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強迫性障害かと思ったらADHDだったからCAARSとWAIS-IVを受けてきた


はじまり

2024年1月某日。わたしは困っていた。

「物事の繰り返し動作」……特に同じ文章を何度も何度も読み返すという癖が悪化し、仕事にまで影響を及ぼすようになってきた。
具体的に言うと、人とやりとりしたメッセージや、本の中で違和感を感じた一節。それを納得いくまで何十回でも読み返さないと気が済まないという症状だ。

例えば友人と何気ないLINEのやりとりをしたとする。それ自体は本当になんでもないものだ。

「今度ご飯でも行こうよ」
「いいよ~今週の土曜なら空いてるよ」
「土曜はちょっと厳しい!日曜はどう?」
「いいよ!新宿で18時に待ち合わせしよう」

一例としてかなり適当なつまらないやり取りを書いてみた。本当にこのくらいの、良くも悪くも記憶に残らないやりとりなのだが、一度脳のどこかに引っかかってしまうと、冗談ではなく50回ぐらい読み返すことがある。しかも、やめようと思ってもやめられない。どう考えても異常だ。

本でもそれは同様だ。
心に残った一節を何度も読み返すのはそんなにおかしいことではないと思う。ただ私の場合は少し違う。
心に残ってなくても引っかかったら読み直し。なんならその前の文章から丸々読み直しだ。わたしは読書スピードが遅いのだが、たぶん5割ぐらいはこれが原因だ。
文章に違和感があったら、自分で適切だと思える文章構成に直して読み直し。でもそれも脳内で噛んだらやり直しだ(「脳内で噛む」って何だよ、と思われるかもしれないが、わたしは本当に「脳内で噛む」のだ。みんなはどう? 脳内で嚙んでる?)。

で、そういった症状はかなり前からあって、正直言っていつから発症したのか思い出せない。
少なくとも高校の時にはすでにあった。そして、社会人1年目にひどくなり精神科受診を検討したが、そのときは精神科に行くということ自体が面倒だったし、お金もなかったので放置していた。
そうしたら、まあ治ったわけではないんだけど、気にならない程度まで治まっていった。

で、それが悪化したのが今年の1月。社会人5年目の冬である。
この時はひどかった。
1/25時点で、友人とのメッセージアプリに、
「昨日あったことを思い返すのを15分ぐらい延々とやってて仕事進んでねえ!っていうのを今日だけで3回ぐらいやってる」という旨の投稿をしている。
ここではわかりやすいように「昨日あったこと」と言っているが、実際に繰り返し読むのをやめられなかったのは仕事上のやりとりだ。先方に少し長いメッセージを送った後永遠に読み返してしまい、仕事が全然進んでなかった。

別にただ単に仕事がだるかったり、ぼけっとしていて仕事が進まないのはいい(良くはない)。
でも、自分でもやめたいと思っている繰り返し行動によって仕事が阻害されているのは、流石におかしいのではないか。
そこで私が疑ったのが、「強迫性障害」である。
「強迫性障害」は、ある考えが自分の意思に反して何度も頭に浮かび、払いのけることができなくなる強迫観念と、ある行為をしないと気がすまなくなる強迫行為があらわれ、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活に支障をきたす病気である。
医療法人東横会 心療内科 精神科 たわらクリニックのHPより抜粋)

代表的な症状としては以下のようなものがある。
・不潔恐怖(何度も必要以上に手を洗ってしまう)
・確認行為(何度もガス栓、戸締りを確認してしまう)
・加害恐怖(実際にそうではないとわかっているにもかかわらず、他者に危害を与えてしまったのではないかという恐怖にとらわれ、警察や周囲の人に相談する)

まあほかにもいくつかあるのだが、どれも代表的な症状はわたしには当てはまらない。
それでもわたしが強迫性障害を疑ったのは、「自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうこと」という症状説明そのものが、わたしの症状と一致しているのではないかと考えたからだ。

