ほっとけないのが仏(ほとけ)様
またコケたら、ギュッてして
先日近くの公園をブラブラと散歩していると3歳ぐらいの男の子が無邪気に走り回っていました。あまりに楽しそうに走り回っているのでなにがそんなに楽しいんだろうなーとぼんやり眺めていると、ちょっとした段差に引っかかって、顔からコケてしまいました。泣き叫ぶその額からは少し出血もあるようです。
お父さんとお母さんが大慌てで走ってきます。お父さんが子どもを抱きかかえ、お母さんが「痛いね、痛いね」と声をかけながら額の血を優しく拭いています。
そうしているうちに子どもの泣き声が小さくなったと思ったら、お父さんの抱っこを振りはらい、また走り出そうとします。
お父さん「血が出てたのに、もう痛くないの?」
子ども「ちょっと痛い、ヒリヒリする」
お父さん「そうやろう。またコケちゃうかもしれないから、走るのやめておきなさい」
子ども「大丈夫!またコケたら、ギュッてして」
子どもはそう言って、何ごともなかったように元気に走り出しました。お父さんも笑いながら「待ちなさーい」と追いかけます。
あたたかな眼差しを向けてくれる存在
その様子を見ながら、子どもはコケて痛かったのは当然だけど、思いもよらずコケてしまい驚き、不安になって泣いていたのかなとも思いました。
「痛み」よりも「不安」で泣いていたのかもしれない。お父さんにギュッと抱きしめられ、お母さんが優しく声をかけてくれたことで不安は和らいだ。自分を守ってくれる存在がいることを感じることで、少々の痛みは吹き飛んでしまう。コケて怪我した痛みは残っているけれど、それでも元気に走り出すことができる。
私たち大人も同じなのかもしれません。仕事・職場、人間関係、健康、自分の性格、生き方、子育て、夫婦仲、親族、介護、住居、経済問題……悩みのタネを挙げだすとキリがありません。そうした苦悩やストレス、不安を一つ一つ全てを解決させることは、なかなか困難です。一つ解決しても、また違った悩みがわき起こってくるのが私たちの人生。
けれども、悩みや不安を抱え、人生に右往左往し続けていても、自分のことを分かってくれる存在・あたたかな眼差しを向けてくれる存在がいるだけで、私たちは安心して生きていけるのかもしれない。
仏さまは苦悩を抱える私たちを決してひとりぼっちにはしない。思い通りにいかない出来事にイラ立ち、ストレスがパンパンで悪態をついてしまう私たちに寄り添ってくれる存在が仏さま。
掲示板の言葉
「冷えた心に仏の源泉かけ流し」
そんな仏さまのお慈悲いっぱいのあたたかなお心を、絶えず湧き出るアッツアッツの源泉 (温泉が湧き出る泉) に例えてみました。
あっ、ちなみに、仏教は心だけじゃなく身体の健康も大切にしているので、昔は医薬にも精通していたお坊さんが多かったそうです。そのため、病気や傷の治癒のために温泉に入る (湯治) ことを勧めたお坊さんもいたとされます。温泉どころとして有名な大分県別府の鉄輪 (かんなわ) 温泉も、実はお坊さんが整えたそうなんです。いつの時代であっても、温泉は身体をあたため心も癒してくれるんですね。
疲れやストレス、悩みや不安で、心・身体がしんどいときは、ゆっくり温泉でリラックスするのも最高ですが、静寂に包まれたお寺の本堂で仏さまの前にゆっくり座るのもオススメ。ようこそ、ようこそ。
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#お寺の掲示板
#こうげそ
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上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…
福岡県豊前市・上毛町・吉富町にある18のお寺でつくる浄土真宗本願寺派 (西本願寺) のグループ「上毛組」が、20年以上に渡って毎年制作している伝道ポスターです。仏教の教えや、仏さまのお心が伝わることを目指しています。
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このコラムを書いたお坊さんは…
霍野 廣由 (覚円寺 副住職) さん
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