toron*『メテオール 01』を読んで

toron*さんは書肆侃侃房より新鋭短歌シリーズ60 『イマジナシオン』を刊行している歌人。そのtoron*さんの個人誌『メテオール 01』を文学フリマ東京35で購入した。この本は「短歌+日記」の形式で書かれている。わたしはもともと好きな作家さんなどのエッセイや日記を読むのが好きなので、読む前から楽しかったのだけれど読んだらめちゃくちゃ楽しかった。短歌はweb上の短歌投稿サイト「うたの日」の投稿歌や各種新聞歌壇の掲載歌の他、なんと未発表作も収載されている。読んだことのある短歌をもう一度かみしめつつ、toron*さんの新作(数え間違えていなければ二十三首)も読めてしまうのだ。わくわくしたまま読了したので、感想を綴りたいと思う。

※一部ネタバレを含みます

2022/9/1~2022/10/31のtoron*さんの日記が綴られている。読む前は普段からつけている日記を本にしたのかと思ったのだが、もともと『メテオール』を刊行するつもりで日記を書かれていることが分かった。
やはり短歌の話が多いが、お友達と出かけたり読んだ本やごはんのことがこと細かに書かれていて、toron*さんの生活を垣間見られて楽しい。
出てくる歌人の中には名前を知っている方もたくさんいらっしゃってテンションが上がった。
「ああ、あのときTwitterでつぶやかれていたときのはなしかな」と見覚えのあるエピソードもあって、日ごろタイムラインで見ていたことが膨らんでいるのはなんだか不思議な感覚だった。

二ヶ月の間にもいろいろなところにお出かけされている。オオサンショウウオセンター気になる……。塔のシンポジウムや天体観測のエピソードもよかった。
本の名前がたくさん出てくるところもなんともよき。『コレクション日本歌人選 塚本邦雄』を買ってみた。瀬戸夏子『白手紙紀行』も気になる。わたしは江國香織では『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』が特に好きだったかな。(彼女の本は若かりし頃たくさん読んだが、いまとなっては融解して混ざり合ってしまっている気がする。『間宮兄弟』は異色だけど原作も映画もとても好きだった)
普段食べていらっしゃるものがわたしはあまりまみえたことのないものが多く、興味深かった。すごく健康に良さそう。「きゅうりのじゃばら漬けとは……?」と思っていたら、なんと親切にも巻末にレシピ(文章)が記載されていた。楽しい。じゃばらに切るの、難しそうだなぁ。
「toron*さんはいろんな方から食べ物を献上されてらっしゃるな。人徳なんだろうなぁ」と思っていた矢先に占いの話が出てきて「おお……!」となった。
あまり心情を深くは書かれておらず、生活をなぞる合間にぽろりと本音を混ぜていらっしゃるような印象だったけれど、たまに深みの一端が見えてどきりとする。あと読んでいると毎日あまり睡眠時間を取れていらっしゃらないんじゃないだろうかと勝手に心配してしまった。

簡単に感想を書かせていただいたが、toron*さんをご存じの方はめちゃくちゃ楽しめる本なのでまだお手元にない方はぜひ買ってみてください。2022/11/23現在、BOOTHから購入できるそうです。
続編がいまから楽しみすぎます。(あとがきによると、「五冊刊行できたらいいな」と思っていらっしゃるとのこと。わくわくすぎます)

スヤリさんという方が装画をされている表紙もとても素敵です。日記本だけあって日常の一コマのような印象。よく見るとめちゃくちゃ細かくいろいろ描かれている!

最後に掲載されている短歌の中から特に好きな三首を引いて締めたいと思います。

千人のジャンヌ・ダルクが立っていたようなひまわり畑に晩夏/toron*
都市ガスのちいさな炎を飼い慣らしわたしはわたしの灯台守に/同
歳月にドリップされて琥珀色したたる太宰の文庫ならべり/同

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