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法制審議会家族法制部会第7回議事録12~原田委員・石綿幹事・窪田委員・沖野委員

ぷちバズり?


弁護士業界の変化を感じつつ、議事録を読んでいく

○原田委員 

弁護士の原田です。
 池田委員とちょっと重なるかもしれませんが,せっかく9ページのところで弁護士等の法律家の関与ということを書いていただいたので,私どもの方でも,本当にできるのかということも含めて,いろいろ議論になっております。その中で,前々回,諸外国の例の御紹介を頂いたときに,口頭での御報告はなかったんですけれども,石綿委員の方でフランスの制度を御紹介いただきました。その中で,フランスでも合意離婚という制度があって,その場合は,それぞれの当事者に弁護士が付いて,そして合意書面を作るということと,未成年の子どもがいる場合に,未成年の子どもはそれについて意見を言う権利があり,意見を裁判所に言いたいということを言わなかった場合だけ,合意離婚ができて,そうではない場合は全部裁判所に持っていかなければいけないという制度になっているということと,それから,年齢について一定の制限があるような説明がありましたので,もしそのような制度について,弁護士他の法律家が実際どのように関与しているのかとか,その場合の費用は誰が負担しているのかという辺りのお話が聞ければなと思いました。
 この場合,先ほど事務当局の方からの御説明で,公証人というお話もありましたが,読ませていただいた資料の中で見たら,公証人が関与するのは財産分与に関するものとあるような気がいたしましたので,子どもの意思表明との関係で,実際に弁護士なり法律家はどのように関与しているかということについて,お話しいただければと思いましたがいかがでしょうか。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事が出して下さったフランス法の資料について御質問が出たかと思いますけれども,石綿幹事,口頭で答えた方がよければ,今口頭で簡単に答えていただいても結構ですし,あるいは次回以降にメモのようなものを出していただくということでも結構ですが,可能な範囲で御対応を頂ければと思いますが,どっちがよろしいですか。

○石綿幹事

 すみません。答えられる範囲で口頭でということなんですが,弁護士がどのように関与しているかという実際のところまで,私の方ではまだ調査が及んでおりませんで,当事者双方に付くようにしているのだというところまでしか調査ができておりません。必要であれば,法務省と相談しながら,より実態を調査していくということになるかと思います。
 費用の方も,明確には分かりませんが,必ずそれを全て国費の負担だとはおらず,一定程度収入等に応じて当事者が負担をしているのではないかと,推測しています。少なくとも全額国費負担だという文献を目にしておりません。
○大村部会長 ありがとうございます。今のようなことでお答えを頂いたということにさせていただければと思います。
 それから,先ほど池田委員から,また関連の資料を次回お出しいただくという話ありましたけれども,それはまた別途,次回までにお願いいたします。
 引き続き,窪田委員,沖野委員,それから赤石委員という順番でお願いいたします。