精神科医への相談

で、2月半ば、わたしは心療内科で主治医に相談をすることになる。
書き忘れていたが、わたしはてんかん持ちで、心療内科に定期通院している。まあてんかんについては特に詳しく書くつもりはないので各自調べてください。
てんかんが心療内科や精神科の管轄であることに驚いた方ももしかしたらいるかもしれないが、わたしとしてもそのへんはよくわかっていない。わかるのは今の主治医との相性がそこそこ良いことだけだ。今の病院にはもう2年弱通っている。

かくかくしかじか、主治医に経緯を説明した。私の話を聞き終わった主治医は一言、
「それは強迫性障害じゃなくて脳の多動、つまりADHDの症状ではないでしょうか」
ええ~~~~と思った。その可能性もあったんだ。ていうか強迫性障害の代表的な症状が全て当てはまらない時点でその可能性の方が高いか。そもそもわたし、ADHDの診断を中2の時に受けてるし。

「たしかに、過去にADHDの診断も出てますからその可能性が高いですね」
と私が返すと、主治医は「え? そうでしたっけ?」とぽかんとしていた。いや忘れるなよ。初診時の問診表に書いたろ。でもまあ、てんかんでしか診察を受けてないから普通に忘れてたんだろう。

「中2の時に小児科で検査を受けました。軽度ADHDの診断は受けましたが、その後薬物療法を含め、ADHDに対しては一切何も行っていません」
と、正直に現状を伝えると、「もう一度検査しましょう」と言われた。
私は正直嬉しかった。なんにしても、自分の得意不得意含めた性質がわかるのは嬉しいものだからだ。あと普通にテストが楽しい。

CAARS(成人ADHD検査)

検査は主に2つに分かれている。
精神科医によって行われるCAARS(カーズ・成人ADHD検査)と、臨床心理士によって行われるWAIS-IV(ウェイスフォー・16歳以上知能検査)である。

CAARSの検査は非常に簡単であった。
その日のうちに検査用紙を受け取り、家に帰って心理テストみたいな文言に答えていくだけ。
たとえば、
・忘れっぽい
・周囲の物事に、注意がそらされてしまう
・他の人が話しているのを聞いているのが難しい
などなど、いくつもの項目に4段階ぐらいで答えていく。気分はMBTI診断みたいな感じだった。
そもそもすべて自己判断になるのでどの程度アテになるのかは正直よくわからないところだったが、とにかく記入して次の日に病院に郵送。2週間後ぐらいに結果が出た。

で、その結果がこう。

ちょっと写真の撮り方が雑で見づらいけども、真ん中あたりに引いてある線。これが基準値らしい。これを超えていたらADHD傾向があることになる。

わたしの場合、5/8項目が基準値を超えているため、不注意優位の軽度ADHDという結果が出た。まあ予想通りで、中2の時とほぼ変わらずの結果。
ちなみにASRSという似たような検査も受けていて、そちらでもギリギリ陽性という結果が出たらしい。これらの検査では同時にASDの判断もできるらしいのだが、ASD的特徴は全くないと伝えられた。

さて、この図で明らかに浮いているのがDの項目である。ひとつだけ下がりすぎている。
あまりにも気になったので詳しく聞いたところ、これは「自己概念の問題」、要は自信や自尊心の項目らしい。これが高ければ高いほど、自尊心が低いというわけだ。

……え?
ていうことは、わたしって自分にめちゃくちゃ自信があるってこと?
ヤッバ……。

確かに思い返してみると、わたしの自尊心はなんか幼少期からずっと高い。
落ち込むときも自分なんてダメ人間だ!と思うことも人並みにはあったが、本気で自分は価値のない人間だと思っていたことは一度もない。
何か知らんけど、根拠のない自信、めっちゃある。

