを確かめてみるのは、研究の第一歩として意味のあることです。すでに確立された理論をもう一度データを取って検討してみることを「追試」と呼びます。追試をして、確立された理論が再度確認されれば、それを「再現性」があるといいます。理論と呼ばれるためには、この再現性が保証されていることが重要です。
心理学の理論では、有名な理論であっても再現性が低いということが最近の問題になっています(たとえば https://ja.wikipedia.org/wiki/再現性の危機)。追試をやってみると再現されなかったり、そもそも追試を行うインセンティブが低いといったことが問題になっています。
ですから研究の第一歩として、すでに確立している理論が、自分の現場においても適用可能なのかということを検証するところからスタートするというのは意味があることです。
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