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【みんなの前で話す技術】(1) おとなの"Show and Tell"

みんなの前で話す技術とは何か

この講座に「みんなの前で話す技術」というタイトルをつけてみました。「みんな」というのはどれくらいの人数なのでしょうか。多いところでは数百人、少ないところでは3人くらいの人数を想定しています。

私は大学の授業で100人とか200人くらいのクラスを持って、その人たちの前で話しています。定期的に大勢の人の前で話す機会があるのは、教員や研修講師といった職業についている人でしょう。しかし、こうした職業についていない人でも、3人とか5人くらいの人の前で話をすることはあります。

友達と一緒にお茶を飲んでいて、「そういえばこんなことがあってね……」とか「この前こんな映画を観たんだけど……」という出だしで話を始めれば、そこにいるみんながあなたの話を聞こうとするでしょう。その瞬間、あなたは「みんなの前で話す技術」を使って話をしていくことになるのです。

「いやいや、そんなにすごいことじゃないですよ。私は単に"おしゃべり"をしているだけですから」

そのとおりかもしれません。しかし、単におしゃべりをしているとしても、そのおしゃべりがわかりにくい人と、わかりやすくてしかも面白い人がいます。つまり、おしゃべりの上手い人と下手な人がいるわけです。それはどこで分かれるのでしょうか。

Show and Tell という活動がない

アメリカやカナダでは、キンダーガーテン(幼稚園)から小学校の低学年では「Show and Tell」という活動を行うそうです。これは、子供が自分の好きなもの(おもちゃとか写真とか絵本など)を持ってきて、みんなの前でそれについて話をするという活動です。こうしたトレーニングを経て、自分の考えをうまく伝える技能やパブリックスピーキングといったスキルに繋がっていくのかもしれません。

一方、日本では「Show and Tell」のような、みんなの前で話す機会やそのトレーニングというのはめったにありません。みんなの前で話すのは「偉い人」なのであって、自分たちには関係のないことだという暗黙の了解もあるように感じられます。

みんなの前で話す技術は誰でも必要なスキル

しかし現代では、誰もがみんなの前で話す機会がやってきます。喫茶店でのおしゃべりから、少人数での打ち合わせやミーティング、公式・非公式な会議や会合など。また、テーマの決まった講演やプレゼンテーション、報告会などをする機会もあるでしょう。みんなの前で話す技術は、教員や講師や「偉い人」だけのものではなく、すべての人に必要な技能となりました。

この講座ではこの「みんなの前で話す技術」について考えていきたいと思います。「おとなの"Show and Tell"」をやっていきたいのです。この記事を読んでいただければ、みんなの前で話す機会がやってきても、恐れることなくチャレンジしていける人になれるでしょう。

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向後千春が毎日読んだり、書いたり、考えたりしていることを共有しています。特に、教える技術、研究するこ…

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