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法制審議会家族法制部会第8回議事録3~子ども手続代理人ヒアリング・池田委員

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子ども手続き代理人の活用例の紹介になっている

それでは,続いて,部会資料7に基づく意見交換に移りたいと思います。前回会議では,部会資料7の第1,第2に関する御意見を頂いている途中で時間切れとなってしまいました。そこで,本日は引き続きまして,部会資料7の第1,第2の部分,つまり,子の養育をめぐる問題についての子の意見の尊重に関する論点につきまして,更に御議論を頂きたいと思っております。御発言のある方は,挙手をお願いします。

○池田委員

資料7に関してなのですが,前回私の方から子どもの手続代理人の活動例のヒアリングをしてはどうかという御提案をしましたが,議事進行との兼ね合いがあるということでしたので,私の方から少し御紹介させていただいてよろしいでしょうか。

○大村部会長 よろしくお願いします。

○池田委員

 お時間を頂きまして,ありがとうございます。
 それでは,子どもの手続代理人の活動を具体的ケースを用いて簡潔に御紹介したいと思います。子どもの意思を聴き取り尊重するという実践の一例をお示しすることで,資料7の課題等の検討をする際の御参考になればと思っております。

 なお,資料は三つ配布させていただいております。一つは,法律雑誌の論文です。これは,子どもの手続代理人の活用が非常に盛んな金沢家裁での運用状況等を裁判官がお書きになったものです。具体的事例の紹介もあります。それから,前回会議で子どもの年齢の線引きという議論もありましたけれども,この論文では,上の兄弟に代理人が付いたという関係で,下の6歳や7歳の子どもにも代理人が選任されたという事例も紹介されています。もう一つは,「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」というものです。これは,日弁連が最高裁と約10か月ほどにわたって協議をした結果をまとめたものです。これは,手続代理人の役割ですとか,その制度が有用な事例を挙げており,全国の弁護士会と家庭裁判所が持って運用の方針にしているというような書類でございます。あと1点は,日弁連の市民向けのリーフレットです。

 これから三つのケースを御紹介いたしますが,これらは守秘義務の関係で,私が見聞きした幾つかのケースをミックスしたり事実を加工するなどして,事案が特定できないようにしています。

 まず,一つ目のケースですが,離婚調停の事例です。子どもは15歳です。父と同居していて,父母ともに親権を求めて争っているという事例です。子ども本人は父のところで暮らすことを希望していました。子どもの年齢を考えますと通常,もう15歳ですから,何の問題もなくその意向に従って父が親権者とされるところでした。ただ,このケースでは子どもと父との関係が非常に悪かったといいます。細かなことでしばしば衝突していて,父としてもやや監護意欲を維持しにくい状況になっているかなという状況だったそうです。調停手続においても,そうした状況を見て,子どもの意思とはいっても父を親権者とすることで本当にいいのかという問題意識も共有されつつあったようです。また,期日間に父子間で頻発するトラブルを子どもの立場に立って調整してくれる存在というのも求められていました。そういった背景の下で,子どもの手続代理人が選任されました。
 代理人としましては,子どもの意思とその客観的利益にそごがあるかもしれないということはよく理解をしていました。ただ,子どもを説得するような関わり方をしますと絶対に子どもの信頼を得られないと考えて,説得はしまいと心に決めていたといいます。ただ,いずれ必ず物事が落ち着くべきところに落ち着くきっかけとなるような機会が訪れるのではないかとも思っていたそうです。子どもとの打合せでは,子どもがなぜ父との生活を望んでいるのか,父に対する思いや母に対する思いを聴き取りました。また,父子間の衝突は繰り返されていましたので,その調整を行う過程においても,子どもの言葉からその意思を感じ取るということもありました。そして,調停期日にはそれを報告しています。またあわせて,母の下で生活することに消極的な具体的な理由も聴いて,母側にそれが対応可能なものなのかどうかということも検討してもらうという,来たるべき機会の,言わば地ならしとして,そういったことを行っていました。そうするうち,絵に描いたようにその機会が訪れたといいます。ある夜,子どもから,父とのトラブルがあって家を追い出されたが,どうすればよいかという相談の電話が掛かってきました。代理人はここで初めて,「お母さんのところに行ったら?」と一声を掛けたそうです。すると,子どもはすんなり,分かりましたと言って,その日から母の下で暮らすようになりました。自分の意見が丁寧に聴かれて尊重されるという過程を経たからこそ,子どもにとっても納得のいく結論が得られたのではないかと思います。

