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拝まないときも おがまれている
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祖母のお念仏
今年の春に私の祖母が亡くなりました。92歳でした。
祖母は85歳を過ぎた頃から、認知症のような症状が現れ、その後徐々に進行し、最終的に近くの特別養護老人ホームで生活することとなりました。時折、老人ホームに顔を出し祖母を訪ねましたが、孫の私を認識できなくなることが増えました。
昨年のお盆の頃、祖母が入所している施設で、その一年間で亡くなった方々の追悼法要をお勤めさせていただくご縁がありました。
祖母もお参りしてて声をかけますが、私を見ても「どこのお寺さんやろうか」という反応でした。
法要が始まります。私が仏さまに向かって手をあわせ「なまんだぶ」とお念仏を称えるよりも先に、「なんまんだぶ、なんまんだぶ……」後ろから聞き馴染みのある大きなお念仏が聞こえてきます。そう、紛れもなく祖母の声でした。
認知症を患って家族のことも分からなくなり言葉も思うように出てこなくなったけれど、口から溢れんばかりの「なんまんだぶ」のお念仏。祖母と私から同じ「なんまんだぶ」を溢れ出ていることを実感し、心温まる瞬間でした。涙を必死にこらえながら、追悼法要のお勤めをさせていただいたことでありました。
是山和上の逸話
むかし広島に是山恵覚 (これやまえかく) という和上 (わじょう) さまがおられました。
浄土真宗の学徳兼備な和上さまでした。随分前にお亡くなりになられた和上さまですが、たくさんの書物残されて、たくさんの門下生の方々をお育てになられました。
しかし和上さまも晩年は認知症にかかられ、毎日お勤めしていたお正信偈すら、「帰命無量寿如来……?」と二句目が出なくなられたそうです。
介護疲れもあったのでしょうか、坊守さまがこぼされたそうです。
「昔はあんなに素晴らしい和上さんだったのに、いまではお正信偈も忘れてしもうて……」
それを聞いた和上さまはにっこりと笑って、こう仰ったそうです。
「わしが忘れても、仏さまが忘れてくださらんけえ、大丈夫じゃのう」
坊守さまに向かって、「私はあんたの顔も忘れていくよ。いや、この口から、なまんだぶつのお念仏も、もう出てこなくなってしまうかもしれん。でもね、それは別の問題。私は何もかも忘れて、このいのちを終えていくけれどね、私が何を忘れても、私を忘れてくださらん仏さまがいまここにいらっしゃるじゃないか。なまんだぶつの仏さまが、いまここにおるぞ。私のお浄土参りに、何の危ぶみもありゃせんよ」と、お答えになられたそうであります。
仏さまは、いのちの長い短い、死に方の良し悪しを一切問わない。用意周到、準備万端整えた。工夫も気配りも十分に。あなたの生き方に、何の要求もしない。あなたの身の振る舞いに、何の注文もつけない。今後あなたがどのような生き方になっても、どのようないのちの終わり方になっても、決して見捨てたりはしない。いまこの我がいのちとご一緒に、歩みを運んでくださるお方が阿弥陀さまという仏さま。何があっても離さんぞ、何があっても落とさんぞ、お前のいのちを間違わさんぞと、お浄土に一歩一歩、一緒に足をお運びくださる、仏さまであります。
苦難の多い人生ですが、この仏さまとご一緒なればこそ、その苦難を引き受けて生き抜いて行ける道が恵まれるように味あわさせていただくことです。
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上毛組 (こうげそ) お寺の掲示板とは…
福岡県豊前市・上毛町・吉富町にある18のお寺でつくる浄土真宗本願寺派 (西本願寺) のグループ「上毛組」が、20年以上に渡って毎年制作している伝道ポスターです。仏教の教えや、仏さまのお心が伝わることを目指しています。
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このコラムを書いたお坊さんは…
霍野 廣由 (覚円寺 副住職) さん
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