○窪田委員 

窪田です。
 2点発言させていただきたいと思います。
 一つは,全体の枠組みに関してなんですが,私自身も,身分関係といいますか,親子という形でのつながりある当事者としての子どもの気持ちや意見というのを,できるだけ酌み取ってあげる方向でというのは,十分理解できます。ただ,私が今言ったこと自体の中にも含まれているのですが,多分10歳の子どもとか8歳の子どもについては,その意見を聴取するというようなものではなくて,考えを酌み取ってあげるというか,気持ちを酌み取ってあげるというような言い方の方が適当だろうと思います。それに対して,多分15歳の子どもだったら,意見というのも言うことができると思います。したがって,年齢を分けて区別するのか,年齢を分けずに考えるのかといっても,結局違わざるを得ないのだろうなと思っております。
 ただ,そのときに注意したいなと思いますのは,手続法の方に合わせるとしても,15歳以上,家事事件手続法において必要的聴取とはなっていますが,あれは,飽くまで必要的に聴取するということであって,その子どもの意思に従って判断しなければいけないという枠組みではないのだろうと思います。したがって,そんな言い方をすると反発を買うかもしれませんが,子どもの意見を聞いてあげるとしても,当然それに全部従わなければいけないという趣旨のものではないということを確認した上で,進めていく必要があるのだろうと思います。これが第1点です。
 第2点は,今の点にも関わり,ちょっと細かい問題になるのですが,11ページの(2)イの③のところに書かれているものですが,親が子に関してした決定が,合理的な理由がないにも関わらず子の意見を尊重したものでない場合には,例えば,損害賠償請求が認められるんだという方向で検討してはどうかということがあって,そして,その(注3),次のページには,現行法下でも,親権者の判断が不合理に子の意向を全く無視するようなものである場合には,子の人格権を侵害するものである場合には損害賠償の理由となり得るんだということが書かれております。私自身は,この(注)に書かれていることが本当なのかなという感じがしております。不法行為法の規定というのは,何でもできるというのであれば該当するのかもしれませんが,ここまで一般的な形で認めているわけではないのだろうと思います。また,仮に認められるとしても,親の決定が非常に不合理なものである,人格を傷付けるような意味で不合理なものである。例えば,子どもに破廉恥な名前を付ける,こうしたものへの損害賠償は認められるとは思うのですが,これは,子どもの意思に反したからではなくて,やはり直接に人格権を侵害しているからなのだろうと思います。
 ここの部分については,検討してはどうかということですから,検討するということでいいのかもしれませんが,この種の問題に対して,親子間の損害賠償請求という形で問題を組み込んでいく,そういう形で処理をしていくという方向自体に,非常に何か不安を覚えます。法は家庭に入らずというようなことを言うつもりは全くなくて,暴力があったような場合には,当然不法行為法は使えると思うのですが,そうではなくて,親の育て方が悪いからという形での損害賠償請求とか,俺の意思に反したからという損害賠償請求は,やはりそう簡単に持ち込んでほしくないなというのが意見です。
○大村部会長 ありがとうございます。2点ありましたけれども,基本的には,子どもの意思というものについて,慎重な取扱いが必要なのではないかという方向の御意見として伺いました。
 1点目は,年齢に応じて意見を聞く必要があるのだけれども,そのことと,その意見に従うかどうかということを区別して議論する必要があるということ,それから,2点目は,11ページに損害賠償の話が出てきておりますけれども,ここは何段階かに分けておっしゃったかと思いますが,子の人格権を侵害するということはあり得るとして,子の意見を尊重していないということで直ちにそうなるのかというところについて疑義があるということと,親子間でのこのような問題について規定を置いて対応するということが果たしていいことなのかどうかということも慎重に考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。
 沖野委員,どうぞ。その後に赤石委員,そして落合委員という順番でお願いします。