 二つ目の事例は,別居中の子の監護者指定,子の引渡しの審判の事例です。子どもは9歳。父が子どもを連れて別居をしたために,母が監護者指定と子の引渡しの審判を申し立てています。ところが,そのさなかに子どもが父宅を家出して,自分で母宅に行ってしまったのです。そこで,今度は父が母に対して監護者指定と子の引渡し審判を申し立てるということで,非常に葛藤性が高い事案で,子どもとしては父がいつ連れ戻しに来るのではないかと恐れて,通学もできないという状況でした。そこで,緊急に子どもの立場から双方の調整を行う存在というのが求められて,子どもの手続代理人が選任されました。
 代理人が子どもから聴取したのは,父に対する苛烈な非難の言葉の山でした。代理人は,それをそのままお父さんに伝えることをちゅうちょしたそうですけれども,そして,やや控えめな表現で報告するということも検討したのですが,子ども自身は,自分はそんなに優しい言い方をしていない,そのまま伝えてほしいと強く希望しました。そこで,代理人はそれを子どもの言葉としてそのまま報告をしました。しかし,他方で子どもの言動全体を見ますと,必ずしも父子関係が回復不能ではないような印象も持ったといいます。そのため,母と暮らしたいという子どもの強い意向に寄り添いつつも,何とか父と子どもとの関係をつなぐことできないかと考えました。その一つとして,父からの面会の求めがありましたので,子どもが感じている不満を一度,直接父にぶつけてみようということで,そのような機会を持つことにしました。子どもはその席でお父さんに対して,涙ながらに不満のありったけをぶつけました。ただ,その内容は,代理人が従前聞いていた内容とは少し違っていたものでした。お父さんがお母さんの悪口を言ったことへの不満ですとか,別居後の生活上の不満など,言わば年齢相応の実態を伴うような不満の数々でした。父はそれを全て受け止めて,謝ってくれました。子どももほっとしたのでしょうか,最後には二人で談笑する状況だったといいます。手続としては,父は母の監護を認める,母は父との充実した面会を認めるという内容の調停が成立しています。子どもの意思を尊重しつつも,その利益にかなうソフトランディングが実現したといえます。
 最後,三つ目のケースですが,離婚調停の事例です。子どもは18歳です。実母と養父が子どもを養育していましたが,実母が養父に対して離婚調停を申し立てました。子どもとしても,その現実は受け入れなければいけないのかなとは考えていたのですけれども,養父に愛着もありましたし,実母と養父の離婚を本心では望んでいませんでした。また,養父との離縁も望んでいませんでした。それから,それに先立つ実母の実父との離婚がまずあって,養父との再婚があって,別居という経過をたどっているのですが,それらに振り回されたということの不満もあったのですね。今の調停の手続も正確に知りたいのに,知らせてもらえないという不満もあって,そうした状況で弁護士に相談をしました。その弁護士が手続代理人に就任しています。
 子どもは代理人と相談をして,自分で調停に行きたいと,そして自分の経験したことを話したい,離縁を望まないということについても意見を述べたいと希望しました。代理人は裁判所にそうした機会を求めたところ,裁判所は調停期日一期日を丸々取って,しかも,裁判官自身もその意見を聴きたいと言ってくれました。そこで,代理人は当日に向けて子どもと一緒に意見書を作成しました。そして,当日,実母と養父,各々の代理人,裁判官を含む調停委員会全員がそろう中で,子どもは代理人の助けを得て自分の気持ちを話しました。緊張して,口頭ではなかなか十分に伝え切れなかったそうですけれども,この意見書作りを通じて気持ちの整理ができたということは大きかったといいます。実母と養父は,子どもの意見を受け止めて応答して,一定程度,調停の内容に反映してくれました。それだけでなく,母子が互いの思いを知り,以前よりも母子関係が良くなったそうです。このケースは一つ目のケースと同じく,意外と見過ごされがちな年長児の意見表明の保障という点に加えまして,ステップファミリーにおける子どもの意思という点,それから,裁判官が直接子どもの意見を聴くという手続の在り方という点でも参考になるのではないかと思います。
 私からは以上です。時間を頂きましてありがとうございました。

○大村部会長 ありがとうございました。手続代理人につきまして資料を御提供いただいた上で,幾つかの事例について詳しい御紹介を頂きました。どうもありがとうございます。


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