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その痛みはあなたが精一杯に生きてきた証

人生のMVP

岩手から世界へ。そして野球の神様の領域へ。

大谷翔平選手を取り上げた雑誌の言葉です。今更彼の偉業を語ることもなく、世界で一番有名なスポーツ選手の1人と言っても過言ではないでしょう。

投打の二刀流で数々の偉業を成し遂げ、昨年はMVPを逃したものの、1918年のベーブ・ルースの再来と言える「2桁勝利、2桁本塁打」。常に私たちの期待を上回っています。そんな大谷選手の「ショータイム」に今年も目が離せません。

「ショータイム」ならぬ「お参りタイム」が僧侶の私にもあります。亡くなったご家族のご命日にご自宅のお仏壇でのお参りです。様々なご縁があり、一緒にお参りをしてくださる中にたくさんのお育てを頂いています。

そして、お参りにご一緒してくださる、おじいちゃん、おばあちゃんはみんなそれぞれが人生のMVPを受賞されているように思うのです。

毎月伺うご高齢なご夫婦のお宅。奥さんは目が悪くて、一人では外出できません。買い物や身の回りのことはご主人がなさっています。

12月30日にお参りに行くとお正月の用意をしてお待ちくださっていました。

今年もお世話になりました。

お寺にもお参りがなかなかできなくてすみません。

もうちょっと目が見えたらいいのになぁと思うこともありますが、でも今年もこうして生かされて、みなさんにお世話になりっぱなしで本当に感謝しかないです。

とお話しくださいます。

奥さんの横で、俺のお陰だと威張ることもなく、優しい眼差しでうんうんとうなずいて寄り添っているご主人。

夫婦二人三脚で歩んでこられたんだなと温かい気持ちに包まれました。

お餅のお供えに込められた物語

「お参りタイム」の中でも、忘れられないおばあちゃんがいます。

そのおばあちゃんは団地に1人暮らしをしていました。私はだいたい決まって11時を過ぎた辺りを見計らってお参りに行っていました。何故かというと早い時間に行くとおばあちゃんは決まって留守だからです。

11時過ぎに行きインターホンを鳴らしても、すぐ出て来れないことも分かっているので1分ぐらいは必ず待ちます。

そろそろかなぁと思ったら、玄関のドアが開き、おばあちゃんが出てきて「今、帰って来たところで買ってきたお餅をお供えしていて遅れてすみません」と毎回謝られるのです。

テーブルの上には買ってきたお餅が15個ぐらいあって、「私も手伝いますよ」と言ってお餅をお仏壇にお供えします。

実はおばあちゃんは、目がとても悪くて、手押し車で周りに気を付けながら、ゆっくりゆっくりと歩いてお餅を買いに行くので、早い時間に行っても留守なんです。暑い日も、寒い日もたとえ、雨でも雪でもご命日には必ずお餅を買いに行ってお供えをされます。

「大変な思いをしてまで何でお餅を毎回買いに行くんですか」と尋ねてみました。

実は私の前に生まれた兄さん、姉さんいたんです。

しかし、母は身体が弱くお乳が出なかったので2人は亡くなってしまったんです。この子だけは絶対に死なせないと父はお乳の代わりにお餅を形が無くなるまでクタクタに煮詰めて食べさせてくれ、忙しい中で私を育ててくれました。

母は私が10歳の時に亡くなって下の子もいたんですが、父は食事の準備から洗濯まで全部1人でして、男手一つで私たちを育ててくれました。

だから私はお餅でここまで育ったので餅子です。餅ばっかり食べていた餅子さんです。

とニコニコしながら話してくれました。

だから、おばあちゃんは月命日の時には必ずお餅をどんなにしんどくても膝、腰が痛くなっても買いに行っていたんです。おばあちゃんは自分を育ててくれたお餅をお供えして、生かされた命にお陰さまの心で感謝していることを教えてくださいました。

目も見えなくなり、膝や腰の痛みのある中、愚痴の一つも言わないおばあちゃん。

そんなおばあちゃんがニュースや新聞にでて、表彰され拍手喝さいを浴びることはないけれど、ちゃんとおばあちゃんの事を案じて下さり、包み込んでくださっているお方がおられます。そのお方は阿弥陀さまです。

阿弥陀さまという仏さまは救うものに条件はお付けになりません。おばあちゃんに「もっと頑張って生きない」とはおっしゃりません。無条件におばあちゃんを認めて下さり、あなたこそ、よう頑張ってこられましたね。おばあちゃんこそ人生のMVPです。

おばあちゃんだけではなく、阿弥陀さまは、みんなそれぞれに素晴らしいんだよ。みんなそれぞれに輝いているんだよ。周りと自分とを比べることなんてないんだよ。みんなそれぞれのMVPを持っているから心配することなんてないんだよと、認めて下さり、いつでもどこでもご一緒くださっています。

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#お寺の掲示板
#こうげそ

上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…

福岡県豊前市・上毛町・吉富町にある18のお寺でつくる浄土真宗本願寺派 (西本願寺) のグループ「上毛組」が、20年以上に渡って毎年制作している伝道ポスターです。仏教の教えや、仏さまのお心が伝わることを目指しています。

このコラムを書いたお坊さんは…

福田 浄円 (正圓寺 副住職) さん
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