○沖野委員

 ありがとうございます。
 重複するのですけれども,3点申し上げたいと思います。
 まず,大枠というか,基本的な方向としましては,資料に出されたような形で検討を進めていくのがいいのではないかと思っております。子の養育をめぐる私法上の制度というのは,子をどう育てていくかという点で,子が主役の制度なんだろうと思います。そういう中で,一番の主役である子どもの思いとか意向とか意見とか,そういうものが尊重されるという考え方が,やはり正面に出されるべきものだろうと思います。問題は,そういう意思という表現でまとめますと,その意思の尊重というものが,どういうような形で尊重されていくのかということについては,意思は尊重されるべきでとどめるのではなくて,もう少し段階を分けて,状況に応じて検討していくべきだという在り方は,望ましいものではないかと思います。少なくとも,検討をする手順としては,望ましいのではないかと考えております。
 そうしたときに,2段階に分けられた1段目は,子の養育に様々な人が関わる,特に父母が関わる,祖父母ということも出てくるかもしれませんけれども,その関わる者の在り方をどうするかということについて,子どもの意見なりを,ある程度というか酌み取っていくという話であるのに対して,個々の問題について,何をしたいか,どうしたいかというのは,個別の正に決定の問題ということで,かなり性質が違うように思われますし,それから,どの段階でそれを決めるかとか,どういう形で変化が生じるかというのも変わってきますので,そこを一応分けるというのは,意味のあることだろうと思います。
 その上でですけれども,どのような形で意思を尊重するのかということについては,状況の変化にも応じてということですが,子どもの発達段階と年齢というのが一つの考慮として示されています。恐らく,多様な現実ということを考えれば,発達段階だけなんでしょうけれども,それを正確に酌み取るというのはやはり難しいので,年齢というのが一つのカテゴリーの在り方ということになってくるのではないかと思います。ここには,現実の多様性,子どもの成長等をめぐる,あるいは意思を表明できる,あるいは意見を形成できるといったことについての現実の多様性と,一方で法のカテゴリー化というものがあって,その間でどういう形を取っていくのかという問題があるように思われます。
 民法の問題で見ますと,民法自体は,一つはやはり年齢で切っており,18歳が成人ですし,15歳というのは養子縁組ですとか遺言能力とかで,やはり特別の年齢として地位を与えられていますので,15歳で一つの区切りとするというのは,現行法に合った制度ではないかと思われます。一方で,意思能力ですとか,ちょっと責任能力を入れていいのかどうかという問題ありますけれども,必ずしも年齢では区別されないんだけれども,法的に意味のある発達段階というものがやはり考えられていますので,そういうものをどう見るか,それを一律に,ある程度のカテゴリーで,未成年者の中の前期未成年者,後期未成年者とか,そこを更に分けていくとか,いろいろ一定のカテゴリーというのを考えることができ,またその際ある程度年齢の区切りというのは明確性を持ちますので,それを指針とするということはあり得るのではないかと思います。
 先ほど石綿幹事から,家裁でどうされているのかというような点についての情報提供のお願いがありましたが,そういうところを参考にさせていただけるようだったら,非常に有意義ではないかと思っているところです。それが,2点目のカテゴリー化と年齢の問題ということですが,なお,意思能力などについても,障害者の権利条約などの話もありますので,たとえ意思能力に不十分なところがあるということであったとしても,そのかぎ括弧付きの意思の尊重の重要性というのは,やはり民法全体に共通するものだろうと思っております。
 三つ目が,子の利益と意思との関係で,10ページの(注3)などにあったかと思います。また,利益の考慮要素の一つとして意思を位置付けるのか,特定の事項については,恐らく特定の発達段階,特定の年齢を超えたという前提の下で,端的に子の意思によるとするのかという問題があり,これをどう考えるかというのも,そこは二面に分けて考える必要があるのではないかと思っております。すなわち,ルールのような形で,こういった事項については,子どもが一定年齢以上であるときには,かつ,特別な除外事由がない限り,子どもの意思を第一として決定するとか,そういうルールを置くということも考えられるわけですが,そういうルール化をするのか,それとも,それはそういうような運用も考えるということで,基本的には子の利益の観点から意思を尊重していく,考慮していくんだけれども,在り方は様々で,具体的な手続などを用意していくという,両方のやり方があるように思います。
 そうしたときに,子どもの意思を第一としてというようなルールを置くことについては,実際,子の年齢とか発達段階に応じてというのは,恐らく子どもの養育に関わっていく子ども以外の主体ですとか,それから子ども本人自体の役割がどんどん変化していくんだろうと思います。少なくとも,法の建前は,18歳成人になれば自分一人で決定ができると,法律行為も自由にできるということになりますので,その段階に至れば,正に自分の意思でということになるわけで,それが現実には全く意思能力のないような状態から,その段階まで一気に一足飛びにはいきませんから,だんだんと親の役割も,親が決めるというのと,親が代わって決めるというのもあれば,最後は助言者のような地位になっていくんだろうと思います。しかし,それを法制度として正面からそういうものと位置付けるのか,飽くまで形としては,子どもの意思はその状況に応じて最大限尊重されるんだけれども,それは子どもの利益のためにと。判断権者は,少なくとも18歳,成人になるまでは別の主体であるというふうな形にすることは,十分考えられるんだろうと思います。
 長くなって恐縮なんですけれども,ちょっと気になっておりますのは,例えば,子どもの意思を第一としてというようなルールなり運用指針なりを置くときに,誰に向けたガイダンスなのかということで,決定権者というか,それである,第一義的な決定権者というんでしょうか,父母であったり両親でしょうか,に対して,その判断のためにガイダンスとして置くというところもあるでしょうし,例えば,協議によるというようなときに,審判者としての第三者に対して,それは指針として置くというようなこともありますので,一体どういうところを狙いとして置くのかということも,考えていかなければいけないのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。3点ということで,まず1点目は,全体としての議論の仕方について,こういう方向でよいという御意見を頂いたものと思います。2点目,3点目も,広い意味では議論の仕方に関わる御指摘だったかと思いますが,法概念の作りに関わる御指摘があったものと思います。2点目は,年齢に応じてという場合に,その年齢というものをどのように区切るのかということで,民法には複数の考え方があるだろう。一定の線を明確に示す,15歳と示すというやり方もあるし,そうでないやり方もあるというので,どうするのかということを考える必要があるだろう。3点目,子の利益と子の意思の関係についてですが,子の意思というものを考慮するときに,これをルール化するのか,それとも運用の中で捉えていくのか,さらに,ルール化するという場合に,そのルールは誰に対して向けられたルールであると考えるのかといったことが問題になるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。

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