墓まで完璧に秘密を持っていった母

母が亡くなって二ヶ月も過ぎました。

ようやく銀行などの手続きも終わってやれやれと思った頃、ある銀行から連絡がありました。

母名義の口座がもうひとつあるというのです。

かなりまとまった金額でした。

父はもちろん家族誰も知りませんでしたし、母も何も言わなかったし、家に通帳もありませんでした。

「オレに黙って貯めてた金だな」と父は拗ねていましたが、私はもしかしたら・・・とある仮説を立てました。

妄想とでもいいますか(笑)


母は勤めていたとはいえ、学生時代の私や弟に仕送りをして、家にもお金を入れながらこの金額は貯金できただろうか?

もしかしたら誰かに口座の名義を貸したのではないか?

お金を預かったのかも?

もしかしたら貰ってたりして?

そして母にお金を預けた人は、母より先に亡くなってしまったのではないか?

明らかになるといろいろ面倒なので母も知らん顔してそのままにして逝ってしまったとか?


そんな妄想をしながらお茶を入れていたんです。

急須は母が愛用していたもので、蓋のつまみの部分がニワトリの形をしているんです。

そしたら茶碗が急須にあたって蓋のニワトリがスパンと取れてしまいました。

割れたというよりニワトリさんだけがキレイに分離した感じ。

これは! 絶対母が「ビンゴ!」と言っている!と確信しました(笑)


父は「墓に行ってお母さんにどうして黙ってたのか聞いてこい」と言っていますが、聞いたって母は「知らな〜い」「教えな〜い」とはぐらかしそうです。


母は心許せる、そして口の硬い人でした。

いろんな人からいろんな相談を受けていたので多くの秘密を知っていたと思いますが、決して他の人に話すことなく、さらには自分の秘密も明らかにすることなく、文字通り墓場まで持って行きました。


でも「なんか秘密を持っているな」というのは娘の勘で気づいていました。

それがなんなのかはわかりませんでしたが、この誰も知らないお金に関わることなのかもしれません。

完全に隠しとおした母の勝ち。

やはり不思議な、そして魅力的な人でした。

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