とはいえ、こうして数値として示されるとちょっと引いてしまうな。
ここまで自尊心だけ高い奴いるんだ。怖。

まあ、そうして無事に再度ADHDの診断が下りたわけなので、薬物療法をやっていくことになった。
わたしに処方されたのはインチュニブという薬だ。

インチュニブ!?
聞いたこともないうえに、名前キモくない!?(※普通によく処方されてる薬です。わたしが知らなかっただけです)
ADHDの薬と言えばコンサータかストラテラが相場だと思っていたので、突然のインチュニブには衝撃を隠せなかった。あとなんか…「チュニ」の部分とかキモいし。

わたしにこれが処方されたのはいくつか理由があるが、まずひとつにはインチュニブが「多動・衝動性」を抑える薬であるということが挙げられる。
そもそもわたしは脳の多動と診断されているので(不注意も全然あるが)、繰り返し行動を抑えるには脳の「多動」的な部分を落ち着かせていく必要性がある。
それと二つ目の理由として、コンサータもストラテラも抗てんかん薬との相性がそこそこ悪いということがある。抗てんかん薬を飲むのをやめたら途端にぶっ倒れてバッドエンドなので、それは避けたい。そうなるとインチュニブが一番理にかなっているというわけだ。
もちろんインチュニブにもデメリットはあるだろうが、現状選択肢としては最前であると医師によって判断された。

WAIS-IV(16歳以上知能検査)

さて。
インチュニブを飲み始めて2週間。結果を実感するよりも先に次のテストの時期がやってきた。
16歳以上知能検査、通称WAIS-IVである。
まあものすごく簡単に言えばIQテストだ。 IQもいくつかの項目に分かれており、総合的IQを見ることも可能だ。
ちなみに気になる診察料だが、医療機関で受けると安いが、自費で受けようとすると結構かかる。わたしは保険適用2600円で受けたが、自費だと他の発達検査込みで3万かかるらしい。病院によるだろうけどね。

実はこのテスト、似たようなものを中2の時に受けている。というか、それによってADHD判断を下された。
ただし、当時のわたしは13歳だったため、児童用のWISC、それもIVではなくⅢを受けているはずだ。当時はまだ、WISC-IVは出ていなかった。
とはいえ、多少のテスト問題の違いはあれど大まかな内容は同じである。

2色に塗り分けられた積み木を使って指定の図形を作っていくとか、
ランダムなひらがなと数字を言われてそれを数字の低い順、ひらがなあいうえお順に並び変えて言い直すとか、
特定の図形にある一定の法則性を見出すとか、
記号を見つけて丸をつけていくドリルとか、
単語などの意味を分かりやすく説明するとか、他にもいろいろ。

時間は大体1時間10分程度で終わった。
普通は1時間半〜2時間くらいらしい。解けないなと思った問題はあまり長考しなかったせいだろうか。

終わったときの正直な感想は、とにかく問題文を口で言わずに文章で見せてくれ!!というものだった。
数学の文章題を口頭だけで説明され、聞き返せるのは一回きりというテストがあるのだが、本当に嫌になった。そもそも数学が苦手なのに、耳だけの情報だとどんどん忘却していく。メモも取れないから今自分がどの時点の計算をしているのかもよくわからなくなっていく。

その点、言葉の意味の説明や、二つの言葉の類似点を探すテストなどは楽しかった。文字として読めるし、大抵は淀みなく答えられるし。
この時点で大体の得意不得意は明らかになっているようなものなのだが、まあ結果が出るのは2週間後だ。おとなしく待とう。

さて、そこから2週間。
出てきたWAIS-IVの結果がこれである。

少しわかりにくいかもしれないので、見方を簡単に説明しよう。
一番左の値が私の総合IQだ。115。
IQというものは100が平均値なので、まあちょっと高いぐらいの結果である。でも別にネタになるほど高いわけではない。そういえばMENSAの入会資格はIQ130らしいですね。ヒエ~~。

まあ、とはいえ今回重要なのは総合IQではない。
真ん中にある4つの項目、①言語理解 ②知覚推理 ③ワーキングメモリー ④処理速度、こちらがADHD検査において最も重要な項目なのだ。

各項目について簡単に説明しておこう。
①言語理解 語彙や言葉で理解・説明する能力
②知覚推理 目で見た情報を踏まえて論理的に物事を考える能力
③ワーキングメモリー 情報を一時的に記憶しておく能力
④処理速度 単純な作業を素早く正確に行う能力

さて、私の結果を改めて見てみると、
・言語理解  117
・知覚推理  126
・ワーキングメモリー  97
・処理速度  102
となっている。

知覚推理が高く、ワーキングメモリーが低い。ワーキングメモリーに関しては平均を切っている。その差は29である。
この各能力の差が開いているほどADHDの可能性が高いことになる、らしい。
結果の説明をしてくれた先生によれば、ほとんどの人はこの上下の差が20以内に収まるという。29も差異があるのは、2%の人間だけであるとのことだ。うーん、なるほど…。

そして、ワーキングメモリーと処理速度が他の能力と比べて低いのがADHD的特徴であるらしい。わたしはこれに完全に当てはまっているので、先生が「ADHD!」と書いている。なんかテンション上がってない?
※ちなみに処理速度が他の能力と比べて低いのがASD的特徴であるらしいが、これに関しては当てはまっていない。

ちなみに各テストの能力値をさらに細かく見ていったのが下の結果だ。

一番高いのは知覚推理の積木模様となっている。これは中2の時に受けた時も高かった記憶がある。テストをやっていても一番楽しかった。

言語理解の欄を見ると、類似と単語は悪くないのに知識でかなり平均を下げていることが分かる。
これはいわゆる一般常識だ。わたしには……一般常識がない……。

低すぎて目につくのがワーキングメモリーの「数唱」「語音整列」だ。
これは本当に苦手だった。思い出すと嫌~~な気分になってくる。
ランダムに言われた数字やひらがなを脳内で整列させ入れ替えて言い直すというものだ。こういうのできる人すごすぎる。
逆に単純な算数の文章題は普通程度にはできていたらしい。これは意外な結果だった。

このような結果を見ると、自分は聴覚より視覚優位なんだなあ~ということがわかってくる。目で見ればわかるけど、聴覚情報だけだと訳が分からなくなってくるっていうのは日常生活でもよくある。

そしてワーキングメモリーが低い人の特徴として、短期記憶が苦手、マルチタスクが苦手などの特徴がある。
実際わたしは忘れっぽい。言ったこととか言われたこととか結構忘れている。

あと、ほかにもワーキングメモリーが低いと実行機能が低くなる。
実行機能が低いとどんなことが起こるかというと、計画性がない、優先順位がつけられない、整理して物事を考えることができないということが起きる。
な~~~るほどね。どうりで同人のスケジュール全然立てられないわけだよ。あと、今の会社に入社したばかりのころ、仕事の優先順位がよくわかってなくて今やらなくていい仕事とか全然やってた。慣れたので少しだけマシになったけど、今でもそういう部分はある。

改めて自分の特徴を明らかにするのは楽しい。
みんな興味あったら受けてみてもいいと思う。得意不得意が分かって苦手なことへの対処がしやすくなるかもしれない。

投薬治療の進捗

ADHD治療薬、インチュニブを飲み始めて1か月半程度経った。
実際これが効いているのかというと、正直言ってよくわからない。

先生の判断でかなり少ない量から飲み始めているというのもあるかもしれないが、今のところそこまで効果は感じていない。
とはいえ、繰り返し動作はなくなっていないが、少しマシになっているとも感じている。
以前だったら50回繰り返してたところを15回ぐらいで済ませられるようになったとか、「やめるぞ!!!!」と思ってグッッッと我慢すれば止めることができる(ことが多くなった)とか。それだけでも随分楽にはなっている。とはいえ完全解決はしていないので、その辺は主治医と相談しながら一番良い形を探っていきたいと思う。

以上、ADHD検査とIQ検査を受けてみた感想でした。
みなさんも私と同じような症状があったら、ADHD検査を受けてみるのはどうだろうか。そうでなくても、IQ検査って結構楽しいし。
もしかすると、今までよりちょっとだけ生きやすくなる……かもしれない。

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